道売り−2

 さて、へたななりにも300ものネームブローチと、友達にもらったり、なにかと交換したアクセサリーを持って、むかったのは吉祥寺、駅の北と南をつなぐ通路であった。当時6・7人やってた。人々行き交う通路の端っこ、いちお諸先輩に挨拶しつつ布をひろげてならべてしまう。あぐらをかいて、うでぐみして、背筋のばしてぐっと通りをみすえる。半結跏趺坐である。ちょうど目の高さが子供と同じで、親に手をひかれた彼らと目があって心強い。ときどき足をとめてノゾイていく人もいるんだけど、なんせ初日で慣れなくて黙ってたりするもんで、すっと行ってしまう。7時ごろ始めて、まったく売れずに11時半。「こりゃ今日はだめかもねー」なんて、ご近所のにいさんたちと話していると、向こうの方から「おーい、これ、あさこ、くれー!」とオヤジの声。なんと、酔っぱらってるような、ちょっとヨレッとした感じのおっさんが、オラのネーム指差して叫んでいるではないの。おーー!おじさん買ってくれるの?「ん〜、娘の誕生プレゼントな・・・」かくして僕の初日は出たのである。あさこ、500円・・・、しみじみとあたたまった心いだきつつ、120円の切符買って国立まで帰ったのであった。
                    つづく