*アメあと*
(悠舜×黎深)


【5】

悠舜はにっこりと微笑んだ。
「確かに私はもう食べてしまいましたが、こうすればいいんです」
にっこりと笑ったまま、悠舜はその顔を黎深へと近づける。
驚きに瞳を見開いた黎深に構わず悠舜は口唇を重ねると、舌先で歯列を割り、飴を押し込んだ。黎深の歯と飴玉とがぶつかって、ころん、と音を立てる。口唇を舐め上げて軽く吸ってみると、甘いりんごの味がした。
そうして、悠舜は黎深が正気を取り戻す前にすばやく離れる。
「どうですか、邵可様から頂いた飴のお味は」
口唇を離した悠舜は、驚きのまま瞳を見開いて固まっている黎深に、さも事も無げに笑いかけた。
「黎深? どうかしましたか」
「…………っ、な、なんでも、ないっ」
ふるふると首を横に振った黎深は、口元を押さえてそっぽを向いた。
悠舜は黎深のそんな様子に満足げに微笑む。思いのほか不意打ちに弱い彼が、口移しを無理にでも"何でもない"ことにしようとしているのがかわいらしい。
黎深の頬と耳はほんのりと染まっていて動揺しているのがありありと分かるのだが、悠舜はあえて追及しなかった。
「そうそう黎深、お茶を淹れてくれるのではなかったのですか?」
「あ、ああっ」
「そこに柚子茶がありますよ。あまり濃くないと嬉しいですね」
「――……分かったっ」
待っていろ、と再び茶器に手を伸ばした黎深の背中に、悠舜はそっと呟いた。
「ごちそうさまでした、黎深」

END.
【←4】
小説としては初の悠黎でしたー。このくらいならまだ許容範囲、ですかね……?(笑)

【紅山の罠へ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.