上方浪曲ニュース最新号
2002.8
澤孝子の会東京木馬亭で開催
天竜・藤信八十路コンビ絶讃

浪花節澤孝子の会が七月二十八日東京木馬亭で開催された。孝子の師匠広澤菊春の弟である天龍三郎が今年も大阪から元気に参加し、澤一門に混じって老練な味を聞かせて座を引き締めた。
 今年の会は孝子が「矢田五郎右衛門〜妻への手紙」、順子が「素麺を煮る内蔵助」、恵子が「矢頭右衛門七初恋道中」といずれも大西信行書き下ろしの新作義士伝の競演。構成に一ひねりある大西脚本に師弟それぞれが格闘して取り組んだ気迫をうかがわせた。
 その中にあたかも後見役として出演した天龍三郎は「谷風の情け相撲」を口演、相変わらずの小粋な節回しで今年も健在ぶりを示した。ことに今回は、三味線に藤信初子が幸枝若時代以来久々の木馬出演。天竜のとっておきの声を引きだす鮮やかな撥裁きを聞かせた。語る天竜、弾く初子共に八十歳を越えた古強者の競演が東都のファンを魅了、絶讃の拍手が送られていた。
 なおこの会は、今週読売ホールで民音主催で再演との由。

猛暑のなか一心寺八月公演
時宜を得た演目並べて熱演


 連日三十五度を越える猛暑のピークを迎えた八月五、六、七の三日間一心寺八月公演が敢行された。最寄り駅から十分程度歩かなければならない一心寺シアターだけに関係者は観客の健康を気遣っていたが、今回も毎日熱心なファンが来場した。この期待にこたえようと、出演者も連日汗びっしょりでハッスルした。
 今月は三原佐知子、松浦四郎若、長谷川公子、泉和子の面々。三原佐知子は、終戦の八月にちなんで、平和を訴える新談三篇「異国の母」「ああ残留孤児」「千羽鶴物語」を連日熱演。殊に「千羽鶴物語」は、広島原爆の日に合わせての口演で、被爆者の苦悩と平和へのメッセージを切々と訴えていた。片や松浦四郎若は、三日目に「応挙の幽霊」を出した。かつて夏の定番だった怪談ネタも今ではほとんど演ずるものがないだけに、聴衆にひととき外の暑さを忘れてもらおうとのサービスになった。
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