初めに
接辞について
接辞は、単独では単語として使う事は出来ません。動詞や名詞に接続されて初めて意味を持つ事が出来ます。
・動詞接尾辞 "Verb suffixes"
動詞の後につなげる形で置かれて、その動詞の意味を拡張します。
例えば否定形にしたり、完了形や進行形にしたりします。
1類から9類までの32種に、rover(場所が特定されず、使い方によって位置が変化する接尾辞)4種を加えた36種があります。
接頭辞-動詞-1-2-3-4-5-6-7-8-9
接尾辞はこの数字の順番に並べて使われます。名詞接尾辞同様、一つの動詞に付けられる接尾辞は各グループから一つずつです。
動詞接尾辞
動詞接尾辞リスト
1類 | 2類 | 3類 | 4類 | 5類 | 6類 | 7類 | 8類 | 9類 | rover |
-'egh -chuq |
-nIS -qang -rup -beH -vIp |
-choH -qa' |
-moH |
-lu' -laH |
-chu' -bej -ba' -law' |
-pu' -ta' -taH -lI' |
-neS |
-DI' -chugh -pa' -vIS -bogh -meH -'a' -wI' -mo' -jaj -ghach |
-be' -Qo' -Ha' -qu' |
第1類
-'egh
これは「自分自信に(自分自信を)〜する」と言う意味です。
主語と目的語が一致している時に使われます。この時の接頭辞は常に「目的語=なし」の物が使われます。
例:"jIchIp'egh " (私は自分の髪を切る) ("chIp"=散髪する)
"bIvoq'egh " (あなたはあなた自信を信じる) ("voq"=信じる)
-chuq
これは「互いに〜し合う」と言う意味です。
この接尾辞を使う時、接頭辞は「主語が複数」で「目的語がなし」の物("
ma-"、"
Su-"、"
pe-")しか使えません。
例:"maqIpchuq " (我々は互いに殴り合う) ("qIp"=打つ、殴る)
"SutlhIjchuq " (あなた達は互いに謝る) ("tlhIj"=わびる、あやまる)
"peHoHchuq " (お前達は互いに殺し合え) ("HoH"=殺す)
第2類
-nIS
これは「〜しなければならない」と言う意味です。
例:"vISopnIS " (私はそれを食べなければならない) ("Sop"=食べる)
"DaHoHnIS " (あなたは彼/彼女を殺さなければいけない)
"maghwI'pu' DIHoHnIS " (我々は裏切り者達を殺さなければならない) ("maghwI'-pu' "=裏切り者-複数)
"SutlhIjchuqnIS " (お前達は互いに謝らなければならない)
-qang
これは「自主的に〜する」「進んで〜する」と言う意味です。
例:"Heghqang " (彼/彼女は進んで死ぬ) ("Hegh"=死ぬ)
"qaja'qang " (私は自主的にあなたに話す) ("ja' "=話す)
-rup
これは「(行動の)〜する準備が出来た(準備をする)」「〜する覚悟が出来た」と言う意味です。
例:"vIqaDrup " (私はそれに挑む覚悟が出来た) ("qaD"=挑戦する(v)、挑戦(n))
" 'uQ maSoprup " (私達はディナーを食べる準備が出来た) (" 'uQ"=ディナー)
"reH Suvrup tlhIngan SuvwI' " (「クリンゴンの戦士は常に戦いの覚悟が出来ている」) ("reH"=いつも、"Suv"=戦う)
-beH
これは「(道具/装置の)〜する準備が出来た」と言う意味です。
例:"HotlhbeH " (スキャンの用意が出来た) ("Hotlh"=スキャンする)
"baHbeH DuS " (魚雷発射管の発射準備が出来た) ("baH"=発射する、"DuS "=魚雷発射管)
"nejwI' vIchu'beH " (私は探査機の起動準備をした) ("chu' "=起動する/作動させる、"nejwI' "=探査機)
-vIp
