≫はりぽた井戸端会議1

☆主人公は白か黒か


「最近どう?」
「私に最近の話を振るとハリポタの話になるけどいいの?」

「そりゃ勿論いいですよ〜」

「んじゃねえ、まずは当たり障りのない話から行きたいんだけど。4巻を読んでね、ハリーの性格って黒いと思ったの」
「あると思うよ。あの環境でしょう?」

「でもね。見る人から見れば、全然白いという見方もあるのよ。主観の問題だろうと思うんだけど。あと受け攻めの問題も関わってきてるねぇ(笑)」
「うーん、でも貴女から聞いた諸々の情報を考えるとね。特に4巻で」

「それは私の恣意も入ってるかも知れないんだよ。もう主観で思いこんでるところがあるだろうし。でもね、ハリーの嫌みというか、皮肉は着実に進化していると思うの」
「うんうん、あの性格はダーズリーの家の人々のたまものでしょうよ。あの環境おかしいもん」

「うん。あーでも、あの本って一歩間違えば児童虐待でしょ? いや今でもそうなんだけど、ハリーの性格が強いから、そう見え無くさせている部分はあると思う。発言の黒さというか、皮肉の強さというか。皮肉を敢えて口に出しちゃうところとか」

「1巻から4巻までで、彼は饒舌になってるの? よく皮肉を口にするようになったとか」
「あ〜、それはわかんない。ちょっと今は具体例を思い出せないや。結構心の中で言うだけかも」

「なんというか。あの家ではあんまり口に出さないでしょ。口に出せないというか」
「質問は許さないってのがペチュニアおばさんの言い方だもんね」

「それってすごいよね。質問を許さないってのが。すると彼は黙るしかない。多分ね、あのハリーの性格はダーズリー家で後天的に作られたものだと思うわけ。先天的要素があんまりないでしょ? 勿論、あの環境でやってこれたのは彼自身に素質があったからだと思うけど。あと、何かあったら物置に閉じこめちゃうんだっけ?」

「ああでも、夜中に抜け出して冷蔵庫をあさったりしてる」
「鍵は外付けだったような…あ、閉めちゃわないわけか。トイレにも行かせなきゃならないしね」

「だろうねえ」



★時代はいつでしょう?


「ハリーは両親のこと、どう聞いてるんだっけ?」
「あ、交通事故って。でね、ハリーは緑色の光を覚えてるの。それが交通事故だって思ってるけど、実はそれが死の魔法の光なわけね」

「すると、彼自身は自分に対して何の自信もないのかな? 自信をもてる根拠がない。劣等感もってる?」
「あー、あのね。彼は街に出ると知らない人から声を掛けられたり手を振られたりしてるの。それが魔法族の人たちね。で、おばさんとかはそれを訝るわけだけど。ハリー自身もそのことを説明できない」

「あ、じゃあ何かあるな。とは思ってたんだ?」
「うーん。だけど、彼ね。11歳になる前までは遠くの親戚が引き取ってくれることとか期待した時期があったんだ。でも結局そんなものはいないってこと、もう悟っちゃってる」

「ああ、開き直ってるんだ」
「なんかね、ホグワーツにはいる前の小学校の話がほとんど出てこないんだよ。カウンセリングの優しい先生とか、担任のフォローとか見られない」

「それは物語が本人の視点で進んでるからかな。周囲に期待してないから、周囲の描写が出てこない」
「ふむふむ」

「でもダーズリーさん家ってハリーを虐めるけど、無視はしてないんでしょ。ある意味対応はしている。そのことに意味があるんじゃない?」
「あ、でも確か、ハリーが学校に一年行って来てからは無視する傾向になってきてるような…。魔法族だってわかったら」

「それだよ。異質なものへの対応。得体の知れないものに関しての一般的反応はそう」
「ははぁ」

「でもあの世界の人々って、魔法ってものは普通に認識してるよね。魔法があるってことは」
「けど一部のマグルだけだよ。あ、でも知っている人は確実に知っている。ペチュニアおばさんとか、リリーさんが姉で、彼女コップをネズミに変えたり、ポケットに蛙の卵を入れてたりする」

「蛙の卵…(笑)。すると、やっぱり魔法ってものは認識してるんだ」
「まともじゃない連中だとは思ってるけどね」

「ダーズリーさん家の態度は、魔法に対する一般人の反応として正しいと思うのね。異質なものの排除の傾向」
「でも魔法自体は、あるって信じてるというか、目の前で見ちゃってるんだけど」

