上方浪曲ニュース最新号
2002.5
 浪曲大会は「命あるかぎり」
 名古屋早川興業の心意気


 四月二十五日恒例の豪華浪曲大会が名古屋市民会館で昼夜にわたって開催された。出演は、大阪から真山一郎、春野百合子、三原佐知子、京山福太郎、天光軒満月。東京から東家三楽、国本武春、富士路子。百合子は久々の出演、路子は初のお目見え披露となり、中京のファンの期待にこたえた。
 この大会は、毎年春秋二回行われているが、東西から八人が競演するような興行社手打ちの浪曲大会が定期的に開かれているのは、現在ここだけとなった。もちろん近年の浪曲不況の風はこことも例外ではなく、厳しい運営を強いられているが、早川興業の稲垣社長は、「私どもの先代社長は、戦争で夫を亡くし子供たちを抱えて女手一つでこの仕事を切り回してきました。私の家内を含めて一家の今日あるのは浪曲の興行で儲けさせてもらったおかげなんです。私はこの恩を忘れないためにも、命あるかぎり伝統の浪曲大会を続けてゆく覚悟です」と語っていた。
 夜の部で真山一郎は、稲垣さんが「母の供養のために」とリクエストした「あゝヒロシマ」を熱演して、氏の心意気にこたえた。

 泉和子に大阪府文化功労表彰

 毎年憲法記念日に行われる大阪府知事表彰で、今年文化芸術部門で泉和子が選ばれた。
 泉和子は、長崎県諫早市の生まれ。浪曲好きの父の勧めで、昭和十九年十四歳で日吉川秋齋に入門。天満国光席で日吉川和千代を名乗って初舞台を踏んだ。以後昭和四十八年泉和子と改名し今日に至る。四人兄妹が皆浪曲師という浪曲ファミリーだが、現在活動しているのは和子だけ。古稀を迎えた彼女にとって今回の受賞は芸道五十七年の大きな記念碑となった。

 
若手競演の「錬声会」

 国立文楽劇場小ホールで、五月十一日浪曲錬声会が開催された。今年は春野美恵子、真山誠太郎が一郎、百合子両御大が検分する中これまでの鍛練の成果を昼夜で披露。昼は泉和子、夜は真山広若が補導出演、松浦四郎若が昼夜のトリで締めくくった。
 が美恵子は新作の「右衛門七の妹」とお家ネタ「田宮坊太郎」を三味線も大林静子門下の坂口久雄で熱演、真山誠太郎は師匠譲りの歌謡浪曲「弁慶」「風雲赤城山」を力強く語った。

 一心寺寄席六月から「倶楽」で
 新劇場柿落しは幹部日替総出演


 二年間にわたる一心寺シアター建替中の仮会場としてパート2で公演を続けてきた一心寺門前浪曲寄席は、完成した「一心寺しあたあ倶楽(くら)」に六月公演から移る。
 新劇場倶楽は、旧一心寺シアターがあった場所に建設された三千仏堂の地下にあり、客席数約三百のホール。こけら落し公演は六月十日から十二日まで、協会幹部が日替わりで出演する。
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