住まい〜ロングハウス〜
森と共に生きる人びと
〜イバンのくらし〜
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全村人が「ひとつ屋根の下」に暮らしている、という村の形態(かたち)です。決して一人では生きていけない厳しい環境「熱帯雨林」が、「ロングハウス」という共同コミュニティを生み出したのでしょう。


<“ロングハウス”という村のかたち>
 ロングハウスとは、サラワクの森に暮す先住民族の間に見られる村の形態の一種です。全村人がひとつ屋根の下、きびしい熱帯雨林の環境で、共同生活を送っています。
 伝統的なロングハウスは、木造、高床になっています。高床にするのは土地を平らに整地する必要がないためだといわれています。たとえ傾斜地であっても、ロングハウスを支える柱の長さを調整することで対処できるのです。ロングハウスの長さはその村の世帯数によって変わってきます。(左下)のロングハウスは50世帯が暮らし、その長さは約300メートルあります。
 道路の整備が困難な熱帯雨林では川が交通の最大の手段となり、ロングハウスも川沿いに建てられるのが一般的です。また、生活用水を川の水に頼ることからも、川の側に立てる必要があるようです。(右下)
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<多目的スペース〜ベランダ〜>
longhouse ロングハウスの前のスペースはベランダです。多様なことに使われています。

(左下)洗濯物を干す場所。

(右上)収穫したコショウを乾燥させる場所

(右下)闘鶏用のニワトリを飼う場所

ベランダの部分は、割った竹などを荒くならべて敷きつめています。注意して歩かないとすき間に足を突っ込んで、すねなどををすりむくことがあるので注意。
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<コミュニティスペース〜ろうか〜>
longhouse  一歩ロングハウスに足を踏み入れると、そこはロングハウスを貫く“ろうか”です。このろうかは住民の共有の場です。くつろぎの場であり、子どもが遊ぶところ、井戸端会議の場でもあります。また来客の応接間にもなり、お祭りの会場にもなります。会議場にもなり裁判所にもなります。米の収穫期には脱穀の作業場にもなり、敷物やかごを編む作業場にもなります。夜になると車座になり酒盛りが始まります。
 何よりも、暑い盛りの昼下がりに、この廊下を吹きぬける風を感じながら昼寝をするのが、何ともいえず気持ちいいものです。


<“モダン”なロングハウス>
 最近、写真のようなロングハウスが増えています。現地の人たちには“モダン”なロングハウスと呼んでいます。木造ではなくセメントレンガで造られていること、高床式でなく2階建てであること、そして川沿いよりも道路に面して建てられていることなどが、伝統的なロングハウスに比べて異なる点です。増えている理由ですが、現地の人にとっては“モダン”なほうがかっこいいし、居住空間が増える、火事になりにくいなどの理由があるようです。しかし、実は、木材よりもレンガ・セメントのほうが安いというのが本当の理由のようです。
 豊かな森に囲まれた環境がありながら、木材のほうが高くなってしまったのはなんとも皮肉なことです。でも、湿気、熱気がこもりやすい、“モダン”なロングハウスより、木造の伝統的なロングハウスのほうが私は好きです。
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