「んじゃ。受け入れてるわけでしょ。魔法ってものを」
「うん、だからあの世界って私たちのいる現実に近く見せかけてるけど、パラレルワールドなんじゃないかな」

「年代とかわかってるんだっけ?」
「一応二巻の台詞が根拠になってる。1992年が二巻でハリー12歳なんじゃないかって。でもあんまり信用できない。むしろ現代だって証明は、別にあってね。ダドリーってプレイステーション持ってるのよ」

「プレステ!? むっちゃ現代じゃん」
「そう。しかもプレステ2ではない(笑)」

「ああ、だから九十年代?」
「うん。あとねえ、4巻で50年前に戦争から帰ってきた人の話があるから、やっぱ90年代あたりだと思うよ」

「ハリーの生まれは1980あたりか。80年代に何か大事件あったっけ?」
「思いだせない…79年は石油ショック…じゃなくて。あ、ガンダムだ(笑)」

「ガンダム…それは違うな(笑)」



☆物語のわかりやすさ


「なんかね。こないだ中学生と話をしたんだけど、中学生があの本を読むと疲れるらしいね。なんだかわからないけど疲れる。つまり、小学生あたりは素直に面白いと思って読めるけど、中学生になると何か引っかかりが出てくるみたいよ」

「うん。確かにわかるな。私あの本読むと疲れるもん。気力いる。あのね、そもそも伏線の張り方がすごい。あらゆる事象が最後に集約されるの。何十本もある支流が、最後に一本の川になるように。全てが一点に集まるのが、読めるのね。特に子供向けに伏線がわかりやすいように書かれているから、大人が読むとわかりすぎて疲れるんだと思うの」

「大人はね。もう、今の私らみたいに、ああだこうだ理屈を付けて『これはこう』と変な知識あるから断定することができるんだけど、中学生とかってまだわからないじゃん。社会のこととか。だから、まだ自分なりに理屈付けられなくて疲れるんだと思うの」

「ああ…中学生あたりと話をしてみたい…」
「どっかにいないの? 英文学専攻。したら卒論とか理由付けてインタビューできるでしょ」

「比較文化でもいいんじゃない? でもまあ、無理だよね。ただの変な人になっちゃう」
「家庭教師のバイトすれば?」
「いまから? ちょっと時期悪すぎです」

「そういやさ。さっきも疲れるって言ったけど、ハリー・ポッターって、全てがラストに集約されてる感じがするの。4巻だと、例えば「引き寄せる魔法」がそれにあたるような。台詞とかじゃなくて、これは事象なんだけど。これも最初は第一の課題をクリアするために出てくる。色んな要素がラストにつながってることがわかるんだよね。逆に言えば、全然意味のない文章とかイベントがなくて、遊びの部分がないのはちょっと疲れる。いや、これって大人の読み方なんだろうけど」

「そもそも、文章が主人公視点で進んでるからね」
「うん。あれでしょ。私らはさ、こうゆう世界があって、こうゆう時代で、こうゆう地域の中で、こんな事件が起こってますよって視点で読みたいじゃない。設定重視というか第三者視点というか」

「それがないね。ハリーの視点だから微妙に世界が狭い。そして巻を追うと広がってく。視点の展開」
「逆にね。ハリーの視点からわかることを積み上げて、世界観を構築してくって楽しみがあるの。これは大人の読み方なんだろうけど。ラスボスの心理状態とか、普通推測しないって(笑)」

「あー、それは大人の楽しみだわ(笑)。子供達はどうなの? あの話理解できるのかな」
「わかんないけど…二巻が人気とか聞いたことあるような」

「二巻? 何か特徴ある? そういや三巻が難しいとか聞いたこともあるけど」
「三巻は…多分親世代が。ほら、裏切りだの何だのあるから。二巻はねえ、確かにわかりやすいかも」

「秘密の部屋だっけ?」
「そう。あのね。あれって純血主義vs反純血主義って感じで。最後は黒幕であるリドルとバジリスクが倒されて終わってるのよ。そして純血主義=悪という構図」

「ああなるほど。わかりやすいかもね」
「ただ、この時にトム・リドルがヴォルデモート卿だってわかって、かなり私的には複雑な巻なんだけど」

「そもそも純血主義が悪とは限らないんじゃない?」
「そうなんだよね。そこら辺は後でまとめて。マルフォイ家とウィーズリー家の対比をしたいので、よろしくお願いします」



