UPDATE 2006.02.26
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「ねぇねぇ、今日は啓ちゃん家でカウチポテトしよぉ〜よ。」
土曜日の昼下がり、待ち合わせ場所に来るなり陽子は切り出した。
カウチポテトとは、「ソファーに座り、ポテトチップスを食べながらゆったりとビデオを観る」 と言う、流行の行為である。
「んっ、おう。いいよ」 実は啓太郎は、この“カウチポテト”という言葉は知っていたのだが、 実際のところ、「何なのか」という意味を知らなかったのだが“啓ちゃん家で”、 という言葉に反応し適当に相槌を打ち、 陽子の「じゃぁ、とりあえずレンタルビデオ屋に行こう!」と言われるがままに、 啓太郎のアパート近くのビデオレンタル屋に行き、陽子が観たいと言う映画を選んだ。
「ローマの休日」「風と共に去りぬ」
「オードリー・ヘップバーンって可愛いよねー、こういう映画観てみたかったんだー」
啓太郎にとって、そのジャンルの映画は、全く興味の無い世界だったのだが 陽子が観たいと言うのなら、そんな事はどうでも良かった。
ポテトチップスやお菓子をコンビニで購入し、アパートへ向かう途中に 啓太郎は、なんとなく気づいた。 「そうか、カウチポテトって時間をゆったり使ってお菓子食いながらビデオ観る事なのか?」
昼下がりにビデオ鑑賞が始まった。
啓太郎は、映画鑑賞自体は好きだったのだが、いつも観る時には、 夜であれば電気を消し、昼間であれば窓にカーテンを引き、薄暗くして観る癖があった。
それを理由に、部屋のカーテンを引き薄暗くして映画を見始めた啓太郎は、 昼間なのに、薄暗いアパートの部屋で、隣に肩を並べている陽子がいる状況の中で 興味の無い映画の内容なんて、どうでも良かった。
啓太郎にとって興味があるのは、隣にいる陽子で、 2本も借りてきたビデオを観るのに、あと4時間近くかかる。
映画に飽きてきた啓太郎は、陽子にチョッカイを出し始めるが、 映画に夢中になっている彼女には相手にされない。
でも今日の啓太郎は、「隣に陽子がいるだけで幸せ」だった。
何故なら、、休日の昼間の一見無駄な時間の使い方に思える、この休日の過ごし方。 でも、そんなだらだらとした時間を共有したいと言って来た、 彼女と過ごす時。
逆に充実感が、啓太郎にとっては、心地よかった。
啓太郎は思った。 「間違いなく、彼氏より俺と過ごす時間のほうが多くなってきている」
でも実は、彼女が恋多き女だと言う事は、まだ知る術も無く・・・。 |
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