2.飼育環境の決定

 どんな水槽にするか構想が見えてきたところで、具体的にどんな飼育環境にするのかを明確にします。主にやることは、アクア機器の仕様を決めることです。





(1)メイン水槽



 構想の段階で、置き場所,床の耐久性等で水槽サイズ(幅,奥行,高さ)は、だいたい決まったと思います。より具体的な水槽の仕様を決めます。
 床の耐久性で注意して欲しいのが、120×45×60の水槽と60×45×60の水槽では、120×45×60の水槽が床に掛かる負担は大きいように思えます。しかし実際には床に掛かる単位面積当たりの重量は、同じだという事です。つまり、
床に掛かる負担は水槽の幅・奥行きではなく、「高さ」だという事です。さらに水槽台の下にサンプ水槽を置く場合、この水槽の高さもプラスされた重量が床に掛かることになりますから、水槽の置き場の耐久性は、家を構築された工務店などに相談する必要があるかもはれません。
 次に
水槽の材質を「ガラス」にするか「アクリル」にするかを決めます。傷の付き難さからガラス水槽がお奨めですが、同じサイズだとアクリルより高価です。水槽に石灰藻が付く暇がない程、掃除ができる方は、アクリル水槽も良いです。私は、後者です。2回/週の水槽の掃除は欠かせません。(^^)
 次に注意するのが、水槽のガラス板/アクリル板の厚さです。厚い方が耐久性はありますが、透明度が落ちやすく、高価になります。目安として水槽の高さが50cm以上の場合は、厚さ1cm以上のモノを奨めます。水槽の購入先に厚さにも注意して交渉しましょう。
 オーバーフロー水槽の場合、落下用パイプの長さとメインポンプの能力で水槽の水位が決まります。落下用パイプが短いと水位は低くなります。メインポンプの能力が高いと水位を上げることができます。購入時、水位の調整をショップで行ってくれるのか、自分で行うのか確認が必要と思います。
 私は、ディスカス水槽で以前からお世話になっているショップへ、1cm厚のアクリル水槽(120×60×45)をお願いしました。



(2)水槽台



 水槽台のタイプを決めます。「ラックタイプ」か、「キャビネットタイプ」があります。
ラックタイプのメリットは安さです。キャビネットタイプは、メリットは、見た目の良さ、デメリットは高価なことでしょうか。ラックタイプの材質には、木材と鉄がありますが、塩を扱うので木の方が長く使えると思います。
 水槽台を決める上で大事なのが、耐久性です。設置する水槽のサイズよって購入されると思いますが、60cm,90cm,120cm用と水槽の幅だけが強調されていますが、
水槽の高さも考慮する必要があります。高さが50cm以上になる水槽を購入される方は、水槽台を求める時に、その旨を購入先に伝えて、耐久性を確認した方が良いと思います。水槽台は、標準サイズの高さ45cmを基に作っているモノが多いようです。

 オーバーフロー水槽を乗せますから、オーバーフローのパイプを通す穴の位置を確認する必要があります。水槽と水槽台をセットで買う場合は、問題ありませんが、オーバーフローのパイプを通す穴を自分で開けるか、購入先で開けたものを収めてもらうかを決めます。
 ラックタイプの水槽台は、天板(水槽と水槽台の間に入れる板)が付いていないモノがほとんどですから、自分で購入して穴を開ける必要があります。私は、マーフィードのラックタイプにしました。天板は付いていなかったので、1cm厚の板をホームセンターから買って来て、自分で穴を開けました。またラックタイプの水槽台の場合、水槽台と床の間に天板と同サイズ・厚さの板を入れて、床に掛かる荷重を分散させることをお奨めします。
 水槽台の中には、多くの機器を入れると思いますが、水槽台の高さは、中に入れるアクア機器の高さも考慮する必要があります。特にスキマーを水槽台の中へ入れる場合には注意した方が良いと思います。


