漢方薬

漢方薬のすすめ

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漢方薬のすすめ


 身体に穏やかで、しかも安全、それでいてしっかりした効き目のあるのが漢方薬です。
おおみや診療所では出来るだけ漢方を使用して治療することにつとめています。
私達の発行している「診療所だより」に毎号、漢方の話を連載しております。

04年1月
●シリーズ漢方
梔子柏皮湯(ししはくひとう)
以前、NHKの「ためしてガッテン」でアレルギーの薬として紹介されたことがあります。アトピーのかゆみの原因である「かゆみ神経」に作用してかゆみを元から抑えることが出来るとされています。アトピーだけではなくじんましんやその他のかゆみ一般にも使用します。肝臓の機能低下に伴うかゆみにも効果あるようです。
 成分は至って単純です。山梔子(さんしし。くちなし)と黄柏(おうばく。みかん科のきはだ)と甘草の三種が三対二対一の割合で入っています。
 値段も安い薬です。三割負担の方では一日あたり20円です。他にもかゆみの薬としては当帰飲子、白虎加人参湯、補中益気湯などがあります。


04年2月
小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
 今年もまた花粉症の季節がやってきました。花粉症といえば私はまずこの小青竜湯を使用します。最初に小青竜湯を使うのはこの薬ほど人を選ばずによく効く薬はないからです。十人中八人には効くでしょう。
 風邪薬としての葛根湯、咳止めとしての麦門冬湯もかなり万人向きですが小青竜湯もそれに負けず劣らずだと思います。
 花粉症にたいして西洋薬もよく効きます。しかし西洋薬の殆どは眠気を伴います。昼間から眠気を催す薬では困る人が大部分ですから眠気を伴わずよく効く小青竜湯はまさに現代人にぴったりの薬ではないでしょうか。私が小青竜湯にこだわるのは西洋薬の副作用が心配だからです。数年前に花粉症によく効くとされ日本中の医師が使っていたアレルギー薬が突然危険な薬として新聞紙上を賑わしたことがあります。服用後に心臓疾患が多発し、突然死が数多く報告されたのです。花粉症ごときで死んだのではたまりません。
 そうは言っても苦しいのが花粉症です。花粉症の時期になると沢山の方が今年も小青竜湯を処方してくださいと当院を訪れます。花粉症の方でまだお使いになられてない方は一度小青竜湯を試してみてはいかがでしょうか。
 世の中には悪い医師もいます。花粉症とみると誰彼となく説明なく、副腎皮質ホルモンを注射するのです。勿論この注射はよく効きます。どの薬も効果がないのなら使用するのも仕方がないと思いますが、どの薬も効かないということはまずありません。副腎皮質ホルモンは花粉症にはとてもよく効きますが大きな危険性もあることを知ってください。


04年3月
漢方薬の服用の仕方
 漢方薬は食前の服用を原則としていますが、これは決して決まったものではありません。
 西洋薬でも同じ事が言えます。お腹がすいたとき(空腹時。食前)に服用した方がよく効きます。西洋薬も食前と書く方が正しいのでしょうが胃腸症状を怖れて?習慣で食後となっています。漢方薬も食前に飲むのを忘れた場合は食後でも一向にかまいません。また、食前に服用するというのは忘れやすいし、食欲を落とすと言うこともありますのでいつでも食後に飲むという習慣にしてもかまいません。もちろん三度のうちの一回を就寝前に服用しても結構です。
 お湯に溶いてから服用した方がのみやすいならば、そういう服用の仕方でも結構です。ただ、「散」とついた薬(例 当帰芍薬散)や、「丸」とついた薬〔例 八味地黄丸)はお湯に溶かない方がいいと思います。それはもともとがお湯に溶かない形だからです。お湯に溶くのは「湯」とついた薬(例 葛根湯)だけにした方がよいでしょう。そのままの顆粒、錠剤、散剤のほうが飲みやすければそれでもかまいません。


