Getout / Jailfree 釈放カード  (アイテム)
 ROW地下4階は恐ろしいマップです。動く壁に閉じ込められたり、一方通行で出口のない場所に踏みこんだりと、一度入ったら出られない鰻筒のような罠がたくさん待ち構えています。そんな時に使うのがこのカード。さっきまでいたマスへ一歩戻ることができます。

 このアイテムの元ネタは、『モノポリー(Monopoly)』(1936)というボードゲームにあります。このゲームで刑務所に投獄されたプレイヤーは、通常ならば、ダイスを振ってゾロ目を出すまで待つか、$50払うかしなければ釈放されません。しかし「刑務所から釈放GET OUT OF JAIL FREE」と書かれたカードを使えば、すぐさま無料で釈放されます。
 細かい話をすれば、「刑務所から釈放」カードは「チャンスChance」カードと「共同基金Community Chest」カードの2種類が存在します。ところが、Wizの方は不確定名が「黄色いカードa yellow card」とあります。版によって違うかもしれませんが、筆者の手元にあるモノポリーでは共同基金カードが黄色でした。つまり正確には、共同基金の方の「刑務所から釈放」カードが元ネタということになります。

 さて、アイテム名のGetout / Jailfreeです。文字数が多すぎるからこのような語の並びにしたのでしょうが、jailfreeと言われると、このアイテムを持っていれば刑務所に入らずに済むかのように感じてしまいます。「刑務所知らず」とでも訳しておきましょうか。しかしモノポリーでもWizでも、このアイテムは入ってしまってから使うもので、一度使ったらなくなってしまいます。あくまでGetout / Jailfreeは略式の表記と考えて、発音する時は「 / 」を「of」と読みましょう。
 それと、PS版ではこのアイテムの訳語が「脱獄カード」になっていました。が、筆者は日本語版モノポリーの表記に従って、見出しも「釈放カード」としておきました。get out of jail freeとは「無料で刑務所から出る」の意味で、合法か非合法かは不明です。しかし、元ネタのカードを見ると、扉の開いた鳥籠から羽の生えたおじさん(ミスターモノポリーMr.Monopolyと呼ばれているようです)が飛び出てくる絵が描いてあります。この絵の印象や世界観からしても、日本語版モノポリーの「刑務所から釈放」の訳は正しい、つまり合法だと思います。
 PS版のグラフィックでは、鉄柵をすり抜ける魔法使いの絵が描かれています。「脱獄」の訳に従ったのでしょう。Wizのゲーム内の効果から考えると、「釈放」より「脱獄」の方が近いので、これはこれでいいと思います。ただこの絵、カードが黄色くないのは納得できません。さらに目を凝らして見ると、「Chance」「GET OUT OF JAIL FREE」と書かれているようです。ですが、モノポリーのチャンスカードは赤色です。

 さらにどうでもいい話をすれば、元ネタのカードには「このカードは必要になるまで持っていてもよいし、売ってもよいTHIS CARD MAY BE KEPT UNTIL NEEDED OR SOLD」と書かれています。しかしROWでは、アイテムを売ることはできません。それにこのアイテムは、設定上の売値も0GPです。
update: 20001030


 
Gloves of Myrdall ミルダールの篭手  (アイテム)
 HOMに登場する篭手(小手)です。ACが4も下がるほか、SP解放で力、素早さ、運と3つものパラメータが上昇する豪勢なアイテム。glovesとありますが、戦士系しか装備できないので手袋ではなく篭手でしょう。
 とりあえず「ミルダール」としましたが、本当は「ミュルダール」だと思います。Myrdallという言葉に意味はないのですが、最後の「 l 」の字が一つ少ない Myrdalには幾つか意味があるのです。そして日本語では Myrdalは普通「ミュルダール」と書きます。英語読みそのまんまだと「ミアドール」が近いでしょうか。

 まずはMyrdalの原義から。ノルウェー、スウェーデン、デンマーク各語で、myrは沼沢地、湿地のこと。dalは谷、峡谷のこと。合わせて「沼谷」ぐらいの意味でしょう。そこから予想される通り、Myrdalという地名は実在します。
 ノルウェーのミュルダールは「ミュルダル」とも書き、鉄道の駅があることで有名な場所です。ノルウェーを訪れる観光客は、この駅で山岳鉄道に乗り換え、フィヨルドを下りていくのだそうです。筆者本人は行ったことがないのであくまで伝聞ですが、ミュルダール駅付近は何もなく、ちょっと歩くと風光明媚な滝がある、という程度の山野のど真ん中にある乗換え専用の駅だそうです。

