所長からのメッセージ

所長からのメッセージ


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『コレステロールについて』


  みなさんはコレステロールを怖いものと思っていないでしょうか。コレステロールは決して怖いものではありません。むしろ身体に無くてはならない大事なものです。
  240や250では全く問題ありません。270でも280でも問題ありません。しかしみなさんは220を1でも越えると、高い高いと心配しております。どうして高いと思うようになったのでしょう。
  それは多分に学者と医療機関、そしてマスコミに責任があると思います。薬屋さんと結びついた御用学者、そしてそれを鵜呑みにしている医療機関、そしてそれを検証もせずに記事にしているマスコミ、この三者が日本の国民にコレステロール恐怖症を植え付けたのではないでしょうか。
  おおみや診療所では下記のデーターに基づいて診療をしています。従って殆どコレステロールの薬は出しておりません。言い換えれば、コレステロールの薬は殆ど必要ないということです。


高脂血症剤投薬治療基準  浜六郎氏
〔1〕ア)狭心症・心筋梗塞    
   イ)両親が60歳以下で心臓病
   ウ)糖尿病         

   上記の(ア)又は(イ)又は(ウ)に当てはまり            
    →HDL−ch 40未満であれば→T−ch 210以上の人は→治療
     HDL−ch 40以上であれば→T−ch 250以上の人は→治療

〔2〕ア)45〜64歳 男            
   イ)高血圧症                
   ウ)HDL−ch 40未満         
   上記の(ア)又は(イ)又は(ウ)に当てはまり
    →T−ch 250以上ならば→治療    

〔3〕ア)35〜44歳 男            
   イ)65〜74歳 男            
   ウ)閉経後〜75歳女            
   上記の(ア)又は(イ)又は(ウ)に当てはまり
    →T−ch 290以上ならば→治療    

〔4〕上記の〔1〕〔2〕〔3〕に当てはまらない下記の(ア)(イ)(ウ)(エ)の
   (ア)44歳以下 男                          
   (イ)75歳以上 男                          
   (ウ)閉経前   女                          
   (エ)76歳以上 女                          
          →T−ch 350以上ならば→治療            



コレステロール雑感 第1回
 健康診断の結果票を持参した女性です。
「先生、コレステロールが高いのです。230もあるのです。」
「なんだ、230ですか。全然心配ありませんよ」
「230ですよ。心配で心配でもう眠れません」
「230なんて、全然心配ないですよ。360まで正常だという学者もいますよ」
「ほんとうですか」
「ほんとうですよ。生理のある女性で、糖尿病も高血圧症もなく、両親に心臓病がなければ360まで正常というデーターがあります。生理が無くなった人は280までが正常値です。私は250〜260位の値のほうがいいと思っています。今の220で基準値を切っているやり方は間違いだと思いますよ。」
「え?どうしてですか。」
「今の220という基準値はヨーロッパやアメリカの白人のデーターなのです。白人は日本人の5倍も6倍も心臓疾患があります。そういう心臓疾患を予防する数字として220という基準値は意味があるのかもしれません。しかし、私たち日本人の心血管系の病気は白人の五分の一から六分の一ですよ。日本人に当てはめるのが無理なデーターをむりやりあてはめているのではないでしょうか」
「では、お薬はいらないですか。」
「いりませんよ。もっともあなたが欲しいと言えばいくらでも出しますよ。この薬はあなたには効かないけれども、おおみや診療所の経営にはよく効くんですよ。」

