*珀明の憂鬱*
(黎深・絳攸・珀明)
【6】
たたらを踏んだ珀明の足が書翰に触れる。
ガタン、と書翰の崩れる音が廊下に響いて、珀明が「マズい」と思った瞬間、
尚書室から声が掛けられた。
「誰だ?」
ここで答えないで逃げるわけにはいかない。
崩れた書翰を直す時間も拾っていく時間もないし、
何より珀明が書翰を届けにきたということは吏部官吏に聞けばすぐバレるはずだ。
珀明は覚悟を決めて返事をする。
「はっ、碧珀明です……っ!」
珀明がそう言うと、室から思いがけない返事があった。
「珀明か。構わん、入れ」
(えっ、ええええっ!? こ、絳攸様っ!!! そんな、「直後」のあられもないお姿をっっ……!!)
珀明は本格的にめまいがした。
そんな珀明の逍巡を見透かしたかのように代弁してくれたのは、他でもない黎深だった。
「いいのか絳攸? 私は構わぬが」
「ええ、どうせ書翰を持ってきただけでしょうし、すぐに帰ると思いますから」
そう言われ、入らないわけには行かなかった。
珀明は覚悟を決めて尚書室の扉を開けた。
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