*アメあと*
(悠舜×黎深)
【3】
黎深は不機嫌な顔で答えを告げる。
「この飴は、兄上が、悠舜と食べるようにと下さったのだ」
「…………は……。邵可様が……?」
「そうだ!」
真実は、お使いを口実にしばらく府庫に居座ろうとしていた弟・黎深を見かねた邵可が「これをあげるから早く戻りなさい。ああそうそう、悠舜殿と仲良く分けるんだよ」と、彼を追い払うためにくれたものだったが、邵可の真意を知らない黎深は純粋に喜んでいた。
どうだすごいだろう、という表情で胸を張った黎深に、悠舜はおずおずと問いかけた。
「黎深。本当に、私も頂いてよいのですか?」
「ああ。兄上が、悠舜と食べるようにと仰ったのだから仕方がない」
「……あなたは相変わらず、邵可様第一なのですねぇ……」
「当たり前だ!」
その答えに、はぁと溜息をついた悠舜は、そうして黎深へと手を伸ばした。飴玉の乗った手の平を、自らのそれで下から包み込む。
「ではどちらを頂きましょうか」
「片方がみかんで、もう一方がりんご味だそうだ」
好きな方を取れという意味なのだろう。だが悠舜は黎深が、ただならぬ"みかん好き"なのを知っていた。ここで自分がみかん味を取ってしまったら、むこう3年間は恨まれるに違いない。
しかし、幸いなことに飴玉は2つ。確率は半々だ。それに、みかん味とりんご味なら、飴の色で見分けが付くに違いない。もしみかん味を取ってしまっても、口に入れる前に取り替えればいいことだ。瞬時にそう計算して、悠舜は覚悟を決めた。
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