*秋の夜長に*
(黎深・絳攸)


【3】

黎深は眉をひそめた。
「絳攸、お前は元々そんなに酒に強くないのに、そんな飲み方をしてはダメだろう。――まさか、外でもこんな風に飲んでいるのではあるまいな?」
「しごとが忙しくて毎日帰るのがおそいのに、飲む機会なんてそうそうありましぇん」
「そうか。なら、いい。……次、持ってこさせるか」
「はいっ!」
黎深はチリンチリンと鐘を鳴らし、呼んだ家人に酒を申し付ける。
(どうせ明日は公休日だしな。家でなら万一飲み過ぎて潰れても問題あるまい。からかうネタが増えるだけだ。――潰してやろう)
そう判断して、黎深は当初の目的通り絳攸と飲み始めた。


とろん、と絳攸のまぶたが下がってきたのは、それから割とすぐのことだった。
やはり、と思いながら黎深は盃を傾けつつ養い子を楽しげに観察する。
落ちてくるまぶたをパチパチとさせ、瞳をこする。そのまま両手で頬を軽く叩いて引っぱりだした養い子に、黎深は吹き出しそうになるのを堪えるので精一杯だった。
(く、くくっ……。ずいぶんと眠そうなのに意地を張って。ふふふっ)
眠っていいですか、と言わない絳攸に、黎深から掛けてやる言葉などない。黎深は楽しそうに笑って盃を干した。
「絳攸、酌を」
「……っあ、はい…っ」
瓶子からゆっくりと酒を注ぎながら、絳攸は黎深を上目遣いに見た。その顔は明らかに眠いという表情だった。無言で訴えてくる絳攸に黎深は笑って問う。
「なんだ? 私に言いたいことでもあるのか、んん?」
「…………いえ……」
絳攸は、黎深よりも先に休むのは失礼にあたる、とでも思っているのだろう。必死で睡魔と戦っている絳攸に、黎深はとある悪戯を思いついた。

【←2】 【4→】
【過去小説1】
【最新小説もくじ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.