上方浪曲ニュース最新号
2000.5
朝日放送ラジオ「おはよう浪曲」
放送30周年記念して公開録音

「朝五時半からのなにわぶし」として、昭和四十五年に放送を開始した朝日放送ラジオの「おはよう浪曲」は、今年放送開始三十周年を迎えた。これを記念して、四月二十五日、ワッハ上方演芸ホールにリスナー三百人を招待して公開録音が行われた。
 出演は、春野百合子、広澤駒蔵、筑波武蔵、松浦四郎若の関西の実力者に加え、東京から二代目東家浦太郎、澤孝子を迎えての豪華メンバー。それぞれ三十周年にふさわしい十八番や意欲作を熱演した。トリの春野百合子は電飾や煙の効果を入れて「袈裟と盛遠」を口演、普段はラジオで音声だけで聞くファンに見た目の楽しみもサービスしていた。また入場者には、抽選で三十周年記念のラガールカード(電車の切符)やワッハ上方の入場券をプレゼントした。
 「おはよう浪曲」は、大阪万博の年、三十年代後半から四十年代前半にかけて沈滞していた浪曲に再びスポットを当てようと、当時のラジオディレクター狛林利男氏の英断でスタート。これまでの常識を破る早朝の演芸番組ということで、早起きの老人や療養中の入院患者らに固定的なファンがつき、異例のヒットとなった。その後、毎日放送、ラジオ大阪も相前後する時間帯に浪曲番組をはじめ、早朝の大阪は浪花節一色となる先鞭をつけた。五年後朝日放送ではテレビでも「おはよう浪曲」をスタートさせ、こちらも二十五年の長寿番組となっている。
 当初は、厨房機器メーカーのタカラスタンダードの社長が浪曲ファンと言うこともあって長くスポンサーとなって、月曜から土曜日までの帯番組で放送。植田博章アナにより聴取者から寄せられた葉書を読みながら語りかけるDJも人気を呼んで、高齢者の人生の友ともいうべき身近な番組となって定着していった。その後、局編成の事情でスポンサーなしの土日だけの放送になったが、松浦四郎若、広澤駒蔵が司会を続け、今もひそかな人気番組として、朝から浪花節に涙する隠れファンが多い。担当の松田隆作ディレクターは、番組開始から一貫してこの番組を続け、定年後も引き続いて担当している浪曲一筋に朝日放送を過ごした人。ラジオの気軽さもあって、大阪・東京を問わず若手や新人を積極的の出演させる機会を与えている功績は大きい。

春野百合子叙勲パーティー
中村美律子の店で和やかに

 昨秋勲四等宝冠章を受章した春野百合子を祝う「仲間の会」が、四月二十九日大阪心斎橋のシアターレストラン人生乾杯で開かれた。
 会場一杯の六十名を招待してのパーティーはこぢんまりした中にも和やかな和気あいあいたる雰囲気に終始した。
 百合子は時節柄もあり当初パーティーは辞退したいと言っていたが、門人の中村美律子が二月にこの店を開店し、是非うちでやって下さいと強く持ちかけたところから、それではあまり大層にならないよう非公式な仲間だけで呑む会にしようと開催することになったもの。
 親友協会の浪曲人のほか、百合子が日頃懇意にしている「飲み友達」を中心にした文字どおり仲間の会だけに気取らぬムードで会は進んだ。開会の辞で真山一郎会長は「協会から四人目の受章ですが、親子二代での受章は浪界でははじめて。みんな我が子とのように喜んでいます。これからは舞台だけでなく、後輩の指導にも力を入れていただいて、第二の百合子を生まれさせて欲しい」と挨拶。上方芸能代表木津川計氏、落語の桂文枝師らが祝辞を述べ、飛鳥珠王さんの祝儀舞、内海栄華さんの女道楽の余興に加え、参加者が次々にお祝いのスピーチをした。
 また、昨年芸団協功労賞を受章した四十年以上のコンビ、合三味の大林静子が、花束を贈り、現在の百合子門下のココ、冨美代、美恵子の春野三姉妹が記念品を、姉弟子にあたる中村美律子がお祝いに歌を歌って祝福。会場からのリクエストで百合子と美律子がかつて出した掛合いの歌「渡り鳥姉妹」をふたりで唄って会場を盛り上げた。
 京山幸枝栄に大阪府知事表彰

 恒例春の知事表彰で、芸術功労者として今年は京山幸枝栄が選ばれ、五月八日知事公舎で太田房江知事から表彰状が贈られた。
 幸枝栄は昭和十八年京山幸枝司に入門、明美と名乗って昭和十九年一月初舞台を踏んだ。戦争でしばらく故郷の徳島へ帰っていたが戦後復帰、昭和三十六年から音楽ショウに転向、岡本貞子らと共にソフトショウを結成して演芸の舞台に立っていた。昭和四十一年二代目幸枝栄を襲名するが、その後もショウを続け、五十三年浪曲に本格復帰した。先年交通事故に遭いリハビリを続けているが、その苦難を乗り越えて元気に舞台をつとめている。親友協会理事をつとめる一方、門人である京山宗若、幸枝丸、幸栄を指導するなど、京山一門の中では一番の姉貴株としてでんと控えている。


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