オックス結成前夜

    『近代映画』 sept.'67

1.キングスからオックスへ

福井利男と岩田裕二が在籍していたザ・キングスは1964年滋賀県で結成された。関西でも歴史のあるグループである。 ナンバ一番で長く活躍したのち、ポリドールから「アイ・ラブ・ユー/ 空と海」で1967年9月にデビューを果たす。

このキングスのデビュー曲「アイ・ラブ・ユー」の作詞を手がけたのは清水芳夫。大阪にあったサパークラブ「レンガ」経営者、後のオックスのマネージャー。作曲の方はオックスのリーダーとなる福井利男が担当した。

この清水/福井の作詞・作曲コンビはそのまま続き、オックスのオリジナル曲をいくつか生み出している。「実らぬ恋」は上田耕三の作曲、上田はキングスのリーダーであるが曲だけはオックスのフォーストアルバムに収められている。 また、ライブアルバムの中の「雪が降る」はご存じアダモのヒット曲。訳詩は清水芳夫自身が手がけた。「雪が降る」の部分は他の訳とは異なり、Tombe La Neigeと原詩のまま歌われ、♪好きで別れた〜 という意訳には原曲にはないオリジナリティを感じる。

●風の噂    作詞:清水芳夫 作曲:福井利男 (ファーストアルバム収録)
●実らぬ恋   作詞:清水芳夫 作曲:上田耕三 ( ” )
●オービーバー 作詞:清水芳夫 作曲:福井利男 ( ” )
●涙にくれた瞳 作詞:清水芳夫 作曲:福井利男 ( ” )

2.バックボーンの野口ヒデト

当時、京阪神で「ジャズ喫茶」と呼びうるのは、大阪ミナミの「ナンバ一番」のみ。ここの川上支配人こそが関西GSの育ての親といえよう。1967年オックス参加以前、野口ヒデトが在籍していたのは、木村幸弘とバックボーンというグループである。

ナンバ一番は、この店自身で関西のグループの連中のブロマイドを作り、それを売っている。もちろん売れるのは、グループの写真より、ソロをとる歌手のブロマイドが多い。その中でのベスト・スリーはザ・ライダースの清原克美、バックボーンの谷口政孝、同じバックボーンの野口ヒデト
----「関西グループサウンド通信」 『近代映画』昭和42年 (1967)9月号臨時増刊, 近代映画社 ----

野口ヒデトがすでに人気者だったことは、これからもわかるが、こうして雑誌に紹介されたことをきっかけにブロマイドの売り上げもアップ ( No.1 だったとも)。やがてキングスを脱退しオックスを結成する福井利男との出会いがある。

  ナンバ一番への地図      『近代映画』 sept.'67

  

グループサウンズは、六〇年代にミナミのジャズ喫茶「ナンバ一番」で腕を磨いたザ・タイガースやオックスがブームを作った。ナンバ一番では、和田アキ子がオックスの前座をしていた。
読売新聞・大阪版「関西おもしろ文化考 第34話 歌」2001/8/29  

 

 

 2002. 7.12 by Miki