*アメあと*
(悠舜×黎深)


【2】

ふふん、と自慢げに笑った黎深は、握った手を悠舜に突きつけた。
「…………何ですか?」
突きつけた拳をくるりと裏返し、ぱっと開いた黎深の手の平には、飴とおぼしき包み2つが乗っていた。
「兄上から頂いたのだ!!!」
どうだすごいだろう、と言わんばかりの自信満々な表情に、悠舜は失笑を禁じ得なかった。
大の大人が、それも吏部尚書かつ紅家当主ともあろう者が、たかが飴玉2つでこんなに喜んでいるなど、誰が想像できよう。
「何がおかしい、悠舜」
「いえ、あなたは本当にかわいいなぁと思いましてね。ふふふ」
くすくすと笑っている悠舜に、黎深は少々ムッとした表情で促した。
「ふん。――……ほれ」
「? 何です?」
「早くどっちか取れ」
「………………え!? えええっ!?」
アノ紅黎深が、兄からもらったものを他人に分けようという日が来るとは!!!
悠舜は心底ビックリした。
「ど、どうしたんです黎深? お腹の具合でも悪いんですか!? 実は飴玉1つも食べられないくらい胃が弱ってるとか!? 口内炎が10コも出来てて飴を舐めると染みまくるとか!? ものすごい高熱が出てて食欲がまったくないとか!?」
「は? 何言ってる。私はしごく健康だが」
「じ、じゃあどうして、邵可様から頂いたものを私にもくれようなんて思うんです!?」
天変地異でも起こったかのごとく驚いた顔をした悠舜に、黎深は不機嫌な顔で答えを告げる。

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