  こんな会話を毎日、何回も何回もやっています。高脂血症は怖くありません。怖いのは「コレステロール恐怖症」です。


04年1月  コレステロールシリーズその2
 本当にコレステロールというのは怖いものなのでしょうか。
 そんなことは決してないのです。しかし、 いまではこのコレステロールという言葉を知らない人は殆どありません。また殆どの人が、この言葉を知らないどころかその基準値さえも知っているのです。医療人でもないのに殆どの日本人が基準値を知っている唯一の検査項目ではないでしょうか。220r/dl(以下r/dlは省略)までが基準値(正常値)となっています。そして221になろうものならすぐにでも死んでしまうかのように心配をしています。
 どうしてそうなったのでしょうか。マスコミの力でしょう。自分の身体のことを知るのはそれなりに正しいのですが、正しい知識を知って欲しいものです。もちろん正しい知識を知らない庶民が悪いのではありません。正しい知識を報道しないマスコミに大いに責任があります。マスコミが学者のいう意見をそのまま採り上げて報道するから日本中が間違った知識で埋め尽くされてしまうのです。マスコミは大きな力を持っていることをもっと自覚すべきでしょう。その意見はどこから出ているのか、誰が言っているのか,裏に薬屋さんが見え隠れしていないかどうか等々を十分に検証した上で報道して欲しいものです。薬屋さんの回し者かと思うような御用学者の意見を、さも科学的に根拠のある学説かのようにして報道すれば、受け手の庶民は全く疑いもなくその意見を信じてしまうでしょう。
 コレステロールがよい例です。コレステロールを下げる薬を販売している薬屋さんにしてみれば基準値を10下げてもらえば年に数百億円の単位で儲かるでしょう。220を越えると異常ですよと言うのと、240までは大丈夫ですよと言うのとでは全く違います。220から239までが正常ですよとなると日本の高脂血症の患者さんは1000万人単位で少なくなってしまうでしょう。薬を飲ませる対象者が1000万人減ってしまうと薬の売り上げに大きく影響してしまうことは誰の目にも明らかです。ここに薬屋さんと手を結ぶ、いわゆる御用学者という人達が必要になってくるのです。そこでマスコミの記者はこの人が御用学者なのかそうではないのかをいつでも吟味する責任があります。その責任を放棄してただ声高に意見を述べる人の意見をマスコミに登場させた結果が日本中を「コレステロール恐怖症」にしてしまったのです。


04年2月
コレステロール雑感第3回

 マスコミだけではありません。医療関係者、とりわけ医師達の責任も重大です。多くの医師達がコレステロール恐怖症の患者さんを沢山作り上げてきたのです。医師自らがコレステロールの基準値を220までと信じ込んでいるからです。そしてその基準値を患者さんに伝えるから、伝えられた患者さんは220を1でも越えると恐怖になってしまうです。そして221から薬を飲ませるのです。コレステロール値を少しでも下げた方が長生きするものだと信じているのです。221から薬を飲まされた患者さんはたまったものではありません。コレステロールが250の患者さんに、薬を出さない医者を捜すのが難しいほど、日本中の医者もまたコレステロール恐怖症・コレステロール依存症に陥ってしまっているのです。そういう医者は殆どの場合わるぎで薬を出しているのではありません。250の値の人をそのまま放置しておくことは悪いことだと信じているのです。もちろんこれで儲かったと思う医師もいることはいるのです。しかし殆どの医師が良心的な医師なのです。しかし良心的だからといって、コレステロール値が230や240でコレステロールを下げる薬を出すことを容認してもいいものでしょうか。


コレステロール雑感 第4回
 今回はコレステロールがいかに大切なものか説明しましょう。コレステロールは決して悪者ではありません。悪者ではないどころか身体になくてはならない大事なものなのです。
 コレステロール(Tーch)を悪玉コレステロールなどと呼んでいますがそれはとんでもない誤解です。400も500にもなったら悪玉と呼んでもかまわないでしょうが、250や300で悪玉と呼ぶにはあまりにもコレステロールがかわいそうです。かわいそうと言うよりあまりにも非科学的過ぎるのです。身体になくてはならないものを悪玉と呼ぶべきではないのです。コレステロールは身体になくてはならないものです。身体に必要なホルモンをつくる基になっています。命を守る数々のホルモンの基礎がコレステロールなのです。コレステロールがなくては人間は一日たりとも生きてゆくことは出来ません。血管を脆くする作用もありますが血管を強化する材料でもあるのです。ですからコレステロールの低い人たちに脳出血が多発したのです。コレステロールは神経を形作る材料でもあります。コレステロールがなくては人間は生きてはいけないのです。

