ナパームスクエアVD2009




今年は中学生日記でお届けします。

【登場人物】
夢乃君…中学二年生。
麻尋君…中学二年生。


去年のかけざんの日テキスト、のその後です。








ほんとに読む?読み飛ばし推奨






















































































 もうすぐ2月14日。バレンタインディ。

 それで僕はとても悩んでいた。
 バレンタインディ、女の子が好きな男の子にチョコを渡す日、そんなの誰だって知っている。
 じゃあ、男の子が好きな男の子にチョコを渡す日は?それがこの日でいいならば、じゃあ、どっちがどっちに渡すのだろう?


 二学期の始業式に勇気を出して告白した。
 そして僕たちはつきあうようになった。
 相手は同じクラスの麻尋君。
 僕は男の子で、麻尋君も男の子だ。じゃあバレンタインディは僕が麻尋君にチョコをあげるのが正しいのか、麻尋君が僕にチョコをくれるのが正しいのか。
 麻尋君にはわかるのかな?
 麻尋君に聞けばいいのかな?
 けれども怖いのはそれで麻尋君に、僕からもらうつもりも僕にあげるつもりもなかった、って言われた時なんだ。確かに僕らはつきあっている、と僕は、思っている。けれどもあれから僕らがしたことは、あの日手を繋いだぐらいで、それ以外は一学期と何も変わっていないのだ。
 昼休みは一緒に机を並べてお昼を食べたり、休み時間は廊下の隅で昨日見たテレビの話をしたり、うちに帰るとたいていつまらない話題でメールをしあったり、たまに電話をしあったり、試験前は一緒に勉強したり、休みの日は一緒に本屋に行って時間をつぶしたり、おこづかいをもらった時は一緒に映画を見たり。
 それって、ほんとに、一学期と何も変わっていない。
 一学期と一緒。
 ただ、当たり前に僕たち一緒にいただけだ。
 あの日、僕は麻尋君に好きだと言った。
 次の日、麻尋君も好きだと言ってくれた。
 けれどもその言葉はその後、僕らの間で交わされることはなかった。けれどもいつも僕たち一緒いただけで。
 二学期の始業式まで、さんざん僕を悩ませていた麻尋君へのどきどきは「好き」と言えば治るかと思ったのに。ひどくなる一方で。
 麻尋君はどうなんだろう?麻尋君も僕にどきどきしたりするのかな?僕は好きだといって、麻尋君も好きだといった。けれども僕の好きと麻尋君の好きは一緒だったんだろうか?本当は違うんじゃないだろうか。僕たちいつも一緒にいたけれど、一学期も二学期も何も変わらなかったじゃないか。
 だったら麻尋君にそれを聞けばいい、僕たち一緒だけれど一緒なんだろうか?けれども聞こうとすると麻尋君はにっこりと笑って「なに?」と聞く。その顔に僕はもうメロメロになってしまって、それを聞くより麻尋君を抱きしめたいと思う気持ちを抑えるので精一杯になるのだ。
 あれ、そういえば別に抱きしめちゃいけないと言われている訳じゃないのになんでなんだろう?
 まあそれで、僕は悩んでいる。
 バレンタインディ。
 僕が麻尋君にあげればいいのか、麻尋君からもらえばいいのか。


 考えあぐねて僕は、お姉ちゃんに相談した。こんな事はさすがにお父さんにもお母さんにも、ましてや犬のポチにも相談できない。でもお姉ちゃんに相談するのもためらった。どうもお姉ちゃんは麻尋君の事をあまり気に入っていないみたいだから。
 麻尋君がうちに遊びに来ると、お父さんもお母さんも歓迎してくれる。おとなしいけれど、いい子だね。お父さんもお母さんもそう言う。初めて会う人には必ず吠え立てるポチも、最初によく言っといたから麻尋君に吠えなかった。麻尋君はずっとマンション暮らしで、犬を飼ったことないというから、最初はおそるおそるポチを撫でていたけれど、今ではすっかりポチと仲良くなってじゃれあったりする。そんな麻尋君を僕はやっぱりかわいいなぁと思って見てしまうのだ。
 けれどもそんな僕たちを、お姉ちゃんはじぃっと見つめるだけだった。いつも麻尋君が挨拶すると「こんにちは」とこたえて、それからしばらく、近くで僕らを眺めている。僕らが僕の部屋に行くまで、眺めている。お姉ちゃんはクールというか、あまり笑ったりしない人だから、最初麻尋君は「僕、お姉さんをおこらせるようなことをした?」と聞いたぐらいだ。もちろん後でお姉ちゃんに聞くと「別に」というし、麻尋君に対しても「……別に」と言う。
 だから僕はお姉ちゃんに相談する時に、麻尋君の名前は出さなかった。もっと言うと、やっぱりそれは恥ずかしかったから、僕の話であることも言わなかった。
「あのさ、お姉ちゃん」
「なに?」
「もうすぐバレンタインだよね」
「それで?」
「あのさ、試しに聞いてみたいだけだなんだけど」
「なにを?」
「バレンタインは女の子が好きな男の子にチョコをあげる日だよね」
「なにゆってんのあんた?」
「あ、それでね。じゃあ、男の子が好きな男の子にチョコをあげる時っていうのは、どっちがどっちになるのかなー、って思って。あ、いや、単にそう思っただけで深い意味はないんだけれど」
 お姉ちゃんは一瞬びっくりして、そして小さく舌打ちした。
「まだヤッてないのか」
「え?あ、なに?なにが?」
 なんだかお姉ちゃんがひどく機嫌が悪くなったみたいだ。僕が困惑した。けれどもお姉ちゃんは答えてくれた。
「そんなの受が攻にあげるに決まってるじゃない」
 教えてくれたけれど、よくわからない。うけ?せめ?
「あー、じゃあこう言えばわかる?ネコがタチにあげるの」
 仕方ないから分かりやすく言ってやったのよ、て顔をしているけれど、僕にはぜんぜんわからなかった。
「え?猫?ウチで飼っているのは犬だし麻尋君ちはマンションだから猫なんて飼えないよ?」
 言ってからしまったと思った。あんなに麻尋君の名前を出すまいと思っていたのに、っていうか僕と麻尋君の話だなんて、一言も言うつもりなかったのに。
 しかしお姉ちゃんはそこには何も言わなかった。
 安心する僕にお姉ちゃんがもうこの話はおしまい、とでも言うように言い放った。
「どっちでもいいんじゃない?好きなんだったら」

