[2001/12/11]

げに不可思議なるもの、女性(にょしょう)その2

 



「げに不可思議なるもの、女性(にょしょう)その2」

 前号では女性の寝顔について書いたんだけど、それと同じようなものに
女性の体重があると思う。

 大学時代にこんなことがあった。

付き合い始めてまだ間もない彼女がものすごい風邪をひいてしまい、部屋
に看病に行った時のこと。

 熱が39度近くまで上がってほとんどゆでダコと化していた彼女は、私に
寄りかかって一緒にコタツに入っていた。

 ベッドを背もたれにしてテレビを見ていたのだけど、彼女は息も荒く、
目もつぶってテレビどころではないようだった。私はコタツじゃゆっくり
休めないだろうと思い、

「やっぱり本格的にベッドで寝た方がええぞ」「うー、…」「…」「…」
「いや、だから、うー、じゃなくて早く寝たほうがいいって」「うー、…」

 彼女はうなっているばかりで一向に動こうとしない。いや、もしかした
ら動けないのかもしれんな。経験のある人は分かると思うが、39度40度
と言えば天井がグルグル回る体温である。

『こりゃ早く寝かさんとあかん』けっこう焦った私は、
「ちょっとベッドに運ぶで」と、彼女を抱き上げようとした。

と、その時である。いきなり彼女が血相を変えて、私の腕の中でバタバタ
バタッと暴れ始めたのである。

 それがもう、さっきまでのグッタリはどこいったんだというくらいの暴れっ
ぷりで、まるで釣りたてのハマチかマグロのごとし。その勢いで私は後ろに
でんぐり返ってもうたよ(な、情けない(T_T))。

『な、何かの痙攣か?』私は本気で心配したのだが、彼女は息も絶え絶え
ベッドに手をかけると、「ひ、ひとりで、だ、だいじょうぶやから…」何とか一言
ひねり出し、瀕死のミノ虫のごとくノソノソ布団に入っていった。

 私はさっぱり訳が分からず狐につままれたような顔をしていたのだけど、
後日判明したところによると、どうやらその最後の力を振り絞った彼女の
命がけの抵抗は、自分の体重を知られるのがイヤだったということらしい。

 なんと、そういうことか。しかし39度の熱を押してのあの動き、体のバネ。
まるで3カウントを必死にはねのけようとしている女子プロレスラーのようで
あった。

 そしてこの時私は、それまで女の子たちがよく話題にしていた体重神話
というものを、初めて自分の問題として認識したような気がするのだった。

 中学の寝顔事件から5年。依然として乙女心というものを全然分かって
あげられないバカ仙人なのであった。

 そもそも私が初めて女性の謎に遭遇したと自覚したのは、寝顔事件を遡
ること1年前、小学6年か中学1年、松田聖子がデビューして大ブレークして
いた頃だったと思う。

 クラスの男子は私以外全員が聖子ファンで、女子も3分の2くらいがファン、
そして彼女の髪型“聖子ちゃんカット”が大流行していた。

 私は今も昔も“ぶりぶり”のアイドルというものが嫌いなので、当然、
聖子が嫌いだった。

 そんなある日、
「私も聖子、大っ嫌い。カワイコぶりっ子しちゃってさ。仙人クンは女を
見る目があるよ」と言ってくれたクラスの女の子がいた。

 私はなぜ聖子が嫌いだと女を見る目があることになるのか分からなかっ
たが、とにかく誉められて悪い気はしなかった。

 が、2,3日後、その女の子が完璧な“聖子ちゃんカット”を風になびか
せ登校し、しかも集まってきた女子たちの「うあー、聖子ちゃんみたい、
カワイイー」という声に「ホントに?ありがとー」と満面の笑みで答えて
いるのを見て、私は比喩ではなく本当に口をポカ〜ンと開けていたことを
覚えている(笑)。

『俺、彼女にからかわれたのかな?』
 腕組みしながら首をかしげ、?マークを頭の上にたくさん浮かべている
子供仙人の顔は、やはり上野公園のハトのようなのであった。

 今なら彼女の気持ちは何となく分かるし、彼女も、そして首をかしげて
いる子供仙人もカワイイなあと微笑ましい気分になるのだが、当時の私に
とってはやはり謎の中の謎であったのだ。

 本当に心から思う。男はガキだなあと。そしていつだって女性の方が先
に大人になるんだなあと。

 大体、小6とか中1の日常会話で「女を見る目がある」という言葉を
使えることがすごい。その時代の小6の男子なんて、「野球がうまくなり
たい」とか、ヘタすれば「カブト虫をたくさん捕まえたい」とか言ってる
頃だぞ(笑)。
 女性というのはかなり早い段階から女というものを意識していると思う。

