black.gif

UPDATE 2005.09.03

 【第 1話】 1989年“夏” プロローグ

 「まだ向こうは来てネェんじゃねぇの」

 

  淡路町交差点近くのビルの地下にある、ちょっと小奇麗な居酒屋に、

 待ち合わせの時間より若干早めに到着した同期入社の男4人のうち、

 細田(25歳)が店内を見回して言った。

 

 そう、今夜は細田が営業担当している取引先企業に勤める女性とのコンパの日だ。

 

  加瀬(27歳)と大澤(26歳)も「とりあえず座ってようぜ」と言う。

 皆、予約席へと腰を落とし相手の女性陣が来るのを暫く待ちながら、

 「細田ぁ、ハズしてねぇ〜だろぉなぁ〜」と加瀬が言えば、

 「いや、一人は良いと思うんだけど、他はわからないよぉ。」と細田。

 「まぁ、とりあえず盛り上がって行こうぜ。」と赤城。

 

 赤城啓太郎(26歳)この物語の主人公である。

 

  啓太郎を初めとするこの4人は、2年前に大卒で「明帝商事」に、

 加瀬は二浪で、大澤は一浪で、細田は現役で、そして啓太郎は現役一流年を経て、

 同期で入社したのだが、啓太郎だけは訳合って、入社1年少々でこの会社を退社し、

 今は広告代理店に転職している。

 

  だが、そんな気の合う4人が、この日開催した「4×4」のコンパで、啓太郎は一人の女性と

 出会う事となる。

 

「かりそめのSwing」

次へ

マーヴェラスな憂鬱TOP