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2号からの手紙

2003年12月29日
歳末特別編「ライブを鑑賞せよ!〜降水との闘い〜」(12月26日/渋谷NEST)


 アーティスト山口晶のライブの外側に、冷たい男達の壮絶な闘いの物語があった─。
♪ かぜのなかのす〜ば(以下略)
 2003年12月26日、とあるライブハウスに、ある男達がいた。通称「愛でる探検隊」と呼ばれるプロジェクトに関わる者達だった。NEGI(2号)は、その隊長を務めていた。この日二組目のアーティストの曲を聴いていたNEGI(2号)は、振動を察知した。くぐもってはいたが、それは確かに、大パワーのドラムの音だった。階下にある別のライブ会場のものだった。床を、壁を通して、パイプ椅子に座ったNEGI(2号)の足の裏や尻に振動を伝え、リズムも何もない雑音として、耳にも伝わっていた。くぐもったドゴドゴという重低音が、余分なパートとなって曲をかき乱し、音の間を奪った。アコースティックな曲が、台無しだった。いよいよ山口晶の出番となったが、ノイズが止むことはなかった。男達は、泣いた。
 結局、その日の全ての出演者のステージが終わるまで、振動は絶えなかった。外に出ると、極小の雨粒が頬にあたった。NEGI(2号)は、気のせいだと思った。前後の数日、雨の予報は出ていなかった。朝の新聞でも、降水確率は10%だった。全く予期していなかった。すぐに電車に乗って、最寄駅まで戻った。駅を出ると、雨が降っていた。しかし男達は、そのまま帰宅するわけにはいかなかった。どうしても、胃の中に出来た大きな空隙を、埋める必要があった。NEGI(2号)は、決断を下した。反対する者は、一人もなかった。路面の水たまりを見ると、雨は一度強くなって、回復に向かっているところに思えた。男達は天に祈ると、ファミリーレストランに入った。一時間半程の後、男達が見たものは……本降りのみぞれだった。自転車のサドルには、雪が積もっていた。NEGI(2号)の口から、有名な詩の一節がこぼれ出た。あめゆじゅ、とてちてけんじゃ……男達は、泣いた。
 深夜の帰り道、田んぼは一面真っ白だった。みぞれはもう、雪と言ってよかった。しかし、べちゃべちゃに湿っていた。最悪だった。冷たく濡れた。自転車のブレーキも、利かなかった。腕に肩に雪が積もり、顔にあたると、痛かった。男達は、泣いた。
 四戦二雨一雪。それがこの年の、男達の、山口晶ライブ鑑賞における、降水との闘いの記録だった。
♪ た〜びは〜まだ〜終わ(以下略)

プロジェクト2号     


2003年11月22日
2号からの手紙(11月20日/渋谷RUIDO k2)



 2003年11月20日。我々愛でる探検隊は、前人未到の地、シブヤにあるというモヤイ像を探すための旅に出かけることとなった。
 ではなく、渋谷RUIDO k2での晶君のライブである。
 当日の明け方、ベースキャンプでふと目を覚ますと……雨が降っている。雨は瀟々と降っている。なんてことだ。憂鬱だ。ベースキャンプから最寄りの鉄道の駅までは自転車で20分の距離である。地元の路線バスを使って別の駅へ行くことも出来るが、そうすると帰りは雨の中歩くしかない。せめて行きの道程の間だけでも止んでいてほしい。雨は我々の体力を奪う。どのように駅へ向かうべきか考えながら、再び深い眠りについたのであった。
 結果、タイミングよく出かける時間に止み間があったので、自転車で駅へ向かい、濡れずにすんだ。のっけからの体力の浪費は回避された。
 我々愛でる探検隊に今回課せられた使命はもう一つあった。それはフリーペーパー『UNGA!』の捕獲である。かつて私は
第一次愛でる会『UNGA!』捕獲作戦に参加し、捕獲出来ずに終わった苦い経験を持つ。第二次以降の捕獲隊の奮戦によって、『UNGA!』捕獲の可能性が高い場所と、発生期間の見当がつけられていたため、今回は比較的容易なはずだ。
 そのためにはシブヤへ向かう前に、今なお残る未開のジャングル、イケブクロを通るルートを選択する必要があった。そこで我々は、愛でる会長と合流する前にイケブクロで使命を果たすべく、現地ガイドが手配したバスに、何故か並んで待った上、200円(定額制)を前払いして乗り込んだのである。乗車口は前方のドア、降車は後方と決まっていた。
 一応何度か利用したことのあるルートではあったが、記憶は薄く、時間の見当もつかなかった。
 豊島五丁目。これで豊島区には入ったとホッとした。時間は限られている。
 豊島六丁目。うむ。
 豊島四丁目。増えたと思ったら減るのかい!
 豊島三丁目。何!?
 豊島二丁目。おおぅ!?いつまで続くのだ!
 王子駅。え…?
 飛鳥山。どこへ行くんだ。
 滝野川二丁目。嫌な予感。
 滝野川三丁目。やはり…。今度はいくつ?
 西巣鴨。巣鴨?そういう地理的配置なのかぁ。「巣鴨デ、ノイル師匠ヲ見マシタ。」
 掘割。ああ、時間がまずくなってきた…。あとどのくらいかかるんだ…?
 上池袋四丁目。おお!池袋と。しかし、またもやいくつ続くのか!?と、その時!!
 上池袋三丁目。「ああ〜!」「どうした!」「隊長ぉぉぉ〜、クモがぁ!」
 上池袋一丁目。いっちょめ、いっちょめ、ワ〜オ!
 豊島区役所。確かイケブクロからすぐの場所だ!いいか、気を引き締めて行けよ!
 池袋駅東口。着いた……………けれど、もう愛でる会長との合流時間が…。
 こうして私はまたも『UNGA!』捕獲を断念せざるを得なかったのである。急いでシブヤに向かわなければ。さようなら、イケフクロウ。我々は尚も未知のRUIDO k2への道程を進む!さようなら、人類の古代遺産モヤイ像。そして…!

