096: 蜃気楼


きみはぼくを静かにつつみ
あなたはわたしを優しくいだく

静かな 夜

きみの濡れた唇はぼくを奪い
あなたの乾いた唇はわたしをのみ込む

ずっと雨を待っていた
砂漠のように

こんなにも こんなにも
望みあう ふたり

つめたい夜の静寂よ、どうか

静かに 静かに
  そっとつつんでいておくれ

いつか果敢なく消えてしまう
ふたりの蜃気楼

この泡沫の狭間を。



*ぬえさんに頂いたイラストから発想させて頂きました。
タイトルが偶然お題にありましたのでこちらへ。(2004年7月8日)


「100のお題へ」