(3)サンプ水槽


 サンプ水槽は、専用品を購入するか、自分で空きの水槽を仕切って自作するかを決めます。空き水槽を仕切らないでそのまま使えますが、スキマーの処理効率を考えると、できるだけアクリル板等で仕切ることを奨めます。
 サンプ水槽は、大きいほど水量を稼げて、水質の安定につながりますが、大き過ぎると水槽台の中に他の機器が入らなくなります。また、重量が増えるので床の耐久性も心配になります。
 私は、当初立ち上げた環境では、60*45*45の水槽を仕切って使っていました。その後、サンブ小屋を作ったことを切っ掛けに専用のサンプ水槽を作ってもらいました。さすがに専用品とあって、よく考えられた構造で満足しています。


(4)プロテインスキマー


 スキマーの選択は、まずメイン水槽とサンプ水槽を合わせた総水量で必要な能力を決めます。そして、総水量の2倍以上の処理能力を持ったスキマーを選んだ方が安心です。例えば、メイン水槽とサンプ水槽を合わせた総水量が400Lの場合には、スキマーのカタログにある対応水量が800L以上の物を選んだ方が良いと思います。(「プロティンスキマー」参照。)


(5)メタハラ



 メイン水槽のサイズを目安に、メタハラの必要数を決めます。あくまでも目安なので、実際に飼育を始めてみて、飼育するサンゴの種類・状態を見ながらメタハラの強さを増減させる必要があります。私は、150W×2台で立ち上げて、飼育するサンゴがソフトコーラルからミドリイシ中心になったため、150W×1台,250W×1台を追加しました。最初から250W×2台にしておけば無駄な投資はなかったと思います。
  ・60cm標準・・・・150W×1台以上
  ・90cm標準・・・・150W×2台以上
  ・120cm標準・・・250W×2台以上
 メイン水槽の水量の2倍を目安に、ミドリイシ中心だと3倍以上必要と思っています。
例えば、メイン水槽(120×60×45)の水量が300Lであれば600W以上、ミドリテシ中心なら900W以上のメタハラが目安かと思います。
【追記】
 浅場ミドリイシを中心に、ミドリイシの様子を見ながらメタハラを追加した結果、現在1250Wになっています。これでも足りないような気がします。ただ飼育するだけなら、上記の目安でも良いですが、浅場ミドリイシを色揚げするとなるとかなりのメタハラが必要となります。
 

(6)メタハラ設置台
 メタハラ設置台は、メタハラのメーカーによっては、オプションで用意しているところもありますが、自分で作った方が安く出来ると思います。私は、始めはメーカーオプションのモノを使っていましたが、メタハラの数が増えてしまって、後から自作しました。ホームセンターにある材料で簡単に作れました。


(7)クーラー



 夏場は、必ずクーラーが必要です。ポンプ,パワーヘッド、メタハラと付けるとワット数に比例して、水温がどんどん上がります。我が家でも真冬にクーラーが稼動しています。
メイン水槽とサンプ水槽の水量を合わせた総水量の2倍以上の冷却能力を持ったクーラーを選んだ方か安心できます。
 無知の私は、総水量の1.2倍にも満たないモノを選んでしまい、おそらく夏場はクーラーは動きっぱなしで、室内エアコンと併用になると思います。様子をみながら買い替えようかと思っています。


【追記】
 夏が来る前に熱風と騒音が我慢できずに、室外タイプのクーラー(カナオカ KDA−500)へ変更しました。クーラーは、屋外へ出すのが一番良いと思います。クーラーの熱風も騒音もなく、室内のコントローラーを見てクーラーが動作中であることがわかる程です。クーラーを外へ出すために、家の壁に穴を開けました。穴あけは、室内のエアコンを付けてもらった電気屋さんに依頼しました。室内エアコン用の穴なので、仮にクーラーを外したとしても、蓋すれば見栄えはさほど目立ちません。1つの穴を開けるのに、3000円それに出張費が2000円でした。お奨めです。


  クーラー選定の目安 (冷却熱量kcal/h)
  [(全水量×温度差÷24時間)+熱損失(照明機器・ポンプ・その他×0.86)]×1.2
 【例えば】
  ・水槽1200×600×450H 約324リットル
  ・サンプ水槽600×450×450H 約122リットル

  ・温度差 (外気30℃:設定25℃)

  ・メタルハイランドランプ250W 1個
  ・メタルハイランドランプ150W 2個
  ・メインポンプ50W 1台
  ・スキマー用ポンプ30W 1台
  ・パワーヘッド15W 3台
  [(全水量:446リットル×温度差5℃÷24時間)+熱損失((250W×1+150W×2+50W+30W+15W×3)×0.86)]×1.2=約674Kcal/h
 の熱量を必要とします。

