上方浪曲ニュース最新号
2000.7
 大和屋能舞台で百合子ぶし
 女将激賞の「藤十郎の恋」

 大阪南地の高級料亭大和屋で六月二十三日、「浪曲を聞く会」が開かれ、店内の能舞台で春野百合子が「藤十郎の恋」を語った。これは、有名な料亭大和屋を日頃縁のない庶民にも身近に感じてもらおうと、手ごろな料金で食事と芸能鑑賞のセットを提供している企画。作詞家のもず唱平さんの提案で、今回春野百合子の浪曲を聞く会が実現したもの。手ごろといっても、会費一万五千円はちょっとリッチなランチだが。
 観客はほとんど日頃浪曲になじみの薄い人たちだが、百合子の格調ある芸は、能舞台にピタリとマッチし、聴衆もたちまち引き込まれていた。こういうお膳立てになると一層力を発揮する百合子の出来も上々。
 終演後、大和屋の女将は「浪曲がお客さんに馴染むかどうか心配もしたけど、春野さんの素晴らしい芸には久々にわたしも感動しました。近ごろの歌舞伎の役者達の中には発声ができていない人も多く、そんな人にいっぺん聞かせてやりたいと思いました。今度はプロに聞かせる春野百合子の会をしましょう」と激賞していた。
 玉川福太郎 京都で独演会
 池坊女子大で芸術祭賞の芸

 玉川福太郎は、六月十八日京都・池坊学園こころホールで開かれた「特選芸能ライブ講座〜芸術祭賞がやってきた」シリーズに出演し、「浪花節じいさん」「お蝶の焼香場」の二席を熱演した。
 この催しは、雑誌「上方芸能」が企画したシリーズで、毎月一回各ジャンルの芸術祭賞受賞者を招いて開催している。第三回目に当たるこの日は、「酔わせる節芸の醍醐味」と題して浪曲の特集。平成二年に芸術祭賞を受賞した福太郎の独演会を開いたもの。
 聴衆は全シリーズを通しで鑑賞する人がほとんどで、浪曲の常連ファンはほとんどおらず、客席の雰囲気も浪曲公演とはかなり異なっていた。福太郎は、口上で虎造や三門博などの節真似を交えながら、観客の固さを上手くほぐしたのが奏効し、本編「浪花節じいさん」を軽く演じて、すっかりリラックスした客席から拍手や笑いもよく取り、大受けしていた。中入りで上方芸能の木津川計代表と対談して、自らの歩みや浪曲のあれこれを語ったあと、後席の「次郎長伝」。浪曲らしさを丹念に語り、よく通る名調子で観客を魅了、古都に新しい浪曲ファンを作るのに成功していたようだ。
 なお、福太郎とみね子夫人は、この日京都東山の静かな旅館に宿を取り、夜の鴨川、先斗町界隈を散策し、翌朝は苔寺などの京都見物を楽しみ、ひさびさに夫婦水入らずの古都の休日を満喫した模様。


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