 女性は女性に厳しい、とはよく言われる。それは男とは比べ物にならな
いほどの観察眼を持っていることも後押ししていると思う。

 私のすぐ下の妹が3歳くらいの時、ままごとに付き合ってあげたこと
がある。彼女が母役で私が父役なのだが、彼女が舌足らずな黄色い声で
「パパ、おちゃが入りましたよ」とか「ちんぶん(新聞)見ながらゴハン
はやめてください」とか話すのを聞いて、私は心底気味が悪かった(笑)。

 ものすごい観察力だ。しかも無意識やからのう。ananなどで時々組ま
れる「好きな女」特集(だっけ?)でも、好きな眉の形をしている女優ベ
スト3とか、好きな目とか口とか、体のパーツごとにベストを出している
けど、男では考えられないもんなあ。

 確かに女の人というのは「○○(女優でも一般の人でもいい)は、顔は
カワイイけどウエストが案外太い」とか、逆に「容姿は普通だけど、全体
的なしぐさが可愛らしい」とか、チェックがきめ細やかな人が多い。
というか、男はチェックが粗いと言った方が正確か。

 電車にミニスカートの女性が乗ってきた時、彼女をチェックするのは男
だけだと思われがちだが、実は女性もチェックしているのではないかと思
う。

 もちろん「さあ、チェックしてやるぞ」なんて鼻息荒いものではなく、
チラッと一瞥をくれるだけなのだが、そのチラッという一瞬だけで女性は
十分なのだと思う。

 男は単純に、ミニスカならミニスカ、巨乳なら巨乳と一点集中だが(な、
情けない、笑)、女性はミニスカはもちろん、彼女の服装のセンス、髪型、
メーク、さりげない立居振舞やちょっとしたしぐさまで一瞬のうちに目に
入ってきているのではないだろうか。それも意識せず。

 もちろんそれで相手に対して特別どう思うとかはないのだろうけど、何
かごく自然に無意識のうちに多面的な情報を得ているような気がする。

 うーむ、この情報収集能力の差。

「チラッ」という、男だったらただ鼻の下を伸ばしているだけのその同じ
時間で、女の人は男の数倍の多種多様な情報を収集しているような
気がするのだ。

 街を歩くカップルでも、女性は彼氏が街の風景の中で何を見ているのか、
どこを見ているのか、そして誰を見ているのか、ちゃ〜んとお見通しのよ
うに思うのう。

 ただ、まあもちろん女性や男性ということで一括りにするのはかなり乱暴
だとも思う。個人差というのが多分にあるとも思うし。

 結局、女性の行動でビックリしたのは冒頭で出したワシの彼女のハマチ
事件が最後で、それ以後は生来の自意識過剰も手伝ってそれほど「あれ?」
って思うことはなくなったんだけど、ここ数年一つだけ『?』と思うことがある。

 それは前号でもチラッと書いたけど、電車内とか公の場で大っぴらに化粧を
直している若い女の人(子?)をよく見かけるようになったことだ。

 化粧する姿というのは、寝顔や体重と同じように言わば無防備でムキ出
しの個人情報で、人には絶対見られたくないもの、知られたくないものだと
思っていたので、初めてあれを見た時は「えっ?」と思って、それで思わず
中学の時の寝顔事件を思い出したのだ。

 前号で、もしかしたら今の時代の女の子は寝顔を見られても気にしない
のかも
と書いたのはそういうことだったんだけど、うーむ、謎やねえ。

 だけど考えてみれば、この電車内化粧こそ個人差で、かなり少数派なん
だろうとは思う。それに案外見ず知らずの人の前では平気だけど彼氏の前
では絶対に見せないとか、タブーの独自基準みたいなものが昔に比べて細
分化されてきているような気もするし。

 性の意識なんかもそうだけど、時代によってタブーもどんどん変わって
いく。女性にしても幹の部分は変わらないけど、枝葉の部分はドンドン変
わっていくんやろうね。

 うーむ、なんか思いっきり陳腐なこと言うてるな、ワシ。

 あと一つ書こうと思ったことがあったんだけど、ちと長くなってしまった。
ということで次号になるか、号を置いて書くか分からないのだけど、なんで
こんなにたくさん書いてるんだろ。
自分が謎になってきたよ…(笑)。


☆ ☆ ☆ あとがき ☆ ☆ ☆ 

わーい、とうとうワシにもコンピューター・ウイルスが届いたよ。
って、モノ珍しさに喜んでるワシも謎。

IEをバージョンアップしていたので感染しなくて済んだ。
ホッ。^_^; 皆さんも気を付けてね。

 

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つぎ

 

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