これは「〜するのを恐れる」「〜する事をためらう」と言う意味です。
この接尾辞を使うのには注意が必要です。クリンゴンの文化では、主語が「私」「私達」の時、つまり話者が自分自信について話す時にこの言葉を使う事はタブー視されています。
逆に、相手がクリンゴン人なら、主語を「あなた」「あなた達」にすれば効果的な侮辱の言葉になるでしょう。
例:"jIHoH'eghvIp " (私は自殺するのが怖い) ("HoH-'egh"=自殺する)
"yuQvammo' jIghoSvIp " (私はこの星から出るのが怖い)
("yuQ-vam-mo' "=惑星-この-〜から、"ghoS "=行く/向かう/去る)
"choSuvvIptaH " (あなたは私と戦うのを恐れている)
("cho-"=あなたは〜私に/を、"-taH"=〜している(7類動詞接尾辞))
第3類
-choH
これは「〜し始める」「〜になる」と言う意味です。
接続する動詞が動作を表す動詞の場合は「〜し始める」、形容詞的動詞の場合は「〜になる」と憶えておけば、大体間違いありません。
例:"jatlhchoH " ((彼/彼女は)話し始める) ("jatlh"=話す)
"maDo'choH " (我々は幸運になる/我々に運が向いてきた) ("Do' "=幸運な/運が良い)
" 'IHchoH be'Homvetlh " (その少女は美しくなった) (" 'IH"=美しい、"be'Hom"=少女)
-qa'
これは「〜し直す」、「再び〜する」と言う意味です。
例:"jatlhqa' " ((彼/彼女は)話し直す/もう一度言う)
"DajatlhnISqa' " (あなたは彼(彼女)にもう一度話さなければならない)
"yuQvetlh wIHIvqa' " (我々はあの惑星をもう一度攻撃する) ("yuQ-vetlh"=惑星-あの/その)
第4類
-moH
これは「〜させる」という意味です。
動作の原因や理由を表し、文の主語が動作の原因になります。
例:"mupojmoH HoD " (私は艦長の為に(艦長の指示で)分析する/艦長は私に分析させる) ("poj"=分析)
"targh vIqetmoH " (ターグは私によって走らされる/私はターグを走らせる) ("qet"=走る)
クリンゴン語の動詞には日本語や英語で言う形容詞も含まれています。 これらの形容詞に
-moH を付けると「〜する」という動詞になります。
例えば
poS(開いている)を
poSmoH とすると「開ける」という意味になります。
例:"lojmIt vIpoSmoH " (私はドアを開ける) ("lojmIt"=ドア、ゲート)
これは字義通りに直訳すると「ドアを開いている状態にさせる」ですが、普通の日本語に直せば「ドアを開ける」となるわけです。
例:"romuluSnganpu'mo' QeHmoHpu' tlhInganpu' " (クリンゴン人達はロミュラン人達のせいで怒った)
("QeH"=怒っている(v)/怒り(n))
第5類
-lu'
これは、「誰か/何かが〜する」と言う意味です。
動詞の動作を行う人物/物を特定しない、または特定できない時に使われる接尾辞です。
接頭辞は目的語が3人称(彼/彼女/それ、彼ら/彼女ら/それら)の物に限られ、この時は目的語「誰か/何か」が主語(私、あなた等)に対して「〜をする」と言う意味になります。
例:"Danejlu' " (誰かがあなたを探す) ("nej"=探す)
("Da-"=「あなた〜彼/彼女/それ」の主語と目的語が入れ替わっている点に注意して下さい)
"wIleghlu' " (誰かが私達を見る) ("legh"=見る)
"Heghlu'meH QaQ jajvam" (「今日は死ぬには良い日だ」)
("Hegh"=死ぬ、"-meH"=動作の目的、〜する為に(9類接尾辞)、"QaQ"=良い、"jajvam"=今日)
" 'oy'be'lu'chugh Qapbe'lu' " (「痛みを知らなければ、成功を知らない」)
("'oy' "=痛み、"-be' "=否定(rover)、"-chugh"=もし〜ならば(9類接尾辞))