 Myrdalには人名もあり、上に挙げた地名よりもこちらの方が有名です。いずれもスウェーデン人で、というか家族なのですが、当地では非常に有名。おそらく「偉人」扱いでしょう。
 アルバ・ミュルダールAlva Reimar Myrdal(1902-86)。少なくともWizの産まれた北米の人々の間では、ここに挙げる3人の内ではアルバが一番有名だと思います。社会学者で福祉、住宅、教育など様々な著作があります。戦後は外交官として活躍し、議員、閣僚経験もあり。第二次大戦後の軍縮に大きな貢献があったということで、1982年、ノーベル平和賞を受賞しました。
 グナー・ミュルダールKarl Gunnar Myrdal(1898-1987)。アルバの夫です。経済学者ですが、北欧学派の特徴として社会学など守備範囲が広く、妻と同様、議員や閣僚をやって政策提言をしています。1974年にノーベル経済学賞を受賞しました。
 イアン・ミュルダールJan Myrdal(1927- )。アルバ、グナーの息子です。評論家、作家で、現代のスウェーデンを代表する文化人だそうです。彼の著作は日本ではあまり紹介されていないので、詳しいことはわかりません。が、両親のことは嫌いなようです。
 夫婦でノーベル賞をとった例は珍しく、ミュルダール家はキュリー家に次ぐノーベル賞一族といえるでしょう。日本では、与謝野家とかが多少雰囲気が近いんでしょうか。全然外れてるかもしれません。

 あるいはMyrdallには別の言語で別の意味があるのかもしれませんが、あったとしても有名な言葉ではないので、北米のユーザーにその意味が知られているとは思えません。Myrdallという言葉は、Myrdalを間違えたか、もじったかどちらかとしか考えられないのです。
 以上より日本語訳は「ミュルダールの篭手」が正確かとは思いますが、原語と同様にもじって「ミルダール」「ミュルドール」などでもOKでしょう。先に挙げた北欧各言語での[ y ]の発音は、口を「ウ」の形にして「イ−」の声を出すので「ユィー」のようになる、とものの本には書いてあります。それを考慮すれば「ミルダール」。原語が後半をもじっていることを考慮すれば「ミュルドール」が適切といえるでしょう。あとは趣味の問題です。
 しかし困ったことに、地名にしろ人名にしろ、ミュルダールと篭手がどう関係があるのか分かりません。HOM全体が北欧テイストなので、それっぽい名前を入れた、というのが現実ではないかと思いますが。何か納得できるこじつけがあるでしょうか。奇怪でいろいろと考えさせられるネーミングではあります。
update: 20000804


 
HHG of Aunty Ock オックおばさんの聖なる手榴弾  (アイテム)
 ROWのイベントアイテム。
 HHGがholy hand grenadeであることはシナリオ本文からわかります。これは『モンティ・パイソン・アンド・ホーリーグレイル(Monty Python and the Holy Grail)』(1975)に登場する有名なアイテム「アンティオキアの聖手榴弾holy hand grenade of Antioch」に由来します。オックおばさんAunty OckはアンティオキアAntiochをもじったもので、特にそういうキャラがいるわけではありません。劇中では殺人ウサギを倒すための武器として使用されています。
update: 20050716


 
Houdini ( - ) フーディーニ  (モンスター)
 HOMに登場するモンスター。盗賊系ですが魔法も使います。
 アメリカの奇術師、エスケープアーティストのハリー・フーディーニHarry Houdini(1874-1926)のことです。この人、本名はエーリッヒ・ワイズEhrich Weissといい、ハンガリー出身のユダヤ人でした。Houdiniという芸名は、フランスの奇術師ロベール・ウーダンRobert Houdin(1805-71)から採ったとされています。
 さてここからは余談になりますが、「ウーダンHoudin」を英語読みすると「フーディン」。『ポケットモンスター(Pokemon)』(1995)シリーズに登場する「フーディンAlakazam」の名前は「フーディーニ」をもじったつもりでしょうが、逆に元ネタに戻ってしまっています。「ケーシィAbra」の元ネタ、エドガー・ケイシーEdgar Cayce(1877-1945)ともども既に故人だから良いのですが、「ユンゲラーKadabra」とかやると訴えられてしまいます。
update: 20001120