この熱量を基にクーラーを選択すると、レイシーならLX−200CX,ゼンスイならZC−1000になります。


(8)メインポンプ



 メインポンプは、サンプ水槽から海水を本水槽へ汲み上げて、本水槽内へ水流を作るポンプです。総水量に合わせた能力のモノを選びます。目安としては、本水槽とサンプ水槽を合わせた総水量を1時間に最低でも5回,できれば10回以上回せるような能力を持ったポンプを選択した方が良いと思います。

  (総水量×回数÷60)×1.2
  【例えば】
  ・水槽1200×600×450H 約324リットル
  ・サンプ水槽600×450×450H 約122リットル
  ・回数5回

  (総水量:446リットル×5回÷60)×1.2=約45リットル/分の能力を持ったポンプが目安になります。
  (実際は、ライブロック,ライブサンドが入っているので総水量は少なくなります。)



(9)スキマー用ポンプ
 スキマー用ポンプは、スキマーへ海水を送り込むポンプです。基本的にスキマーで推奨しているポンプを選びましょう。能力の高いポンプを付けて水量を多くしても、スキマーを通過する時間が短くなるだけで、水は綺麗になりません。逆に能力の低いポンプを使っても、スキマー本来の性能を引き出せません。
 私は、Rio3100(57L/min)です。スキマーの推奨は、40L/minです。Rio3100は、水流にトルクがないのでポンプロスが大きいのと、ポンプ自体に水量調整用のバルブが付いているので調整しやすいです。
【追記】
 私は、スキマーの変更に伴い、ポンプもレイシーのRMD1001(120L/min)へ変更しました。
 ものすごい勢いで、スキマーへ水を送り込みますが、電気も食います。

(10)パワーヘッド


 パワーヘッドは、能力の高めのモノを少ない数付けた方が、パワーヘッドによる水温上昇を抑えられます。水槽内に、水の動かない澱みができないように工夫して設置します。また、ウェーブコントローラーへ接続する場合には、耐久性のあるモノを選びましょう。無知の私は、Rio800をナチュラルウェーブへ接続して使っていましたが、頻繁に停止していました。そこで、MP900へ替えました。次に買い替える時はMP1200にしようと思っています。最初からMP1200にすれば無駄な投資はなかったと思います。


(11)ウェーブコントローラー


 パワーヘッドを切替えて駆動させて、水槽内の水流を変化させることで、自然の海の水流へ近づけます。是非準備した方が良い機器だと思います。生体の調子が良いようです。
 私は、立ち上げ直後、「ナチュラルウェーブ」を使って、もっとランダムな水流にしたくて、「ウェーブマスター プロ」を追加しました。



(12)カルシウムリアクター


 カルシウムリアクターは、ミドリイシを飼育する上では必要な機器だと思います。ミドリイシの成長に必要なカルシウムとKHを常に供給してくれます。リアクターを使わずに、カルクワッサー(石灰水:水酸化カルシウムを水に溶かしてできた飽和水)を使う方法もありますが、毎日の作業となるとリアクターを使った方が楽です。ただ買うとなると高価なモノになってしまうので、自作されている方も多いです。リアクター本体の他にCO2のレギュレーター,CO2ボンベ(ミドボン),カウンター等も必要になります。
 私は、立ち上げ直後、カミハタのリアクターを使っていましたが、400L弱の総水量では、能力不足とわかって、後から自作しました。
<追記>
 それでも足りなくて、
容量の大きいリアクターへ変更しました。ミドリイシを飼育する場合は、数に応じて高性能なリアクターが必要になります。


(13)RO・DI


 RO・DIは、ベルリン式の水槽を維持していくためには、必要な機器だと思います。
RO・DIは、1日に生産できる能力等によって、値段が違います。私は、マーフィードのエキスパートU+RGダッシュを使っています。このRO・DIでカタログ値280L/日の生産能力しかありません。水温が低かったり、水道の水圧が低いと、さらに生産能力は低下します。我が家の環境で使うと冬場で約200L/日です。

