ガレージシャンソン歌手山田晃士の
『嗚呼、泥沼回顧録』
其の壱

〜猥褻図書の誘惑〜

 

紳士淑女の皆様、御機嫌麗しゅう。                      
師走は秘密の似合う季節。夜な夜な隠し事作りに励んで、魅力的な大人になって頂きたい。
さて、私には年子の兄がいるが、少年時代、私にとって兄の部屋というのは格好の探検場所であった。
兄の留守を狙って宝探しをするのだ。その結果、勉強机の引出し三段目奥に宝の山を発見!
ダーティー松本のエロ劇画から洋ピン雑誌「Monroe」まで数冊の猥褻書籍群。
その日から私は兄の留守が待ち遠しくなった。兄の秘密を眺める事が私の秘密となったのである。
そんなある日の事、いつも通り兄の部屋に忍び込み、引出しを開けるや否やAs soon as,
「晃士、何やってるんだ!」
見れば留守だと思っていた兄が風邪でベッドに寝ていたのである。
光速で逃げ出す私。
それからの数週間、食卓には気まずい空気が流れた。 
だがしかし、喉元過ぎれば何とやら、猥褻図書の誘惑には勝てず、一ヶ月もしない内に私は探検を再開!
と思いきや手をかけた引出しには゛カチャリ゛新しく鍵が付けられていたのであった。う〜ん、無念。
家族にだってプライベートはある。この場を借りてあやまる。
兄貴、あの時は本当に申し訳なかった。心からすまん。
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