 そうか、それでいいんだ。
 僕が麻尋君を好きならば、それでいいんだ。


 それで2月14日。バレンタインディ。
 土曜日だったけれど、麻尋君はうちに遊びに来ていた。僕の部屋でなんとなくマンガを読んでいる。僕は今がチャンスとばかり、麻尋君にチョコを差し出した。青い包み紙に黄色いリボン。
 僕が麻尋君を好きならそれでいい。けれども麻尋君はどうだろうか。僕と同じように好きなんだろうか。僕たち一緒なんだろうか。
 僕のチョコを受け取ってくれるのだろうか?
「麻尋君、こ、これ!」
 一瞬かすめた不安を打ち消すように声を張り上げたら、思わず裏返った。
 僕が差し出した包みを見て麻尋君はびっくりした顔をしていた。ああ、もしかして失敗だった?
「これは?」
「あの、その、今日」
「バレンタイン?」
「そそそそう!」
 麻尋君は何か考え込んでいた。僕が不安になってのぞき込むと、麻尋君は、笑った。
「まあ、君がそっちがいいならそっちでもいいんだけれど」
「え?」
「僕、どっちもいけるし」
「え?」
「僕は自分が、て思っていたんだけれどね」
 そういって麻尋君が何かを僕に差し出した。かわいいピンクの包み紙の、白いリボンのかかった、それは
「これは?」
「今日、バレンタインだから」
 今度は僕がびっくりする番だった。いや、びっくりするよりものすごく嬉しかった。
 だって、バレンタインディは好きな人にチョコをあげる日だもの。僕は麻尋君が好きだからチョコをあげた。僕にチョコをくれた麻尋君は僕を好き。なんだ、やっぱり僕たちは一緒だったんだ。僕は麻尋君を好きで、麻尋君は僕が好き。うわあ、どうしよう、どうしてそれだけでこんなにしあわせになれるんだろう、僕。
「それで、ホワイトディはどうしようか?」
 麻尋君が言った。
「え?」
「僕があげる、でいいの?」
「なんで?僕もあげたし、麻尋君もくれたし。だからお互いにまた「お返し」をすればいいんでしょ?」
 と聞き返すと、麻尋君は首をちょこんと傾げて
「なんだ、そういうつもりじゃないのか」
「え?」
「てっきり君が受って意味かと思ったのに」
「え?」
 麻尋君は何を言っているんだろう。その言葉になんか聞き覚えがあるけれど、思い出せない。つい最近な気がする。
「……ま、別に今決めなくてもいいよね」
「なにを?」
「夢乃君」
「だから、なに?」
「僕、夢乃君のそういうところも好きだよ」
 好きだよ、好き……今、麻尋君は僕に好きってゆった。あの日の次の日、はにかみながら言った「昨日いい忘れたけれど、僕も好きだよ」以来の麻尋君の「好き」。
「ぼ、ぼくも!僕も麻尋君のそういうところ好きだ!」
「そういうところってどんなところ?」
 思わずオウム返しに返したら、逆に麻尋君に聞かれた。僕は慌てて
「全部、ぜんぶ!」
「こういうところも?」
 麻尋君が僕のほっぺにキスをした。






END

++++++++++
去年のかけざんの日のコレの続きです。夢乃×麻尋の中学生日記。
っていうかこんなおぼこい中二いないよ!と言われそうですが(笑)。夢乃君は箱入りに純真なんだと思ってください。でも身体はもう大人なので、なんで麻尋君の夢を見た朝はこうなっているんだろうなぁと首を傾げています……(さいあくです)。身体ばかりが大人になって、って奴です。気持ちとリビドー(言うな)がつながっていない思春期です(そんなのあるの?)(夢乃君にはあるの!)。

 夢乃君の家族構成は前にも言ったとおり、おとめの星87のアレです。おとうさん:どいちゃん、おかあさん:みなほさりちゃん、おねえさん:まりぃ、犬のポチ:オトハナ(笑)。まりぃお姉ちゃんはガチの腐女子で、弟が麻尋君を家につれてきた時からピンときているという(そして経過を観察しているという)寸法です(笑)。本当は悩む弟に「こういうことなんだよ」と机の上にBL本を置いていくお姉ちゃんとかいうエピソードもあったんですが、だんだん表に出せない感じになったのでやめました(笑)。まあ、いずれそういう事もあって、受攻判定が決まるんだと思います(笑)。

 そんな感じにいくらでも漏れるんだけどなー(皆まで言わせないでください)。







そ、それでは気を取り直していつものをどうそ→かけざんだいすき。