上方浪曲ニュース最新号
2003.9~11
猛暑吹き飛ばす盆踊りの輪
築港高野山で浪曲まつり

 8月30日築港高野山寺で、物故者供養の浪曲まつりが開かれた。残暑にはいって一気に暑さがぶり返した関西は、この日も夜になっても30度を越す熱帯夜。午後五時、住職の読経でこの一年に亡くなった関係者を浪曲塔に合祀した。今年の合祀者は、飯田清さん(冨士月の栄師夫君)、真山鈴若さん、酒井正子さんの三名。
 この後本堂を舞台に故人ゆかりの三原佐知子、筑波武蔵が浪曲を奉納し、その後会員総出演で音頭を取り、仏供養の盆踊り大会が夜十時まで繰り広げられた。

余興月でも一心寺・文楽で寄席

 九月は敬老会が各地で開かれることから、浪曲人は目が回る忙しさ、というのは昔の話。最近は不況のあおりも受け、かつて程多忙でもない。それでも一年のうちでは稼ぎ時が、今月も一心寺寄席と国立文楽劇場の演芸特選寄席が相次いで開催された。
 一心寺は、春野百合子、京山小円嬢、京山宗若、幸いってんが1日から三日間出演。文楽劇場は七日から十一日迄の五日間、京山幸枝栄と長谷川公子が勤めた。

 天龍・藤信 大正一ケタコンビ
 芸術祭参加の一心寺寄席で熱演


 関西浪界最長老の天龍三郎と藤信初子の大正一ケタ生まれコンビが、10月の一心寺寄席に出演、若手も真っ青の熱演でファンをアッと言わせた。
 一心寺寄席の10月公演は、今年度の芸術祭参加公演。浪曲にとって寄席が如何に重要な鍛練の場であるかをテーマに、寄席で培った芸が88歳の今日に至るまで現役の舞台を支えている天龍三郎、寄席の立て弾きで曲師の修行をした藤信初子、戦後の浪曲界で寄席が無くなり音楽ショーを組んで演芸の世界に新天地を求め再び浪曲に復帰して活躍する京山幸枝栄、入門時には既に寄席はなく典型的な浪曲大会世代の京山倖若、そして10年間続いたこの一心寺寄席で初舞台を踏んだ新寄席世代の春野美恵子・春野冨美代の各世代四組が出演した。
 三郎は、久々の一心寺寄席出演だが、「若い人に寄席の面白さ、寄席芸の雰囲気の一端を伝えたかった」と出演した。八十八翁久々の出演に、常連客は大喜び、はじめてのお客も多く、三日とも七十人を越える大入りとなった。これにこたえて天龍は、三日間伊達騒動の続き読み、二日目は大会などでは聴くことのない「荒木和助の忍び込み」を披露、他の出演者も負けじと熱演し、終演時間を一時間も読み込み劇場から大目玉を食らうハプニングもあった。

 NHK東西浪曲大会
 関東から玉川福太郎

 NHKの公開録画を兼ねたチャリティー公演東西浪曲大会は、九月二十七日NHK大阪ホールで開催され、一階席をほぼ満員いする大入りとなった。
 出演は真山一郎、春野百合子、三原佐知子、京山小円嬢、京山福太郎の関西勢に、東京から玉川福太郎が参加。このうち百合子・玉川福太郎の口演は十月十八日に放映され、残りは来年の放送となる。
 なお、NHK大阪ホールでは十一月三十日にも浪曲のラジオとテレビの収録があり、これは往復はがきによる整理券で無料入場できる。

 宗若が音頭グループ旗揚げ
 関西創声会発足ライブ開催


 京山宗若は、河内音頭の革新を図ろうと、志しを同じくする音頭取り志賀国天寿、結城家利若、浅照らと関西創声会を発足、10月19日松原商工会議所ホールで発会式を行い、会長に就任した。式典の後、参加メンバーによるライブを開催し、それぞれ個性的な音頭を披露した。
 宗若は、河内音頭の出身。浪曲会に入った後も、常盤会という河内音頭グループを主宰して、後進の育成を図っている。

百合子・美律子師弟で掛合い
NHK歌謡番組で「壷坂情話」


 春野百合子と中村美律子がNHKの歌謡番組に出演し、掛合い浪曲を披露した。これは去る11月1日生放送の「わが心の大阪メロディ」という番組。NHK大阪ホールからの公開生放送。中村のヒット曲「壷坂情話」を浪曲にしたもので、舞台上に浪曲のテーブルを二組並べ、中村が唄の部分とお里のセリフ・セメのフシを歌謡浪曲で、百合子は澤市の役どころで、マクラと身投げの心情を歌った節を大林静子の三味線で語った。全部で約六分間ながら、マクラは綾太郎のフシそのままの関東節、後半は百合子のフシとあって、三味線も二丁掛け替えての口演。歌謡浪曲とのコラボレーションも見事に決まり、全国の歌謡ファンの浪曲の魅力を余すところなく伝えた。

天中軒月子35周年パーティ
期待とねぎらいに300人参加

 天中軒月子が芸能生活三十五周年記念パーティーを、十一月二日名古屋キャッスルプラザホテルで開催、後援会の会員やファンら約三百人が参加し大盛況だった。
 月子が東西両協会に加盟していることもあって浪曲関係者も、東京から東家浦太郎会長以下、春日井梅光、玉川福太郎、兄弟子の天中軒鵬、大阪からは、真山一郎会長、京山小円嬢、筑波武蔵、泉和子、三原佐知子、京山福太郎、松浦四郎若、京山倖若、真山広若、中田萬夫がこぞってお祝いに駆けつけた。
 パーティは、午後五時半から芦川淳平の司会で開会、月子と発起人が出席者の拍手に迎えられて入場し、発起人を代表して東家浦太郎が挨拶、名古屋市長の代理として市会副議長、参議院議員の祝辞に続いて、真山一郎の発声で乾杯し祝宴に入った。修行仲間の玉川福太郎、松浦四郎若が修行当時の月子の思い出を語り、長年の苦労をねぎらい、地元名古屋の早川興行社の稲垣社長やキングレコードの国貞ディレクターら月子の芸能活動を支える各界の人々が祝辞を述べた。余興では、後援会関係者による手作り神輿の披露や地元の郷土芸能や民謡とともに真山広若が河内音頭を披露、天中軒鵬も「月子しか雲月の跡を継げるものはいない」と妹弟子を励まして歌謡曲を歌い、にぎやかに宴を盛り上げた。
 最後に月子が唄を歌って参加者に謝辞を述べ、三人の娘が母へのメッセージを読み上げて、お開きとなったが、月子の日常活動を支える地元後援会の皆さんが力を合わせた手作りのパーティは、心温まるものだった。
 なお月子は、三十五周年を記念してキングレコードから「徳川家康」「小村寿太郎」の二席を吹き込んだカセットテープを発売している。

11月の一心寺寄席は芸術祭協賛
文楽劇場特選寄席も5日間開催


 11月の一心寺寄席は10日から三日間、芸術祭協賛公演として開催、真山一郎、三原佐知子、筑波武蔵、春野ココが出演し、熱演した。協会の曲師育成の方針にしたがって、今月は、ココを木ノ本孝子と一風亭初月が、筑波武蔵を岡室正俊が弾き、実戦での腕を上げた。
 また、国立文楽劇場小ホールで隔月に開かれている演芸特選寄席にも今月は京山小円嬢と幸いってんが2日から五日間出演した。

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