上方浪曲ニュース最新号
2002.12
春野百合子と文楽人形
「梅川忠兵衛」を競演

 十一月三十日堺市西文化会館ウエスティホールで「浪曲&文楽人形」公演が開催され、春野百合子の浪曲に吉田文吾らが操る人形が競演した。
 この催しは堺市文化振興事業団が主催したもので、藤原久治さんのプロデュース企画。
 浪曲演台を正面中央に据え、下手に人形の舞台をしつらえ、まず前半封印切の場面は、百合子の浪曲独演をじっくり聞かせた後、後半の道行きと新ノ口村の場面で梅川・忠兵衛・孫右衛門らの人形が文楽そのままに登場、浪曲に合わせてしっとりと上演された。
 文楽人形と浪曲の競演は、二十余年前テレビで実現したことはあるが、一般の舞台公演ではこれがはじめて。孫右衛門を遣った吉田文吾もお互いに新しいファン層開拓につながると多いに張り切って、事前に百合子と入念なリハーサルを繰り返していた。
 上演の前には、文吾による人形の解説もあり、観客も舞台にあがり、実際に人形を手に取って、文楽人形を実感していた。
 公演の第一部では、真山広若と京山倖若が浪曲を語った。

真山一郎に文化庁長官表彰
浪曲界ではじめての受賞


 社団法人浪曲親友協会会長の真山一郎が、浪曲界ではじめて文化庁長官表彰を受け、十一月二十九日夫妻で上京、河合隼雄文化庁長官より賞状を受けた。この表彰は、芸能美術工芸など幅広い分野から我が国の芸術文化に特に貢献のあった芸術家に贈られるもので、今年は各界から二十四人が受賞した。
 真山は、昭和二十二年の入門以来五十五年間にわたって、浪曲歌謡曲で活躍し、平成十年より協会会長を務めている。
 真山は「各界から我が国の芸術文化に貢献したという受賞者の中に浪曲人が選ばれたということが大変嬉しい。私自身の名誉とともに浪曲界にとっての喜びとしてありがたくいただきました」と語っていた。

文楽劇場で浪曲大会
家族愛テーマに競演

 国立文楽劇場恒例の師走浪曲名人会は、十二月七日「浪曲家族劇場」と題して、親子兄弟夫婦の愛情をテーマにした演題を並べて開催された。
 演目は真山一郎「大石妻子別れ」、春野百合子「夫婦善哉」、三原佐知子「異国の母」、京山福太郎「会津の小鉄文治殺し」、京山小円嬢「祐天吉松」、松浦四郎若「瞼の母」。さまざまなシチュエーションながら、時代を越えた肉親の情愛と絆を謳った作品が、観客の涙を誘っていた。
 なお文楽劇場では、十一月二十七日から三日間小ホールで三回目の特選演芸寄席も開かれ、浪曲からは松浦四郎若と真山誠太郎が出演した。

NHKホールで公開録画
百合子の長講「高田の馬場」など


 十二月八日、NHK大阪ホールで上方演芸ホール・浪曲十八番などNHKの公開録画が開かれ、抽選で招待された千人の観客を前に今年最後の浪曲大会が開かれた。
 出演は、春野美恵子「右衛門七の妹」、京山宗若「小緑長吉」、春野百合子「高田の馬場」(以上BS2『上方演芸ホール』一月十三/十四/二十日放映)、京山小円嬢「中村仲蔵」、真山一郎「風雲赤城山」(以上ラジオ『浪曲十八番』)。
 百合子は「高田の馬場」を約四十分の長講でたっぷりと語った。
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