______________________________________________________________________
クリンゴン語講座
SuvwI'pu' mu'mey. 



このページでは、クリンゴン語での方位について解説します。


[ lurgh ]
Direction




クリンゴンの伝統的な方位の表し方は、周囲を三方向で指し示す方法をとります。 その方位は日の昇る真東を基準としています。

 chan 【チャン】 「東、東方のエリア」

 'ev 【ッエヴ】 「北西、北西のエリア」

 tIng 【ティング】 「南西、南西のエリア」

上記の訳語はあくまで便宜的に地球語に翻訳したもので、クリンゴン人たちの持っている概念とはやや違いがあるようです。
地球での北を0度、真東を90度、南を180度、西を270度とした場合、chan は90度方向を、'ev は320度方向を、tIng は220度方向を指します。 つまり三方向といっても、120度ずつに等分されているのではありません。
この3つの単語は名詞として、クリンゴン語の他の場所を示す名詞と同様に扱います。 例えば「上、上方」の意味の Dung や「下、下方」の bIng 、「そば、隣」の retlh などと同様に、名詞の後に置いて「〜の東」「〜の北西」「〜の南西」の意味に、
名詞の前に置けば「東の〜」「北西の〜」「南西の〜」という意味になります。

veng(町)を使った例。
 veng chan 「町の東方の地域、町から東の方」
 chan veng 「東方の地域の町、東の方にある町」
また場所を表す名詞接尾辞 -Daq を繋げて
 veng chanDaq jIjaH 「私は町の東方へ行く」(jaH=「行く」)
 veng chanDaq jIwam 「私は町の東方で狩りをする」(wam=「狩る」)
と言うことも出来ます。

では「町の東エリア」つまり「町の中の東地区」を表現するにはどうするかというと、「領域、地区、地域」の意味の yoS を使って
 veng chan yoS 「町の東地区」
と言います。 「町−東−地区」と、名詞は日本語の語順で並べるだけなので簡単だと思います。

また、所有の名詞接尾辞を付けることも出来ます。
 'evwIj 「私の北西の方向」
 chanlIj 「あなたの東の方向」
'evwIj は「自分から見て北西の方向」または、話者が今話しているその場にいるなら、「ここから北西の方」と訳すことも可能です。
(※シャクレジ地方の方言以外では、DungbIng には所有接尾辞を付けることは出来ませんが、方角を示す名詞には付けることが出来ます)
地図上のある地点を指し示して「ここから北西の方向」と言いたい時には
 Daqvam 'ev 「ここから北西」
と言います。
電話や通信機で話してる相手になら、
 Daqvetlh 'ev 「そこから北西」
と言うことも出来るでしょう。


chan, 'ev, tIng のそれぞれの中間の方角を表すには、これらの名詞を繋げます。 日本語でも「北」と「東」の中間の方角を表すのに、2つを合わせて「東北」と言うのとまったく同じです。
 tIng chan 「tIng と chan の中間方向(およそ南南東)」
 'ev chan 「'ev と chan の中間方向(およそ北北西)」
 'ev tIng または tIng 'ev 「'ev と tIng の中間方向、西」
この内、chan は必ず2番目に置きます。 'ev tIngtIng 'ev はどちらでも構いません。

さらに3つを並べて
 'ev chan 'ev 「'ev chan と 'ev の中間方向(およそ北方向)」
 'ev chan chan 「'ev chan と chan の中間方向(およそ北東)」
と言うことも出来ます。 これも日本語の「北北東」などと同じです。



また、以下のような慣用句があります。
 tIngvo' 'evDaq chanDaq 「南西から北西、東へ」
これは「いたる所、あらゆる場所」の Dat と同じ意味ですが、さらに強調された表現として使われます。 日本語だと「世界中の隅から隅まで」とか「ありとあらゆる所を」というような感じでしょうか。
 tIngvo' 'evDaq chanDaq jIlengpu' 
これで「私は世界中、ありとあらゆる所を旅してきた」という意味になります。



なお、現在の宇宙航行では惑星連邦と同様のシステム、すなわち方向を数字で表す仕組みを採用しています。
 He wej pagh Soch DoD cha' 「コース3-0-7、マーク2」
("He"=「コース」、"wej"=「3」、"pagh"=「ゼロ」、"Soch"=「7」、"DoD"=「マーク(上下角)」、"cha' "=「2」)




▼東を基準としていることで、『板橋クリンゴン資料館』のコウブチさんは
 「磁石で方位認識用具をつくるには、南北に延びる針の上にもう一本別の材質で東を指す針を付け加える必要があるのでしょうか。それともクリンゴン人は磁石は使わずに、星や太陽だけを頼りに方向を定めていたのでしょうか」
 ともっともな疑問を呈しています。 方位磁石があるなら、北を指してくれるのにわざわざ東を基準にするというのは不自然に感じます。
 これはしかし、公用語そのものと一緒で、単に皇帝の話す言葉(彼の出身地の言葉)が基準になっているだけかもしれません。 例えば、その昔のカーレスの出身地では、日が昇る東を基準にして方位を決めていて、方位磁石が発明された後も、それが伝統的に使われてきたのではないか、ということです。 方位の概念自体は、方位磁石の発明以前から存在しているはずですしね。
 古代エジプトは南から北へ流れるナイル川の周辺で発展した国だったので、ナイルが生活の中心にあり、ナイル上流=「南」が方位の基準になっていたようです。
 スタートレック本編を観る限り、クリンゴンは、人間よりも伝統を固持しているように思えますし、クリンゴンも何か伝統的・宗教的な理由で、日の出の方向を基準にすることにこだわり続けていたのかもしれません。






★説明の誤りや、抜けている部分は、ご指摘頂ければ訂正・追加したいと思います。

  制作・茶月夜葉 yaIba' chaDQI' (Earthdate:0707.21)



もどる

______________________________________________________________________