 膝ぷるぷるぷるぷるぷる。

 RUIDO k2を出ると、雨が降っていた…。最寄駅に着いた私は自転車に跨がり、濡れNEGIとなって帰ったのであった。晶君のライブは、これで3戦2雨である。
 しかし我々愛でる探検隊は、シブヤRUIDO k2に、またもや山口晶の深淵を見た!

 追伸 どうもいまだ晶君を目の前にすると、気持ちがうわずります。声もうわずっているとか。学生時分にクラスが一緒になったことのない女の子に恋したようなものかなぁ。今の僕なら関係ないことなのに。そういうの経験なかったし仕方ない。今日までに5回程晶君が夢に登場してる。いや誤解しないでくださいよ、男が男に惚れる、というやつですよ。
 しかし男の威厳というものがまるでない。いかん。ということで僕は静かなるファンとしての初心に返って、男は黙ってサッポロビール、愛でる会でも無意味な隠れキャラに戻ろうと思った「今日子の所に泊まるって言ったじゃん!」「母さん夕べ、今日子ちゃんの家に電話したのよ」、いや今日この頃。

2号     


2003年10月29日
2号からの手紙



 前回僕は『銀河鉄道の夜』のことを書いたけれども、後日偶然にもテレビでアニメが放送された。もちろん見た。これですよ、これ。原作も再読してみたり。
 10月15日、晶君はゲスト出演したFM NACK5『G・SPOT』の中で、「お気に入りの曲」として、このアニメのテーマ曲(細野晴臣氏作曲)を流していた。いいですね、この曲。

 さて10月22日、晶君から二枚目の音の葉が届けられた。『うつろぎ12号線』である。
 愛でる会長が「晶君」と呼んでいるので、僕もすっかり感化されてしまった。御容赦を。
 僕は遅れて27日にようやくその音の葉を手にした。
 オフィシャルページの慕夜記、掲示板に書かれた彼の言の葉もまた、いつもながら揺さぶる力を見せている。
 垣間見る彼の混沌に、頷き感嘆し驚愕する。それも僕の勝手に作り上げた虚像に過ぎないのだが。
 厳密に言うと、彼の混沌には何人も辿り着けないだろう。僕の混沌にも誰も辿り着けないし、愛でる会長の混沌にも、アルびゃーニョンの混沌にも誰も辿り着けないのだ。
 ただ僕等に出来るのは、辿ろうともせず山口晶の世界を愛でることだけ。勝手な話である。

 ピリピリピリピリピリピリ・・・。
 『うつろぎ12号線』を聴いている間、僕の体には微弱な電流がピリピリと流れ続けていた。手足に本当に痺れを感じていたのだ。特に『イタズラ』では、ベース音に合わせてそのパルスがブゥン、ブゥンと揺れた。
 聴き終わった途端に僕は、彼に反射した自分を見てしまう。彼の歌は、僕のせつない闇を突つく。直接的な言葉ではないのに。僕はやはりダメージを受けてしまう…。
 自分を打ちのめす対象に心引かれるのは、悔しくもありながら、どこかエロティックだ…。
 あれ?これって『イタズラ』と同じ??

