上方浪曲ニュース最新号
2003.12
三原佐知子が高津高校で口演
PTA研修会で「異国の母」

 三原佐知子は、十一月二十一日、大阪府立高津高校(木村智彦校長)のPTA研修会に招かれ、「異国の母」を口演した。同校の木村校長は、府立高校ではじめての民間出身校長で、次世代を担う人材育成のエル・ハイスクール推進など学校改革に取り組む中、「人権問題の理解にインパクトのある事業を」と、国境を越えた親子愛を歌い上げる三原の浪曲「異国の母」を取り上げることを思いつき、生徒に聞かせる前にまず父兄に聞いてもらおうと、PTAの研修会での口演を提案し、実現したもの。
 高校の視聴覚教室に金屏風を置いた特設の舞台で、浪曲を聴いたこともない高校生の母親約五十名を前に、三原は、在日朝鮮人のおばさんが、日本人の孤児を、様々な差別意識と闘いながら育てる「異国の母」を口演。涙をぬぐう母親の姿も見られた。同高校の校区内には、在日朝鮮韓国人が多い地域があり、この問題は現実味があるテーマ、母親からは「ぜひ子供たちにも聞かせたい」という声が出た。
 浪曲の後は、三原自身の「我が人生」を語る講演、浪曲と育児の両立に苦しみながらも今日を築いた生き様を赤裸々に語った。
 木村校長は「明日を生きる生徒たちにとって、人間尊重の精神と伝統芸能を通じて日本の良さを理解することが大切だ。今回の研修会を踏まえて、ぜひ生徒たちにも浪曲を通して日本文化の深遠にふれさせカルチャーショックを味わわせたい」と語っていた。

NHKホール、文楽劇場公演
語り納め浪曲大会共に大入り


 大阪では十一月三十日のNHKホール「公開録画」、十二月六日国立文楽劇場「師走浪曲名人会」と相次いで大劇場での浪曲公演が開かれ、いずれもほぼ満席の大入りで、今年の浪曲公演の掉尾を飾った。
 NHKの公開録画は、はがきによる申し込みの無料公演だが、抽選洩れの人も多く、千四百人収容のNHKホール二階席まで観客で埋まった。出演は、一風亭初月があでやかな着物姿で出弾きで語る幸いってんと、NHKテレビ初出演の真山誠太郎の堂々たるデビュー口演がテレビ撮り、京山宗若、三原佐知子、京山福太郎、真山一郎がラジオ録音の盛りだくさんな番組に満場の観客は堪能していた。
 国立文楽劇場師走名人会は、年に一度のいわば浪曲の顔見せ公演、出演者演目もよりすぐりの豪華番組とあって聞き応えも十分。今年は、名古屋の天中軒月子の「武蔵と小次郎」で幕を開け、来年の幸枝若襲名を控えた京山福太郎が「甚五郎千人坊主」、春野百合子が「高田の馬場」と十八番を披露、中入後は松浦四郎若が芦川淳平・作「晴れ姿奈良丸ぶし」、三原佐知子が檜垣十九三・脚本の「三味線やくざ」、トリの真山一郎が真木肇・作「片割れ月」と文芸作品三本を並べたプログラム。名作、新作の競演に演者の気合いもひときわ入った熱演だった。

吹田浪曲愛好会が発表会

 京山福太郎が師範を務める吹田浪曲愛好会(池田泰則会長)の発表会が、十一月二十三日吹田メイシアターで開催された。同会は池田氏以下十名に会員が、月二回福太郎の指導で稽古に励み、二年に一回発表会を開いている。今回は、入会三ヶ月の浅野寿子さんから十年以上のキャリアのベテランまで九人が思い思いの演目を口演、日頃の練習の成果を披露した。

天龍三郎と近鉄選手が慰問公演

 大阪近鉄バファローズ後援会の副会長でもある天龍三郎は、十一月二十九日、藤井寺市の老人憩いの家松生苑を訪問、慰問浪曲公演を行った。藤井寺市は藤井寺球場の地元とあって熱心な近鉄ファンも多く、慰問には近鉄の若手選手三名も参加、司会の芦川淳平が選手にインタビューした。館内大広間一杯のお年寄り達は、孫か曾孫ほどの選手に大きな声援を送っていた。この後、手品に続いて、天龍三郎が中川加奈女の三味線で「越の海勇蔵」を口演した。

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