−私的サイボーグ009−

★ご注意★
本文により不快感を覚えられる方がいらっしゃると思われます。
☆東西ドイツ分断問題を漫画とからめて分析、勉強することのお好きな方。
☆作品へのネガティヴな感想を嫌う方。
以上の方は以下をお読みにならないで下さい。
万が一お読みになられましても、本件に関する苦情は一切お受け致しません。
私は「009」という作品を「鬼子」と呼んでいます。
(実はこれ、変換されないんですよね。差別用語なんですね)、
作者が終わらせたものを、ファンの恐るべき思い込みなどで無理やり復活させられて、かなり無残なことになっているからです。
キャラクターは作家の手を離れ、ファン一人一人のなかでそれぞれ勝手な形に成長をし、ファンを魑魅魍魎と化し、
時に百鬼夜行の状態を作り出すのを見てしまったからです。
公式設定本で、004が「西」出身とされたときのファンの抵抗は(当初の私も含め)凄まじかったです。
新アニメの設定にも関ってくるものですから「私の中のキャラクター像を守る権利がある」などなど。
「私の中の」に何の権利があるのやら、正しく原作者の権利などどこにもありませんという感じでした。
こういうのはファンの暴力だと思います。

ちなみに、008の国籍がいかにころころ変わろうとも、アパッチ族長の名を冠する005がモヒカン族の髪型をしていようとも、
誰も何も言ってこないのは一種の欧州白人社会優先志向であり、第三世界(語弊ありと思われますが)、マイノリティ差別ではないでしょうか。

全くの私見ですが、00メンバーに似たキャラクターが他作品の中で惨殺されているのを目にすると、
作者が意識していたかどうかは知りませんが、終わらせてもらえなかった作品に対する怨念が、
どこかにあったのではないかと邪推してしまうのです。

何度も何度も、「続きがまだ書けなくて、待っている読者に申し訳ない」という趣旨の発言を繰り返され、
死の床でまで最終章にこだわりつづけなければならなかった氏は、ファンが異常増殖させた作品の犠牲者のように思えてなりません。

彼らは「標本」として集められた存在であり、「人間というもの」の様々な「標本」であるゆえに、
色んな人間の心の奥底の何かを呼び覚まし、その人の自我と同化してしまう危険な存在であるのかもしれません。
「異形感」は何らかの形で万人の中に存在する気持ちでしょう。
そもそも「人間」という知能の異常に発達した存在は、己の身体に違和感を覚えているゆえに、
自らの異形感を投入している可能性もあります。

これは、あくまでも私の見方に過ぎません。
こうやって突き放して見ることで、私はバランスを取り戻しつつある気もいたします。

付け加えて言うならば、某国の東西問題でモメたあと、現実にこの問題で苦しんでいる人そっちのけで、
漫画キャラクターのアイデンティティ(本当はファン自身のアイデンティティ)のために他国の政治問題を
あれこれ言うことに心底嫌気がさしてます。私はこの問題とあのキャラクターを同じまな板で論じるのは一切やめにしました。

(2001年6月記)




この文章に対してのご感想をコシバ・ヤヨイ様から頂きました。 幸い、ご本人の快いご承諾を頂くことができましたので、ここに掲載させていただきます。(ぐり(マタタビ))

ぐりさんの009私論、がーっと読んでしまいました。 
「鬼子」というのは、言い得て妙だなあと感心。 
ヨミ編で終わっていればとか、本当はヨミ編までだ、という意見の 
方は結構いらっしゃると思いますし、それは、そうだろうなあと思 
うのですが…。 
しかし、私は、復活させてくれてよかったとも思っています。 
「神々との闘い編」にしても、初めて読んだ時、なんとも後味の悪 
い思いをしたものですが、今となってみると、あそこまででも、未 
完の状態でも書いてくれてよかった、読めてよかったなあと。 

何にしても、009という作品は私にとって本当にワケのわからな 
い存在です。他の漫画だったら、読んで、面白い/面白くない、好 
き/嫌い、だけですっきり終わるのに、009の場合は、何だか 
色々ひっかかって、考えてしまうんですよね。 
中学の頃にアニメ放映をきっかけに原作を読み出したのですが、サ 
イボーグの境遇に感情移入しすぎて、「この人達の人生はいったい 
どうやって終わってしまうんだろう」と思って暗くなってしまい、 
作り話なのにねえと自分でうんざりしていた事を思い出します。 
その一方で、様々な時期に書かれて(アニメもあったし)、各編の 
テイストも様々であるためでしょう、読者として混乱していたよう 
な気がします。私が読みたい009ってコレなのだろうか、とか、 
そういうフラストレーションを感じてまで原作を読む必要があるの 
かと思ったり、それなのに、009とあれば読まずにいられない自 
分もいるし、それはもう、色々余計なことを考えてしまって…。若 
かったんだなあ、自分。 
かと思えば、かなり単純に、003かわいいなあ、009とちゃん 
とくっつくといいのになあ、という読み方もしていたわけで。はは 
はは(とはいえ、どうしてこんなに彼女がお気に入りなのかという 
と、これも理由がわからないのですが)。 
つらつらと思い付くまま書いてしまいました。すみません。独り言 
ですわね、これは。このくらいにしておきます。
(2001/10/23)

私がずっともやもやと抱えていながら、はっきりと文章にできないままでいたことをそのまま書いて頂いたかのようで、
まるで肩の荷がおりたかのような気持ちになることができました。
私もこのまま、もやもやしたままでいるでしょう。そして、それでもいいのだと、今はそう思えています。

2001年11月6日更新

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