論理哲学論考 1-7 6.1-6.5 6.31-6.37
      
6.34 根拠律、自然における連続性の原理、自然における最小消費の原理等々のような命題の総ては、科学の文の可能な造形についてのアプリオリな洞察だ。
6.341 例えば、ニュートン力学は世界記述にひとつの統一的形式を提供する。不規則な黒い斑点のある白い平面を考えよう。そこで、我々はこう言う: どんな図柄がそれによって生じようと、当の平面を適当に細かい正方形の網で覆い、そして、それぞれの正方形について、それが白いのか黒いのかを述べることによって、私はその図柄の記述に望むだけ近づくことができる。私はこの方法によって件の平面の記述にひとつの統一的形式を与えおおすだろう。この形式は任意だ。三角形や六角形の目から成る網を同様の成功裡に用いることもできただろうから。三角網による記述の方が簡単にいったということもあり得る。つまり、我々は、件の平面を、細かい正方網よりも粗い三角網を使った方が正確に記述できた(あるいはその逆)等々ということも。別々の網には別々の世界記述のシステムが対応する。力学は、世界記述の文の総ては幾つかの所定の文――力学の諸公理――から或る所定の方法で得られるのでなければならない、と述べることで世界記述の一形式を規定する。それによって、力学は、科学的建築物の建設に資材を供給し、そしてこう言う: どんな建築物を建てるつもりにせよ、それをお前はもっぱらこれだけの資材でもってどうにかしなければならない。
(数のシステムによってあらゆる任意の数を書下すことができるように、ひとは力学のシステムによって物理学のあらゆる任意の文を書下すことができるはずだ。)
6.342 そして、いま、我々には論理と力学の相対的ポジションが見える。(ひとは件の網を例えば三角形と六角形からというように種々の図形から成るようにすることもできただろう。)先に述べられたような図柄が或る適当な形式の網によって記述され得ることは、当の図柄について何ごとも言明しはしない。(そのことはその種の図柄の何れについても当てはまるのだから。)だが、その図柄が特定の細かさをもつ特定の網によって完全に記述され得ること、これは当の図柄を特徴づける。
同様に、世界がニュートン力学によって記述され得ることは、世界について何ごとも言明しはしないが、しかし、世界がかの力学によってこのことがまさに成り立つとおりに記述され得ることは、世界を特徴づける。また、一方の力学によっての方が他方によってよりも世界は簡潔に記述され得るということも、世界についてなにがしかを述べている。
6.343 力学は我々が世界記述に必要とする総ての真な文をひとつのプランに随って構成する企てだ。 〔6.3431-6.3432


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