慣れないのか馴れないのか、さそりはいつも苦しそうに唇をゆがませる。必死に声を抑える。けれどもそれが快楽である証に、身体はこんなに慣れているのに馴れているのに。
 いつもは気にしないその態度が、今日はなぜかひっかかる。
「苦しい?」
 そう、聞いた。さそりは首をふった。
「じゃあ、」
 ゆがんだ唇を指でこじあける。吐息とともに漏れるのは、甘い。
 身体はこんなに慣れているのに馴れているのに。
「どうして?」
 いつもならその快楽に自分だって溺れてゆくのに、今日はなぜかひっかかる。
「……お前が」
「私、が?」
「お前だって」
「私も?」
 ――苦しそうな顔しているじゃねぇか。
「だか……らッ」
「だから?」
 さそりの反論を認めないように、聞かないように。らっこは殊更、さそりの身体をかけあがらせた。
「俺、も」
「あなたも?」
「俺……と、俺……も、」
 ――一緒なんだよ。


 身体はこんなに慣れているのに。身体はこんなに馴れているのに。
 こころだけはどこか慣れあうことを恐れている。馴れあうことを恐れている。
「…ッあ!」
「……」
 手探りのまま身体だけを寄せ合っていく。それだけが今できることであるかのように。怯えているのは、震えているのは、
「……あなたも?」
 応える代わりに、さそりはらっこの背に爪を立てた。






【解説】
 らぶらぶ節18禁強化シリーズ(ええ?)。これを書いたとき、かおりちゃんが「あたしもヤル!」と宣言してくれたので、皆でお茶碗もって待ち構えような!(外堀埋めつつ)(笑)  

2005.07.28


既刊。