★噂話


「俗説って言うか、いろんな予想があってさ。その一つが、ハリーとヴォルデモート血縁説」
「ああ…それじゃおじいちゃん世代になるわけ?」

「うん。でもこれ嘘っぽいんだけどね。ありがちじゃん。スターウォーズとか」
「ああ、話が一気に家族の話になってしまうね」

「うん。でも否定できる根拠はないんだよね。二巻でね、ハリーが蛇語を話せることがわかるんだよ。で、ヴォルデモート卿も蛇語を話せたわけ」
「希少なの?」

「というか、サラザール・スリザリンが蛇語を話せたってことで有名でさ。ヴォルさんはその子孫なわけだけど、なんか蛇語を話せる魔法使いって悪だってイメージがあるのね。で、ハリーはスリザリンの後継者だと思われて、みんなに避けられるわけだけど。あ、違った、マグル出身者に。……でもダンブルドアが最後に言うには、ハリーにヴォルデモートが倒されたとき、彼の力の一部がハリーに流れ込んだんじゃないかって」

「あ、一応理屈は出てるんだ」
「でも、それは身内説を否定できるほどではない」

「まぁ、これからの問題だよね」
「何でポッター家が襲われたのかっていう問題もあるしね。これダンブルドア説明してないんだよ」



☆稲妻の傷跡と死


「ハリーの額の傷跡は、ある意味象徴的だと思うんだけど。聖痕というか」
「せいこん?」

「聖なる傷跡」
「ああ…。それ誇りになってるの?」

「いや…なんかね。ハリーが自分の中で唯一気に入ってるものって記述があったような気がする」
「ああなるほど。他人との違いを認識しているわけだね。個性として」

「あ、そうなのよ。あの傷ってね。母親のリリーさんが彼を守ってできた傷跡なの。だから、それが判明した後は余計大事なものというか」
「その段階が進歩すると、誇りになるかもしれない。というか、もうなってるかもね」

「うん、母親の愛の証明とか」
「それもアイデンティティの一つにはなりうるよ」

「思ったんだけどね。これって『NARUTO』に状況似てない?」
「あ、ナルト最近読んでない」

「あれもそうじゃん。両親いなくて、本人は自分に自覚のないことで謂われのない差別を受けていて、でもイルカ先生って理解者がいるわけでしょ?」
「押しつけられた環境?」

「うん、で。火影がダンブルドアかな。事情を知っていて、見守っている。でも今火影死んじゃってるんだよね」
「え、つまりダンブルドアが死んだ状態?」

「うん。それも進歩だと思うの。つまり主人公の自立」
「あー」

「だからさ、ハリポタの5〜7巻はハリーがダーズリー家から出るというか、そういう状況もあり得ると思うのよ。彼はもう一人でやっていける可能性がある。それを押しとどめているのは、ダンブルドアの爺さんの深層心理で、過保護な面があると思うのよ」

「あーでも、実際狙われてるしな〜。あのね、4巻でヴォルさんが言ってたんだけど、ハリーって今ダンブルドアが魔法掛けててね。『親戚の庇護の元にある限り安全』って魔法なの。で、休み中はその魔法に保護されてて、学校へ行けばダンブルドアが保護している。だからヴォルさんは、4巻でわざわざハリーに優勝杯掴ませて、ボートキーの力で遠くに運ばなきゃならなかったのね」

「ふうむ」
「あ、死の話が出たついでだけど。原作者はね、どうやら五巻で誰かハリーの身近な人が死んで、ハリーは死について考える機会があるっていうの。で、4巻ではセドリック…同じ学校の子が死んでるけど、それって身近な人の死には当たらないわけでしょう? だとすると誰が死ぬんだか」

「ダンブルドアとか(笑)?」
「いや…でもあの人死ぬと話が進まんでしょう。私はむしろね、いまのハリーの自立の話を聞いて、ダーズリー家の人々が死ぬ可能性について考えた」

「確かに、ダンブルドアが死ぬと、総合的視点がなくなっちゃうよね」
「あとヴォルデモート卿の対抗馬がいなくなる。とても危険」

「ダンブルドアにも限界があると思うけどね。あ、つまりダンブルドアは封神計画で言う原始天尊の位置とか。黒幕(笑)。……でも、あれだけ伏線張る人だから、死にそうならその兆しが見えてるんじゃない?」

「それで危ないのはスネイプ先生だよ」

「兆しあり?」
「かなりあるね。ヴォルさんが直接、裏切り者は殺すって言ってるし」

「でもさー、身近の人の死でしょ? スネイプの死によって何かハリーの影響力を与えられるかっていうと」
「あ、それは確かに。あの人が死んでも、ハリーの対しての影響力という面で、ちょっと薄いかなって」

