6.水流について

 ベルリン式では、
「比較的強い水流」を必要とします。ここで「比較的強い水流」とわざわざ「比較的」と付け加えたことに意味があります。それは単に強い水流を作れば良い訳ではなく、その場に応じた役割が水流に必要で、奥が深く中々必要な水流を実現することが難しいからです。
 水流は、海水をライブロックに当てることにより、ライブロックの表面で酸化濾過を、内側で還元濾過を実現しています。また、ライブサンドの表面を流れる絶え間ない水流によって、常に新鮮な酸素を送り込みます。この酸素によってバクテリアの酸化濾過を活発にさせます。さらに水流は、生体の調子を維持する上でも重要だと考えています。例えば、パワーヘッドを1個追加しただけでも、淀みがなくなりORP(17.ORP参照)が変化します。また、水面に波を起こすことによって、メタハラの光が屈折して、光の強弱が現れて、いろんな方向からサンゴへ光が当るようになります。水面を下から覗くと、波で屈折した光がキラキラと輝いて見えるはずです。こんなところでも水流の大切さを感じます。

 ベルリン式の水流には、
「強い水流」と「速い水流」があります。車に例えると「トルクのある車」と「パワー(馬力)のある車」でしょうか。
 「強い水流」は、サンプ水槽からメインポンプによって送り出される水流で、水槽面,ライブロックへぶつかっても力は衰えにくく、ライブロック間の隙間へ入り込んで、ゆっくり前へ進む力強い水流です。この水流によって、プロテインスキマーで濾過された水を水槽全体へ送ります。ライブサンドの表面を絶えず流れる水流もこの水流になります。
 「速い水流」は、水槽内に付けたパワーヘッドから作り出される水流です。ミドリイシの生息する実際の海は、波が岩にぶつかることによって、絶えず水流の方向を変えています。この海流へ水槽内の水流を近づけるためには、「強い水流」の一定方向だけの水流では実現が難しく、水流の届かない淀んだ水域ができやすくなります。ここへパワーヘッドの「速い水流」によって、できるだけ方向不定の水流が水槽内を流れるようにします。これによりライブロックへ水流がランダムに近い状態で当たるようになります。ライブロックに当った水流は、さらにライブサンドへ流れることになります。注意して欲しいことは、ライブロックへ当たると言っても、パワーヘッドから出た水流を直接ライブロックへ当てないと言う事です。直接水流の当る部分に苔が発生したり、強い不自然な水流によって、そのライブロックに住む生物を死滅させ、水質の悪化をまねくかもしれません。具体的には、水槽のガラスに当てて拡散させたり、パワーヘッド同士の水流を水面近くでぶつけて分散させたりする方法を私は取っています。

 「強い水流」によって、自然の海のような潮の満ち干に相当する水流を水槽内に再現できれば良いと思っています。この水流の変化を水槽内で実現するためには、メインポンプから排水される水の方向を時間によって、左右へ切り替わるようにすれば良いのではないかと思っています。メインポンプを2台用意して、それぞれの排水口を左右に向けて、タイマーによって動くポンプを切替えることによって、水流方向を切替える方法です。また、トルクのあるメインポンプで排水口をできるだけ広げ(「じょうご」のように)、ゆっくりした水流になるようにした方が良いと思います。
 「速い水流」によって、自然の海のような波に相当する水流でランダムに方向が変わる水流を水槽内に再現できれば良いと思っています。水槽内でランダムに近い水流を作るには、「ウェーブマスタープロ」「ナチュラルウェーブ」などのアクア機器に、パワーヘッドを数台付けて、タイマー制御によって、駆動するポンプを切替えることで水流の方向を変えます。このランダムな水流で自然の海に近づき、生体の調子が良いようです。


 私は、水槽を立ち上げてしばらくして、小さい魚達を導入しました。その時の水流は結構強いもので、小さい魚は、切り替わる水流に流されながら、必死に泳いでいました。夜もそんな感じなので、眠れないだろうと可哀想に思った私は、タイマーで夜だけパワーヘッドを止めるようにしました。そして、数日後の水質チェックで硝酸塩が、急に高くなっていたことがあります。今思えば水流だけが原因かは定かではないですが、その時は水流の大切さを痛感しました。