04年4月
帰脾湯(きひとう)
 この薬は貧血の治療薬としてよく用いられます。貧血で疲れやすい、元気がないなどという時によく処方されます。
 このことは以前もこの欄で書きました。この薬はまた睡眠薬としてもよく効くようです。
 最近、強度の貧血のある方にこの薬を処方したところ、いままで寝付きが悪かったのがすぐに眠れるようになりましたと大変喜ばれました。
 私としては貧血の薬として処方したのでが、当人には睡眠薬としての方が効いたようです。そしてあまりにもよく眠れるようになったので、奥さんも飲んでみたそうです。そうしたら奥さんも長い間の不眠がすっかり治ってしまったとのこことです。
 睡眠薬としてはたらく漢方薬は少ないのですが、この薬は試してみる価値があるようです。また、物忘れにも効果有りと教科書にはかかれています。貧血があり、不眠症で、最近、少々物忘れが多くなってきたという方、どうぞおいで下さい。


04年5月
安中散(あんちゅうさん)
胃薬の代表格
 胃薬っていったい何なのでしょう。胃薬?よく考えてみると、これはとても変な薬です。なぜなら、胃が痛いという言う人の胃を胃カメラ(胃内視鏡)でみてみても全く何でもないことが沢山あります。
 吐き気がする、むかつく、酸っぱい水があがってくる、もたれるなどと言うときに同じように胃カメラをしても同様に何でもないことが多々あります。むしろ何でもないことの方が遙かにおおいのです。
 何でもないのですから胃薬はいらないはずです。しかし患者さんは胃薬が飲みたいと思います。医者も当然のように胃薬を出します。西洋医学の胃薬はいい加減なものがたくさんあります。そして危険な胃薬も沢山あります。もしも胃薬を飲みたいならば漢方薬の方が遙かに理にかなっていますし、安全です。
 今月の安中散は1000年も前の宗の時代から愛用されている効き目の確かな胃薬です。やせ形の人で、少し神経質、冷え性の人の胃薬です。 いつもみぞおちに痛みを感じる、腹が張る、食欲がない、げっぷが出るなどという人に適しています。成分は桂枝(ニッケ)、牡蠣(かきの殻)など七種類で構成されています。ケシ科の植物も使われているところが面白いと思ます。


04年6月
半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
 この漢方薬も胃薬としてよく使われます。中国の最も古い医書である傷寒論には次のように載っています。
「みぞおちにつかえ感があって、お腹がごろごろ鳴る。少々下痢気味で食欲がない。吐き気、げっぷのあるものによく効く。」今でいう急性、慢性の胃炎の症状でしょう。ようするになんとなく胃がへんだという人に用います。また二日酔いによいと書いてある教科書もあります。二日酔いの、むかむか感によく効いたのでしょう。別の教科書には口内炎によく効くと書いたものもあります。口腔の中も広い意味で、消化器の一つですから、消化器の炎症ととらえれば、口内炎に用いることには何等不思議はないでしょう。
 成分は朝鮮人参、乾燥させた生姜、甘草、なつめ、安定剤によく使われる半夏など七種で構成されています。そしてこの七種がうまーく調和して急性の胃の症状にも慢性の胃の症状にも効くのでしょう。単品の薬品か、薬品の寄せ集めで出来ている西洋薬より遙かに安全ではないでしょうか。

04年7月
人参湯
 この処方は胃腸の機能の衰弱を治す効能があります。虚弱体質の方の胃腸薬として有名です。
 顔色がすぐれず、なんとなく生気がなく、手足が冷えやすい、すぐに下痢をしやすく、めまいや頭痛、胃痛などを訴えます。口中に薄い唾液がたまることもあります。
 成分は至って簡単な構成になったいます。朝鮮人参、乾燥した生姜、甘草、それに朮(おけらという草)の4つです。いずれも虚弱体質の方によく使うものです。この薬を服用して、永年のみぞおちのむかむか感がとれたという方がおりました。またこの薬を飲んでいると食欲が出るという方もいます。やせ形で何となく胃が悪いと感じておられる方は一度、試してください。


04年8月 六君子湯(りっくんしとう)
 この薬は前月の人参湯の変方です。人参湯は朝鮮人参、乾燥した生姜、甘草、それに朮の四つの生薬で構成されていましたが、それに茯苓(さるのこしかけ科の茸の一種)、半夏、陳皮(みかんの皮)、大棗(なつめ)を加えて、むかむか感、みぞおちの気持ち悪さ、吐き気を抑えるように工夫されています。胃腸が弱く身体全体にだるさがあり、貧血、冷え性の人に用います。夏の暑さにすっかりやられて食欲がなく、食物が通りにくいという人にも用います。西洋薬を服用すると胃が悪くなる人にも愛用者が多い薬です。


