誰かにうたってほしいウタ


前口上

 近頃の子供服は、ただサイズの小さい服といったふうなものが主流になっているようだが、かつてはそうでなかった。子供の頃にそれが不満でならなかった憶えのあるひとは多いのではなかろうか。ことは服に限らない。子供はなにかとお子様ランチ的なものをあてがわれて来たし、今でもそうだ。

 ところで、そんなあてがいぶちのお子様ランチの典型にこと欠かないのが、子供向けのウタの領域だ。それは、この領域の在りようそのものに由来するように思われる。例えば、「何故子供用なのか」と問うことは、服についてはほとんど無意味だが、ウタの場合あながちそうでもない。そこに、この領域の特殊な在りようを垣間見ることが出来るだろう。

 私はここ数年来、子供向けのウタづくりにかかわっていて、そのことを痛感しているのだが、しかし、変化の兆しも無い訳ではない。で、ここはひとつそれに棹差して、この領域を、最近の子供服のそれのようなプラクティカルなものに変えてしまおうではないか、という気になっている。

 流行とも芸術とも一線を画したウタ、カラオケや凝った伴奏がなくてもうたえるウタ、老若男女にかかわりなくくちずさめるようなウタ ・ ・ ・ 、そんなカジュアルなウタがつくれれば、と私は考えている。ここに集めたウタが果たしてうまいことそうなっているものやら、まずはお立ち会い、ひとつうたってごろうじろ。

2001年秋  大熊康彦