Vorpal Bunny ( Vorpal Bunnies ) ボーパルバニー  (モンスター)
 PGKODなどに登場するモンスター。首を切ってくる敵として印象深く、人気もあります。
 殺人ウサギというイメージの起源は、映画『モンティ・パイソン・アンド・ホーリーグレイル(Monty Python and the Holy Grail)』(1975)にあるようです。作品中、空飛ぶウサギがアーサー王一行に襲いかかり、次々と騎士たちを殺していくシーンがあります。ウサギは見るからにぬいぐるみだし、ピアノ線で引いているかのようにまっすぐに飛ぶのですが、かわいらしいウサギが人を殺戮する姿が衝撃的だったのでしょう。このウサギは各所で引用されています。興味を持たれた方は、ビデオ屋で探してご覧ください。「クリティカルヒットとは、このような攻撃のことを言うのか!」と開眼すること請け合いです。
 日本では言及することすらタブー視されている感のあるモンティ・パイソンですが、英米文化の根幹部分をなす作品であることは間違いありません。特に『…ホーリーグレイル』は向こうのTRPGファンにはよく観られているようなので、勉強しておいて損はないでしょう。Wizにも影響はないはずはありません。好きな人はパイソンネタを探してみて下さい。ただしあまり探しすぎると、今度はパイソン還元主義者との謗りを受けかねないので気をつけましょう。
 『…ホーリーグレイル』の中では、Vorpal Bunnyという言葉は出てきません。これを使ったのはおそらくWizが最初だと思います。D&Dではしばしばこのvorpalという単語が使われていますが、Wiz以前にウサギに使った例はないのではないでしょうか。これは私には確認できませんでした。
 この名前にこだわるのは、vorpalという単語が英語ではないからです。辞書に載っていません。この単語はルイス・キャロルLewis Carrollによる造語で、『鏡の国のアリス(Through the Looking-Glass)』(1871)という小説の中、それも有名な『ジャバーウォッキー(Jabberwocky)』と題された「小説中詩」の中で使われています。この詩の部分は造語だらけで、訳者の力量の見せ所ともなっています。vorpalもこれら造語のうちの一つで、2回使われています。

3連1行目:He took his vorpal sword in hand:
5連2行目:The vorpal blade went snicker-snack!
(文末に詩の全文を掲載)

 主人公の少年は、vorpal swordを使って怪獣Jabberwockを倒します。5連2行目は、その剣が怪獣を切り裂く様子を表しています。
 さてvorpalという語の日本語訳ですが、例えば今私の手元にある3冊の訳を見ると、ちくま文庫の柳瀬尚紀訳では「まきれもなぎな」剣、新潮文庫の矢川澄子訳では「ことしえる」剣となっています。どちらも造語ですが、どうも同じものを意味しているとは思えません。あと3冊目、角川文庫の岡田忠軒訳では、この語はほぼ無視されています。
 vorpalという語はD&Dをはじめ、様々なゲームで使われています。日本では『ザナドゥ(XANADU)』(1985)にそんな名前の武器があったと思いますが、記憶が定かではありません。ここからは私見なのですが、ゲームの世界では、vorpalという語は二つの方向で解釈されているようです。
 一つは「鋭い」という意味合いにとらえる方向です。Wizはどちらからというとこちらになります。体の小さいウサギが人の首を切れるとしたら、牙なり爪なりが鋭いからでしょう。また、一歩進んで「即死攻撃の」という意味でとらえることもできるかもしれません。しかしBCFCDSの罠「VORPAL BLADE」は即死罠ではありませんので、「ウッドヘッドブラッドレーでは解釈が違う」などの言い訳は必要になります。
 もう一つはD&Dなどから受ける印象で、「なにか特定の敵を倒すための専用の武器を、vorpalな武器と呼ぶ」という方向性です。Wizの世界では「スレイヤー」と呼ばれる武器類が、vorpalな武器ということになります。原典では、少年は「ジャバーウォック・スレイヤー」とも呼ぶべき武器を携えていた、ということです。


The Jabberwocky
by Lewis Carroll


'Twas brillig, and the slithy toves
Did gyre and gimble in the wabe:
All mimsy were the borogroves,
And the mome raths outgrabe.

"Beware the Jabberwock, my son!
The jaws that bite, the claws that catch!
Beware the Jubjub bird, and shun
The frumious Bandersnatch!"

He took his vorpal sword in hand:
Long time the manxome foe he sought --
So rested he by the Tumtum tree,
And stood awhile in thought.

And, as in uffish thought he stood,
The Jabberwock, with eyes of flame,
Came whiffling through the tulgey wood,
And burbled as it came!

One, two! One, two! And through and through
The vorpal blade went snicker-snack!
He left it dead, and with its head
He went galumphing back.

"And, hast thou slain the Jabberwock?
Come to my arms, my beamish boy!
O frabjous day! Callooh! Callay!"
He chortled in his joy.

'Twas brillig, and the slithy toves
Did gyre and gimble in the wabe:
All mimsy were the borogroves,
And the mome raths outgrabe.


update: 20000624