<追記>
エキスパートUのROメンブレンは、75ガロン/日ですが、今は120ガロン/日のメンブレンへ変えました。マーフィードのハウジングで120ガロン/日のメンブレンが使えます。

(14)人工海水


 人工海水は、立ち上げ時に大量に使います。総水量とライブロックをキュアリングするための水量を用意します。私の場合、600L位の人工海水を作りました。私は単純に安さでインスタントオーシャンにしましたが、これを使っている方も多いようです。当初はバケツタイプを使っていましたが、湿気の問題があるので、現在は200L/袋になっている箱タイプにしています。


(15)ライブロック


 ライブロックは、信頼と実績のあるショップで購入しましょう。私は、「沖縄水族館さん」のモノを使用しています。(ショップリンク参照)
用意する量ですが、私は注文先のショップの方と相談して、量を決めました。40kg〜50kg入っています。
 ライブロックの量は、少ないと十分な好気性・嫌気性濾過が行われないし、水槽内が寂しく感じます。逆に多過ぎると、珊瑚を置くスペースが少なくなります。珊瑚の成長も考慮すると多過ぎない程度が良いようです。


(16)ライブサンド
 水槽の底に敷く砂ですが、「ライブサンド」「珊瑚砂」があります。「ライブサンド」は、海から砂の中にいる生物も含めて、水槽に持ち込むことができます。このため、水槽の立ち上がりが早いようです。
珊瑚砂は、海で採取した砂を乾燥させて、袋詰したもので、砂の粒の大きさで種類が分かれます。パウダーを選ぶ方が多いようです。あまり厚く敷くとライブサンドの嫌気濾過部分に有害物(硫化水素)が発生するようです。ベルリン式では、「ライブサンド」を5cm〜8cmくらい敷くようです。自分の水槽サイズにあった量を用意しましょう。

【目安】
 ・60×45×45水槽 :15kg

 ・90×45×45水槽 :25kg
 ・120×45×45水槽:35kg
私は、120×60×45水槽で珊瑚砂30kg(底に10kg:極細タイプ,その上に20kg:パウダータイプ)へ「ライブサンド」20kgを上から敷いて使いました。


(17)ヒーター
 冬場は、必需品です。総水量に合ったW数を入れましょう。また、ヒーターの故障も考慮して、同じW数を1本入れるより、2本以上に分けて(300Wを1本より、150Wを2本)入れた方が良いと思います。


(18)添加剤


 人工海水に含まれるミネラル:微量元素は、水槽内の生体やスキマーによって、次第に減ります。これを追加してやるために、添加剤を使います。
私は、以下の添加剤を使っています。
  ・KENT テック・M
  ・KENT ストロンチウム&モリブデン
  ・KENT コンセントレートアイオダイン
  ・KENT エッセンシャルエレメント
  ・KENT スーパーアイロン&マンガン
  ・KENT コーラルバイテ


(19)試薬


 水槽の水質をチェックするために、試薬を使います。水槽の状態を科学的に知る唯一の手段ですから是非用意しておきましょう。私は、以下の試薬を使っています。
  ・アンモニア(テトラ)・・・水槽立ち上げ時の必需品
  ・亜硝酸(テトラ)・・・水槽立ち上げ時の必需品
  ・硝酸塩(レッドシー)・・・水槽立ち上げ時の必需品
  ・KH(テトラ)・・・必需品
  ・カルシウム(サリファート)・・・必需品
  ・燐酸(レッドシー)・・・必需品
  ・珪酸(レッドシー)・・・苔の発生が多いとき必要

(20)pH計
 水槽のpHを測るのに使います。必需品です。私は、マーフィードのpH計を使っています。


(21)タイマー



 メタハラの点灯/消灯を自動化するためにタイマーを使います。手動による点灯/消灯忘れを防ぐのは当然ですが、点灯時間が不規則になることも珊瑚には良くないと思います。私は、ニッソーのタイマーを使っています。


(22)TDS計
 RO・DIのフィルターの寿命をテストします。フィルターの寿命に近づくと、水に溶解している不純物が増えるので、通常0ppmを示している値が次第に高くなり、フィルターの交換時を知ることが出来ます。私は、マーフィードのTDS計を使っています。


(23)その他
 配管に必要な、塩ビパイプ,エルボ等の材料とそれらをカット/接着する道具が必要です。