 先日僕が「うつろぎ」に田んぼ道を散歩していた時の話を一席。
 さっぱり頭を刈られた田んぼのわら屑の上に、
ザリガニの屍骸が散乱しているのを見つけた。束ねられたわらの上にもあったので、あきらかに何者かがそうしたのだとわかった。燃える男の赤いトラクターか、はたまた子供の仕業なのか?
 しかし僕は屍骸のある共通点から謎の答えを導き出したのである!じっちゃんをはなにかけて!共通点とはどれもが背中が割れていたことである。
 おそらく稲が刈られ隠れる場所を失い、水が抜かれ俊敏に動けなくなったザリガニを、鳥達がついばんだのである。
 その硬い魂の抜殻が、かつてあった何かを物語る遺跡のように感じて見入ってしまう。これもまた一つの秋なのだろう。天高くなりゆく程に、水底もまた深くなる。上にも下にも外にも内にも荘厳なる底無しの蒼。赤や黄色は境界線を縁取るばかり。
 そして僕はポケットに手を入れて、何か突っ込んであったようなとまさぐりながら、また歩き出したのだった。「うつろぎ田んぼ道」を。肩を風に切られながら。ぐうぐうと鳴る腹を騙し楊枝をくわえながら。あっしには関わりのねぇこって。

 追伸 もう修行の旅には出ません。修行に励んでいることで、自分は進んでいると誤魔化すのはやめです。自分のナノ加減を受け止めようと思います。
 今度は経済界に嵐を起こすことにしました。手始めにラクト・バチルス・カゼイ・シロタ株を買ってみようかと思っています。

2号     


 ・・・それはヤクルト菌。

2003年7月5日
2号からの手紙(6月30日/渋谷eggsite)



 今回は真面目に書きたいと思います。

 大リーグボールではベッカムに勝てないことに気付き帰って来た僕は渋谷へ急いだ。
 大宮よりもファンが多く集まっていた。だからか空気の音までとはいかなかったが、勿論重力は健在だ。
 しかし、今日の重力は地下のこの場所から何処か上空へのベクトルを持っているように感じた。気のせいか今夜の彼の歌声は、ぐっと上がるところでより遠く伸びていく印象があったのだ。その度に声に引っ張られて僕の三半規管は惑わされた。またもや口から脳からモッツァレラチーズみたいな物が出ていきそうだった。終いには体がふらふらと揺れだしていた。
 これ以上曲数が増えたら僕はずっと立って見ていることは出来ないだろうと思う。
 少し疲れた僕と会長は、後の出演者のステージが終わらぬ内に外の空気を吸いに出た。入口前の少し段になった場所にへたれ込む。無風で暑くも寒くもない。向かいのビルの壁面に設えられた大きな時計がぼおっと赤く光っている。話を聞きながら僕は、何故時計の光の色を赤なんて色にしたのだろうとわけもなく思う。明るい闇に浮かぶビル、目の前の通りを走り抜けるバス、ろれつの回らない酩酊状態で携帯で話している女の子、都会の灯を浴びて黄色く見える雲。それらの光景が何故か脳裏に醜くも美しく焼き付いている。全てがふわふわとしていながらも確かに現実で、乾いていて湿っていて、薄くて濃かった。
 そして地球の重力に否応なく張り付いた金属の箱に乗って日常へ還った。
 後日、ふと子供の頃に『銀河鉄道の夜』のアニメを見た時、のちに原作を読んだ時に感じた妙な感覚を思い出した。あの夜はそれに似ていたのだ。あまり読書しない僕が唯一読んだ宮沢作品。生と死のはざま。夢と現のはざま。あの赤い時計は、停車場の時計か、蠍の火か。ビル街は天の野原だったのか。あそこは「卵の場所」とでもいう停車場だったのかもしれない。
 何故こんな事を考えているのだろう。
 ライブ翌日の朝、こんな夢を見た。
 僕は「ゲゲゲの鬼太郎」や「目玉おやじ」と一緒にいて、何かの危機について話し合っていた。その危機を回避するには、ある伝説の妖怪に助けを求めなければならないとのおやじの提言で、僕達は居所を知る「ぴちょんくん」達の先導のもと、川を渡り山を登っていった。……相当地球の重力から遊離していたに違いない。

 追伸 これから、バンタム級で戦うために地下室に隠って減量します。
2号     


2003年6月26日
2号からの手紙(6月24日/大宮Hearts)



