お月さんなふたり〜on the moon boat
この絵はね、道売りを始めてしばらくして、指輪やイヤリングなんかをいれる木の箱を作ったんだけど、それに描いたものだよ。油絵。高校で美術を選択したから少しやったわけだけど、東北弁まるだしのスズキ先生ってのが、よかったな。飾らないってのか、さばさばしてて、そして心地よくズレてたんだね。今は水彩してるけど、また油もやりたいな。さて、道売り。あこがれみたいのもあったし、インネンみたいのもあったね。インドに一緒に行って、途中で別れたのに、奇跡的に遭遇して、タイの島で半年近く仲良く暮らして、最後日本帰る前日のバンコクの安宿、階段ですれ違いざまオラが声をかけた長髪ヒゲの日本人、そして帰国後彼女が一緒になることになるんだけど、この人、これがあーた道売りだったのね。自分で作った物を道ばたにすわって自分で売るってのは、人の生き様として基本のみそ汁のようなもんで、やってる方も見ている方もじつに楽しいと思うわけです。昔小学生の頃、八幡神社のお祭りに行って一回50円のみどりがめすくい、とれそうでとれなくて、なけなしのこずかいはたいて5回も6回もやったのに、ぜったいにくれなかったオヤジは憎かったけど、お空が屋根の露天ってのはなんかイキだなって感じだった。でも寅さん好きになったのは35すぎてからだな、若い頃はなんかだめだった。シンチュウの針金をペンチを使って目の前でその人の名前をアルファベットで作る、いわゆるネームバッジってのがあるんだけど、それをね、このかたに15分ほど教わったのね。でもその時は気も動転してたしうまくできなくて、それから2年後、工事現場のキリストを見てしまったアノあと、たちんぼでかせいだ5万円にぎりしめて浅草橋の問屋街に馳せ参じてね、針金やパーツのお星サマ、べっちんってネームをくっつける黒いビロード地の布なんか買い込んで、狂ったようにぶどう園でつくりだしたのだった。あんな名前こんな名前、同級生や友達の名前にあだな、こんなのあったらいいな・・・なんて名前、その数300種類。                       

                     つづく

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