04年9月 清心蓮子飲(せいしんれんしいん)
 慢性化した泌尿器科の疾患によく用いられる薬です。尿の検査をしても膀胱炎の症状がないのに排尿時の痛みがあったり、何となく残っている感じがしたり、排尿の力の弱い等という症状の時に用います。夜、何回もおしっこに起きるという人にもいいでしょう。この薬を用いる人は全体的に胃腸が弱い、全身がだるいという体力的に少し弱い感じの人たちです。八味丸どと同じように糖尿病の人にもよく用います。 そして八味丸が使えないような胃腸虚弱な人にも使えます。
 成分はにんじんや甘草など九つの生薬より成り立っています。蓮肉(れんにく)という蓮の種子、車前子(おおばこ)、地骨皮(じこっぴ)など他の漢方には使われない珍しい生薬も使われています。口内炎や精神安定剤にも使われます。


04年10月  桂枝湯(けいしとう)  88歳。女性。3ヶ月ほど微熱が続いているとのことでした。熱は毎日、夕方から夜中にかけて高くなり、時には37.7度ほどにもなるとのことでした。熱がでるとじっとりと汗をかくそうです。医者は各種の抗生物質や熱冷ましを出し続けていました。しかし一向によくならず、次第に衰弱してきたとのことです。私はこの方に「桂枝湯」を処方してみました。すると二日目から徐々に熱が下がり、一週間目には殆ど熱がなくなりました。
 食欲もでて、薄紙をはがすように元気になっていきました。「桂枝湯」はこのような症例には本当によく効きます。身体が衰弱して、微熱が続き、寝汗をかくというのが目安です。これを応用して、平素虚弱で、すぐに汗をかくような人の風邪に最適と思います。大人にも子供にも用いられます。成分は桂枝(かつらの木)、なつめ、芍薬、しょうが、甘草など五種類です。傷寒論という漢方のもっとも古い文献に出てくる薬です。長い長い経験がある、試され済みの良薬です。


04年11月  小健中湯(しょうけんちゅうとう)
前回の88歳女性の続きです。この方は微熱と同時に腹痛にも悩まされていました。ゆるい便が出るたびに激しくおなかが痛みます。このおなかの症状は五ヶ月以上続いています。前号の桂枝湯で微熱がなくなりましたので、私は腹痛をとる目的で「小健中湯」を処方しました。すると二日目からうそのようにおなかの痛みがなくなっていきました。「小健中湯」は桂枝湯に膠飴(こうい。お米の飴)を加えたものです。虚弱体質で胃腸が弱く、しばしば腹痛を伴うものに用いると教科書には書いてありますが、本当によく効きました。
 西洋薬をいろいろ試した末の漢方でしたから私もびっくりしました。「小健中湯」は小児の虚弱体質の改善にしばしば用いますが高齢の方の腹部症状にもよく効くようです。


04年12月 十味敗毒湯 (じゅうみはいどくとう)
 今回は90歳女性の症例です。足の甲にかゆみを伴う乾燥した、隆起性の皮膚病があるので「十味敗毒湯」を処方しました。
 この薬は江戸時代の医師、華岡青洲が作った漢方薬です。成分は桔梗、桜皮、乾かしたしょうがなど十種類で構成されています。おでき、湿疹、じんましんなどの皮膚病に頻用されますので処方してみました。
 残念ながら半年以上服用しましたが足の甲の湿疹は治りませんでした。皮膚科で切開し皮膚移植をしてようやく治りました。それなのにまた「十味敗毒湯」が欲しいと外来にやってきました。足の甲の皮膚病には効かなかったのにどうしてかと尋ねると「しみがよくとれるのヨ。」と言うのです。「十味敗毒湯」を飲むようになってから腕や胸の「しみが薄くなった」というのです。足の甲には効きませんでしたが、思わぬところで喜ばれました。

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