 そこに重力が生まれた。
 激しくは見えないが、確実に何物をも引き付ける重力が。先程までこちらに打ち寄せるばかりだった音の波が引いていくように、全てが吸い寄せられてゆく。
 時間と共に重さを増して重力場とでも言うような空間を造り上げていく。時折訪れる静寂の中では、空気の流れてゆく音さえもが聞き取れるような錯覚を覚える。人も、塵も、空気も、光でさえも、あらゆる原子、粒子を飲み込んで、その中心部は闇の中で仄かに、光とも言えぬ光を放つ。
 確かに周囲より重く質量の密な空間を感じるのに、真空の無重力域であるかのような不思議な虚無感。一体僕は今何処にいるのだろう?肉体はこの重力にとって意味を為さない。質量ですらない。骸を残して精神だけが重力に捉えられている。
 その重力の底に、彼はいた。

 『ヨダカの星』のCDを聴いた時に感じた、自分の中から何かが何処かへ出て行ってしまいそうな感覚が、ライブでは確かなベクトルを持って感じられたのであります!そしていつか脳裏に浮かんだ仄かに光る彼を、自分は確かにこの目で確認したのであります!
 しかし一つだけ悔やんでも悔やみきれないことがあるのであります!
 それは彼が自分に対してフッてくれたフリに対して、咄嗟にボケられずにまともに答えてしまった事であります!ライブ初体験後の舞い上がった状態とはいえ、自分の芸人としての力量の無さを痛感した次第であります!慚愧に耐えない思いであります!
 よって自分、修行の旅に出る所存であります!
アルびゃーニョン師匠の指導の下、木の葉を揺らさぬボールが投げられるようになるまで帰るつもりはありません!
 探さないでくださいであります!
2号     


 ・・・なるほど。2号は自ら失踪中であった。果たして大リーグボールは完成するのか。

2003年6月7日
昨夜届いた報告書。



けっかほおこく 6がつ2日

 きようぼくわついでがあったのでCDやさんにいきました。「すみや」さんというとこです。
 少し前に「
すみや」情報誌Groovin'」43号、BRAND NEW ARTISTのコーナーで山口 晶が紹介されているという情報を聞いていたので、もう次の44号が出ているようだったけど見に行ってみたのです。
 しかし案の定、最新号はどっさり置いてあったが43号はすでに無いとのことだった。情報が遅かった…。
 だが陳列棚を覗くと、そこにはジャケットが見えるように(2枚分も)置かれた『ヨダカの星』が。店のお薦めとして印刷された解説ポップ付きである。CDショップで陳列された様子を見るのは初めてだったので、些か興奮した。勿論既に所有しているので購入はしなかったが。
 もしかすると、「すみや」では全店舗でこうなのかもしれないと思いました。
 じょおほおしはなくてざんねんだたけど、わりかし近くでうているのがみれてとてもよかたです。

 ついしん。アルびゃーニョンに鼻ピアスをしてやてください。


2003年5月22日
証言者2号(仮名)のその後。

 彼は現在消息不明である。しかし消息を絶つ直前に謎のメールを愛でる会長に宛てて送信していた。



 送信アドレス mederu_2go@yamame.ne.jp
 宛先 mederukaicyo_1go@yamame.ne.jp
 送信日時 Wed, 21 May 2003 04:54:40 +0900
 重要度 普通
 件名 グルグルバビンチョパペッピポ。
 ▼本文


  頭がぐるぐるしている。

  何か“出そう”だ。

  これ以上語ることはできない・・・

  探さないでください。

             2号(仮名)



 ・・・以上、3回に渡ってお送りして参りました、2号(仮名)によるヨダカの星を聴いた前後の感想(?)は、本日をもちまして終了とさせていただきます。

2003年5月21日
2号(仮名)ふたたび。

 あれからどうにか「ヨダカの星」を聴く事は出来たようである。どう感じたのか。




 ・・・・・

 ・・・・・・・


 ノーコメント。



 取材を拒否して立ち去ってゆく2号(仮名)の明日はどっちだ。

2003年5月20日
2号(仮名)の証言

(プライバシー保護のため音声を変えてあります)


 ・・・とても静かな夜の出来事でした。

 その日僕達は遊び半分でとある心霊スポットに

 いや違う。

 昨日手許に「ヨダカの星」がやって来たんですが、

 何となく怖い気がしてCDをトレイの上に乗せる事も出来なかったんです・・・(泣)。

 で、そのままぼんやりと朝を迎えてしまって・・・。

 ・・・・・

 今晩こそ聴こうと思ってます。

 ・・・・・



解説:彼は雑音の少ない夜中に電気を消して聴くのが習慣だそうだ。まして「ヨダカの星」は夜のイメージなので、どうしても夜に聴きたかったらしい。受話器越しの声は微妙にビブラートがかかっていた。彼は今夜「ヨダカの星」を聴く事は出来るのだろうか・・・


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山口晶公認ファンサイト・山口晶の世界を愛でる会
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