「意味がないとやっぱりね〜」
「なんか今ちょっとだけ安心したよ(笑)。先生死なないかも。つーか、彼いなくなったら魔法薬学を誰が教えるんだって言うか〜」



★ロンとの喧嘩


「身近な人の死っていう、今の話とリンクしてるけど…彼失うものが結構ないでしょ」
「彼って?」

「あ、ハリーのことね。ハリーはさ、今までほとんど何も自分のものは持ってこなかったでしょ? だからね、さらに失うものは作りたくないって心理状態があると思うの。拒絶というか。失うことが怖いから執着心を無くす」

「あ、でもね。確かハリーって三巻あたりで来年度の授業を選択するときに、ロンと全く同じ授業を取ってるの。それはね、得意な教科はないけど、せめてハリーを助けてくれる友達がいればいい、と思ったから。だから、かなりロンには執着してると思うけど」

「そう、ロンは多分初めての親友だね。だからかなり執着心はあるでしょう。いままで、11年間でさ、小学校とかで友達に裏切られた経験とかもあるかもしれない。執着心は薄いけど、限られた大切なものへこだわりは強いんだよ。けどね。それに加えてハリーは『来るもの拒まず去る者追わず』って心理があると思うのね」

「ああ〜。それあるかも。4巻でさ、ロンと喧嘩しちゃっても、ハリーはその関係を取り繕うとする行動には出ないわけ。相手には媚びない」

「それは謝り方というか、人間関係の修繕の仕方を知らないからじゃないのかな。いままでそういう関係を作って来れなかったわけ。近所の人といい関係を築くとか。これは生い立ちがやっぱり関係してるね」

「そういや、喧嘩のシーンでもね。最後にハリーがロンがイヤミ言ってくるから切れちゃってさ。物を投げつけて啖呵を切ってるわけ。勿論、この喧嘩はロンの方が悪いんだけどさ。で、ハーマイオニーが、ロンの心理状態…ハリーが羨ましいってのを説明するんだけど、ハリーは何ソレって思うんだよね。歩み寄りがない。逆に、ロンが謝ってくるシーンでは、ハリーはもうロンのこと許してるの」

「だから『来る者拒まず去る者追わず』なのね。追いすがるタイプではない。引き留めたいけど引き留められないの」

「それって物理的にじゃなくて、心理的にだよね。やり方を知らないってこと?」

「だね。ああ面白いよね。ロンとハリーって正反対じゃない? 互いに、互いにないものを羨ましく思っている」
「そうだねえ。ロンはハリーの名声とかお金とか。で、ハリーはロンの家族とかが羨ましくてならない」

「かなり象徴的だと思うよ」
「で、ハーマイオニーが二人の間に立ってバランスを調整している。彼女の存在も意味が深いね」

「女の子だからってのもあるだろうね。彼女はある意味自立してるから」
「そういや、ロンとハリーが二人で暴走してるとき、止めるのは彼女なわけだよね」

「暴走? ってゆーと…二人ともイケイケで暴走しちゃう? それともどっちかがどっちかに引きずられてる?」

「うーん。そりゃ難しいかも。あ、でもハリーの暴走は基本的にハリーの命が掛かってるときが多いような。ヴォルデモートに狙われてるから対策立てなきゃ、とか。ロンはねえ、怒るのは…マルフォイ関連が多いかも。家族を侮辱されたときとか、よくハリーとハーマイオニーに止められてる」

「あ、あの二人は怒るポイントが違うような気がするね。ハリーは自分中心で、ロンは家族…身内への侮辱で怒る。彼はね、大家族の中で、ああゆう家族だし、自分個人への侮辱には慣れていると思うのよ。この二人、かなり対比できるね」

「うん…でも今具体例としての暴走はちょっと思い付かない。ごめん」

「いやー、しかし、ハリーにとってのロンは何かを表していると思うよ。非常に象徴的。これからもう彼ら喧嘩しないんじゃないかな。五巻以降は。それくらい、4巻の喧嘩は大きかったと思うし、それによって絆は深まったと思う」

「今度はハーマイオニーかな。いま男女の溝があるかも。クリスマスダンパの話は大きかったね」
「だんぱ?」
「あ、ダンスパーティー」

「ああ、ハーマイオニーを最後に誘ったってやつね」
「彼ら女性として意識してないんじゃない? で、ロンはハーマイオニーがクラムに誘われたことに怒ってるわけよ。でも、ハリーはハーマイオニーの方が正しい気がしたって最後に言ってる」

「ああ、溝だねえ(笑)。次の巻はハーマイオニーが来るでしょう」
「だと思うよ〜」