コレステロール雑感 第5回
 コレステロールの学問は、殆ど欧米人にあてはまる学問です。 欧米人は心臓疾患が非常に多く、その原因に高コレステロール血漿が注目されています。
 しかし日本人の心疾患の率は欧米人に比して五分の一〜六分の一とされています。欧米人より心疾患が遙かに低い日本人に欧米人の基準を当てはめるのはあまりにも乱暴です。
 この事を意図的に隠してコレステロールの恐怖をあおっているのが現状です。この事を知らされていないものですから、日本人はコレステロールが多いと脳卒中になるのではないかと心配しています。コレステロールが多いと脳卒中になりやすいと言うデーターはありません。
  むしろ今までの日本人の脳卒中はコレステロールの低い人に起こっているのです。
 低栄養で低コレステロール、その為に血管が脆くなってしまったのです。低コレステロールは血管を脆くするのです。低コレステロールは血管を決して丈夫にするのではないのです。
 コレステロール値は低ければ低いほど良いというものではありません。悪性疾患(癌)にかかっている人の大部分はコレステロールの値が低くなっています。
 コレステロール値が低い人には凶暴な人が多いとか、社会生活上に問題をおこす人が多いともいわれています。

コレストロール雑感第6回
日本人では250前後の人がもっとも長生きをしているというデーターもあります。220を越えると危険であるとか、220以下の人、200以下の人が長生きをしているというデーターは一つもありません。またおかしなことに、コレステロール値が少しでも高いと食事に気をつけましょうと指導しています。
 卵は食べないようにとか、食べても一日一つにしましょうとか、イクラはだめ、筋子もだめ、肉もだめ、牛乳もだめとか指導しています。そのため、まじめなコレステロール患者たちは食べたいものも食べずに一生懸命、食事を制限しています。それでいていっこうにコレステロール値は下がりません。そうして診察室ではまたまた医者から、もっと厳格に食事制限をするように指示されてきます。
 食事に気をつけるとコレステロール値は下がるのでしょうか。卵を食べないとコレステロール値は下がるのでしょうか。そんなことはないと最近の研究ははっきりと断言しています。マスコミにも少しづつそういう記事が載りだしています。
 知らないのは不勉強な医者だけです。
 古い知識で指導される患者はたまったものではありません。食べたいものを食べずに懸命に食事制限をしているのです。はっきり言っておきますが、食事を制限してもコレステロール値はほとんど変化はありません。

2004年8月号 第9回
 コレステロールを気にしなければ検査をする必要はありません。検査の費用も高いですよ。3割負担の医療費ですとコレステロールを検査するのにかかる費用は採血料と検査料で500円ほどかかります。病院に行く交通費も馬鹿になりません。コレステロールを下げる薬も安くはありません。どういう薬をどういう服用の仕方をするかで医療費はだいぶ違いますが、月に2000円〜3000円ほどかかるでしょう。お金をかけて副作用でもでたら、こんなつまらないことはないでしょう。コレステロールを気にしなければお金はかかりません。
 国民がコレステロールを気にしなくてもコレステロールを気にしている医師にかかれば事態は好転しません。コレステロールを気にしている医師はコレステロールを下げる薬をだすだけではありません。さらに詳しい検査をするように患者さんに要求します。
 検診を受けた後でコレステロールの項目に異常のマークがついていたとします。コレステロール値はわずか225でした。「先生、コレステロールに異常のマークがついています。どうしたらいいでしょうか」 医者は「コレステロールが高いですね。詳しい検査をしましょう。」と言いながら指示を出します。HDLーコレステロール、βーリポ蛋白、中性脂肪、アポリポ蛋白等々を検査するでしょう。こういう検査をすると一割負担の人で約500円かかります。3割負担ならその3倍です。それではこういう検査をしたことによって健康が増すのでしょうか。寿命が延びるのでしょうか。
 アポリポ蛋白Bが高いからいったいどうしろというのでしょう。HDLコレステロールが低いからといってどうしようというのでしょうか。なにもすることはないのです。

 いっそう健康になり、寿命が延びるのならば詳しい検査にお金を払っても払いがいがあるというものですが、健康にも寿命にもさほど影響はないのではないでしょうか。健康にも寿命にもさほど大きな影響のないものにお金を使うというのは無駄ではないでしょうか。
 「高脂血症」と呼ぶのは正しくないと思います。コレステロール値が高いのは「症」とつけるような病気ではないはずです。もしも高いのを気にするなら「高脂血状態」と呼ぶべきでしょう。「高脂血症」とは本当にうまくつけたものだと敵ながらあっぱれです。
 本当に怖いのは「高脂血症」ではなくコレステロールを怖がる「コレステロール恐怖症」ではないでしょうか。

    医師 松本光正

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