※このように、格言や諺では動作主を特定していない(出来ない)為、クリンゴン語では"-lu' "を使用します。
tu'(見つける)に接続して
tu'lu' の形にすると「〜がある」「〜がいる」の意味になります。
"taj jej tu'lu' " (鋭いナイフがある) ("taj jej"=ナイフ-鋭い)
"naDev puqpu' tu'lu' " (子供達がここにいる) ("puq-pu' "=子供-達)
"tera'Daq SuvwI' yoH tu'be'lu' " (地球には勇敢な戦士はいない) ("tera' "=地球、"SuvwI' yoH"=勇敢な戦士)
"reH 'eb tu'lu' " (チャンスはいつでもある) (" 'eb"=チャンス)
"tIqDaq HoSna' tu'lu' " (「真の力は心にある」)
("tIq-Daq"=心-に、"HoS"=力、"-na' "=疑いなく、明らかに(3類名詞接尾辞))
-laH
「〜出来る」「〜する能力がある」と言う意味です。
例:"ghargh vISoplaH" (私はガーグを食べる事が出来る) ("Sop"=食べる)
"betleH Dalo'laHbe' " (お前はバトラフを使うことが出来ない)
("lo' "=使う、"-be' "=前の語を否定(rover))
"loS Holmey jatlhlaH " (彼/彼女は4カ国語を話せる) ("loS Holmey"=4・言語-複数)
第6類
第6類接尾辞は、3類名詞接尾辞のように、動詞の(形容詞的動詞の時は形容の)正確さを表します。
これらはあくまで、話し手本人が「こう思っている」「そうだと信じている」という意味になります。
また、これらの表現はクリンゴン語独特の言い回しなので、無理に日本語に訳す事はないと思います。
-chu'
これは動作を「完全に〜する」「最後まで〜する(やり通す)」と言う意味です。
例:"jIyajchu' " (私は完全に理解する/はっきり解る) ("yaj"=理解する)
"maSuvchu' " (我々は最後まで(死ぬまで)戦い通す)
"HoD vInumchu' " (私は必ず艦長に昇進する(と信じている)/絶対に艦長になってみせる) ("num"=昇進する)
-bej
これは「確かに〜する」、「疑いなく〜する」、「疑問の余地なく〜である」と言う意味です。
例:"vIHoHbej " (私は彼を間違いなく殺す)
"chImbej 'IwHIq bal " (ブラッドワインの瓶は(絶対に、間違いなく)空っぽだ)
(" 'IwHIq"=ブラッドワイン、"bal"=ボトル/水入れ/つぼ、"chIm"=空である(形容詞的動詞))
"SuvqangchoHbejpu' " (彼/彼女は疑いなく、自主的に戦い始めた)
("Suv-qang-choH-bej-pu' "=戦う-自主的に-〜し始める-疑いなく〜する-完了)
-ba'
これは「明らかに〜する(〜である)」、「言うまでもなく〜する(〜である)」と言う意味です。
話し手はそうだと信じているが絶対とは言い切れない、
-bej ほど強く確信していない場合に使われます。
例:"chonepba' " (あなたは私に明らかに嘘をついている) ("nep"=嘘をつく)
"qaD vIjuSba' " (私は言うまでもなく試験に合格する(ひょっとしたら落ちるかもしれない))
"mutlhIjqangchoHba' " (彼/彼女は私に、自分から謝り出すに違いない)
("tlhIj-qang-choH"=謝る-自主的に-〜し始める)
-law'
これは「〜するように思う」、「〜するだろう」、「見たところ〜(〜のように見える)」と言う意味です。
例:"mujatlhlaw' " (彼は私に話すと思う/彼は私に話すだろう)
"chImlaw' 'IwHIq bal " (ブラッドワインの瓶は空だと思う/見たところブラッドワインの瓶は空だ)
"vISuvnISqa'law' " (私は彼らと再び戦わなければならないと思う)