上方浪曲ニュース最新号
2001.11
インターネットで浪曲流れる
朝日放送webに幸いってん

 朝日放送ラジオのインターネットホームページ「ABCweb」から浪曲が流れている。このサイトはABCの各番組のダイジェストを十分程度流しているもので、「おはよう浪曲」のページに幸いってんが吹き込んだ。三味線は一風亭初月。司会の桂文我のおしゃべりにつづいて、いってん・初月のフレッシュコンビで、芦川淳平書き下ろしの番組オリジナルテーマを語っている。インターネットという若者の利用が多いメディアを使って、浪曲に普段なじみのない若者に興味を持ってもらい、番組を聞いてもらおうと、企画されたもの。試験的に始められたが、十月末の開設以来一カ月で数百人と他の番組をしのぐ予想を上回るアクセスがあり、朝日放送では内容を毎月更新してゆくことを決めた。十二月からは司会の桂文我が初月の三味線で吹き込む予定。

朝日放送のホームページ http://abc1008.com/webio.html

芸術祭協賛の一心寺寄席
百合子会心の「夫婦善哉」

 大阪で唯一の定期寄席一心寺門前浪曲寄席は、毎月協会員が交代で出演、ファンの間にはすっかり定着してきたが、八十九回目を迎えた十一月公演は、十二日から三日間、平成十三年度文化庁芸術祭協賛公演として春野百合子、松浦四郎若(十二・十四日)、京山小円嬢(十三日)、京山宗若、真山誠太郎の出演で開催された。座長の百合子は、「落城の淀君」「夫婦善哉」「藤十郎の恋」と三日間色合いの違う読み物でお目通り。中でも久々に舞台にかけるという「夫婦善哉」は、観客と目の前で向かい合って語る寄席の雰囲気にぴったりだったのか、客席からは終始笑いが絶えず大受け。百合子も気をよくしての熱演で会心のできばえだった。
 常連客がほとんどのこの寄席でファンの期待は、今度はどんなものを聞かせてくれるのかに尽きる。浪曲人は道場と心得て新しい読み物にチャレンジすることが求められている。本来若手が新しいネタを披露する場にしなければならないのだが、ネタ帳を見ると同じネタの読み返しが目立つ。むしろベテランの方がいろいろなネタを聞かせて期待にこたえている。たとえば真山一郎は、少なくとも二、三年間違うネタばかり演じ続け会長の責任を果たしている。あまり気づかれていないことだが、若手は見習わなければなるまい。

松風軒栄楽師逝く

 関西浪界最長老の一人二代目松風軒栄楽師が十一月六日肺炎のため亡くなった。八十五歳。
 長崎県五島列島の出身。昭和五年十三歳で初代栄楽に入門、栄坊を名乗り「天才少年」で売り出す。昭和十一年栄鳳と改め修業のため大阪にでてきた。昭和三十三年コマ劇場で二代目栄楽を襲名した。故広澤瓢右衛門に私淑し、「乃木伝」や「竹田宮」などをつけてもらい、新談読みとしてその地位を築いた。舞台での大真面目な口演ぶりに似合わず飄々とした人柄が皆に愛された。平成十年六月二十四日ワッハ上方演芸ホールで開かれた天竜三郎芸道七十周年浪曲大会に友情出演し、「竹田宮」を五十分にわたって熱演したのが最後の大舞台だった。(写真は瓢右衛門師の米寿を祝う会に駆けつけた栄楽・昭和五十九年五月二日)

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