ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱拾九

〜道端に咲く野生の花
梅雨到 来である。ジメジメ。
誰もが心に極彩色の黴を生やす季節。嗚呼、厭だ厭だ。
常日頃べったりまとわりつく様な音楽を演ってるくせして湿気は大の苦手。
水無月はホントにもう何処かへ逃げ出したい。
もしくは除湿の効いた部屋に閉じこもっていたい。
じゃないと溶けちゃうよ。
雨の中で唄うなんてもってのほか。だがしかし一度だけそんな経験がある。
’94の水無月、渋谷パルコ前の特設野外ステージ。
当時のシングル『ひまわり』を一曲唄うだけの仕事だったが、
いやいや、ハンパじゃない豪雨に見舞われた。
一応ステージに屋根はついているものの殆ど意味ナシ。
全身びしょ濡れで唄うその佇まいは、私がもっとも嫌悪する
”ど根性メッセージシンガー”そのものであった。合掌。
傘をさしながらも私の唄に聞き入る方々。合掌。
カリスマ目前、もうやばやばである。
当時は 多少なりとも楽曲的、アーティスト名的に露出があったので
雨の中足を止める人も多かったのだと思う。
名前、ネームバリュー、イメージ、......。もちろん大切な事だ。
だがしかし私はこう思う。
表現者たる者、常に
”道端に咲く野生の花””名前も知らない野生の花”

である事を忘れてはならないと。
なんだかなあ、偉そうに。
しようがないから豪雨の中、路上公演でもやるか。
曲はもちろん山田晃士 au Bourbierの名曲『水無月のマリオネット』
では、御機嫌よう。


<<back
next>>