*アメあと*
(悠舜×黎深)
【4】
「………………。ではこちらを頂きます」
こちら、と選んだ飴の包みを開けた悠舜は安堵した。白っぽい。りんご味に違いない。白い飴玉を見つめ、みかんを取らなくてよかったと思った。
やっぱり返せと言われる前に、悠舜は飴玉を口に放り込む。じんわりと口内に広がる甘い味に悠舜が思わず笑みを浮かべかけたその時、すぐ隣から悲壮な声が上がった。
「あああっ」
「どうしました黎深?」
「割れてる……」
包み紙の上でぱっくりと2つに割れている橙色の飴玉を見つめて、黎深は悲しそうな顔でぽつりと呟いた。
「せっかくの兄上の飴だったのに……」
「おやそれは……。すみません気付きませんでした」
飴が割れていることなど、もちろん悠舜が気付くはずもないのだが、律儀な悠舜はそう謝った。りんご味とはいえ、割れていない方を食べてしまって悪かったかな、とちらりと思う。
「兄上は、ひょっとして割れてるからこの飴を私にくださったのだろうか……」
「いえ、邵可様のご性格からしてそんなことはないと思いますよ、黎深」
「ああ見えて兄上はイジワルなのだ……」
割れた飴玉を見つめながらいじいじと呟いた黎深に、悠舜は憮然とした声を出した。
「私の室で、よくもまぁそんなに兄上兄上と…………」
と、悠舜はふと思いついた。
「そうだ黎深。よかったら、私の飴と取り替えますか?」
「は? 何言ってる。悠舜はもう食べただろう。どうやって取り替えるというんだ」
それに悠舜はにっこりと微笑んだ。
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