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UPDATE 2006.04.23

 【第12話】 Happy Birthday!!

それからといもの、ほぼ毎日のように掛かって来る陽子からの電話を

啓太郎は待つようになっていた。

 

啓太郎は親と同居している陽子の家にはあまり掛けたくはなかったのである。

なので「こっちから何時頃に電話する。」という約束事をした時意外には、

ほとんど掛けた事が無かった。

 

平穏な日々が続いている中、相変わらず陽子は彼氏とは厳密には別れていなかったが、

啓太郎には、確かな変化は感じていた。

彼氏と会った時には必ずといって良いほど、話をしてくれたし、

その回数も殆ど少なくなってきており、単なる“惰性”というか“情”みたいなもので

付き合いを引きずっているように思えたからだ。

 

ただ啓太郎には、もうひとつ他に「何か」が引っかかっていた。

「それ以外の何か」が。

日々陽子と会ったり電話で会話している中で、陽子の心の中にある、

「何か」にある日からずっと引っかかっているのだ。

それが「何か」は、まだその時にはわからなかったのだが、

思い過ごしだろうと、あまり気には留めていなかった。

 

そしていつものように陽子から電話がかかって来た。

 

「もっしもぉ〜し。誰ぁ〜れだ。」

 

「陽子だろぉ」

 

「何でわかったのぉ?」

 

「あたりめぇだろぉ。」

 

と、頭の悪そうな会話が続いた後、

「そう言えばさぁ、来週、陽子の誕生日じゃん。誕生日会やろうよ。」

 

「えっ、やってくれるの!うん、やろうやろう。」

 

当日。

「Happy Birthday!!」

当時の啓太郎にとっては大出費となる、5万円もする腕時計をプレゼントした。

 

「ありがとう。」

と言って、陽子は自分のしていた腕時計を外し、

啓太郎からプレゼントされた腕時計にし直した。

 

そして夜は更けていった。いつものように。

 

「かりそめのSwing」

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