冬を撮ろうか

ナギの「連れてけ病」が出た。
真冬のことだ。


だだっ広い、雪原が撮りたいのだという。


白いばかりの景色、シャッターを切り続ける。
何が面白いのかと言われるかもしれない。
でも私も、この白い景色が好きだ。
どこがと説明は出来ないけれど。


「…ここは?」
遺跡だよ。土の下に、
人が建てた大きな柵の跡が残っている。


「あれは?」
土の下の痕跡を元に、今の人間が建て直したもんだ。
当時の姿を忠実に再現できてるかどうかは、
誰にも分からんがね。


「今の季節だと、最近の人間の仕業も雪の下だな」
だな。まあ、春になれば再び姿を現すわけだが。


「…ふう」


「雪が解けて見えたモンも、いずれは土に還るんだべ?」
うん、多分ね。
「何もかも、雪と同じだ」
そう。そんで、季節が巡れば何度でも現れる。


「帰ろ。写真、保存するべ」
うん。そうだな。



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