デノン AVC−1630      定価\58,800 (2006年8月発売、06年10月購入)


 音質・デザイン・使いやすさがバランスしたデノンの実力派入門機





    主な特徴

 1.各チャンネル100W(6Ω時)の7アンプ構成、32bit浮動小数点DSP「SHARC」搭載
 2.付属専用マイクでスピーカーの初期設定が完了するオートセットアップ機能
 3.別売の専用オプションによりiPod再生に対応
 4.視認性の良い2桁表示大型パネル、使いやすいシンプルデザインのリモコン



    音 質   ★★★★

 まずは2チャンネルの音質から。いつも聴いている中島美嘉、平井堅、ヘビメタ、
 ジャズなどをソースに、「ダイレクトモード」で聴いた。
 低域のパワー感、量感がかなり出ることに驚く。
 高音は粒立ち良く表現されており、シンバルの鮮度感は申し分ないほどに出ている。
 声の付近の中域あたりが少し中抜け気味?と感じるきらいもあったが
 気のせいかもしれない、この辺りはあまり自信がない。
 一聴した限りでは不満なく聴けるどころか、かなり満足できる音質で、
 プリメイン「PMA−1500AE」との差がないんじゃないかしら?
 と不安になってしまった。
 
 しかし1500AEにつなぎ変えて再度聴いてみると、違いが分かってしまう。
 それは「低音の質感」が違う。1500AEの方が最低域まで出ているのだろう、
 「ドン」という音の重さが違うのである。エネルギーの塊が飛んでくるような感じ。
 本機の方はエネルギー量が少なく、やや軽い音に感じる。
 また良く言えば広がり感があるが、悪く言えば少し散漫気味の音場。
 ただし、低音の「量感」については良く出ており、高音の鮮度感も同等。
 それが一聴しても大きな不満なく聴ける要因となっているようだ。
 
 まあ、1500AEと比べること自体が酷なことなのであり、
 AVアンプとプリメインという違い、価格の違いを考えれば妥当というか
 かなり健闘しているという評価でよいだろう。
 
 5.1サラウンドの音質。
 普段はプリアウト端子からメインを1500AEに入力し、本機ではセンター・リアの
 3チャンネルを駆動している。サブウーハーもプリアウトから供給している。
 そんな状況でセンターとリアの音質について語ることは容易いことではないが、
 セリフは鮮度十分、肉声の質感も十分再現されている。
 「U−571」でも密室の緊迫感、爆雷の衝撃などは十分だ。
 
 地上デジタル放送で2チャンネル音声をDTS Neo:6で聴くと
 音場が広がりサブウーハーも駆動されて、なかなか気持ちよい。



    デザイン   ★★★★

 本機はエントリーモデルとは言っても5万円後半というプライス、フロントは
 ヘアライン入りのアルミパネル、ノブも全てアルミカバーがされており安っぽさは
 感じられない。2桁表示可能な表示部を取りまく大型のブラックパネルも良い。
 高さは147mmで、これ以上大きくなるとさすがに野暮ったくなるが、
 本機はその一歩手前でいい感じのサイズに収まっていると思う。
 形状は特に奇をてらった点はなく正統派アンプという感じである。
 プレミアムシルバーの配色も、明るい部屋に合うし“今”という感じがして良い。
 
 リモコンは本機から新しいデザインになった。
 適度な重量があり、しっかりしているため値段以上の価値を感じる。



    操作性等   ★★★★

本機のリモコンは左の写真の通り、
表裏を使うタイプで、裏面はフタを開けると
ボタンが登場する。
表面は電源と主要な入力切替、音量、
一部設定、他機器の操作などが行える。
裏面はサラウンドモードの切り替えなどで
主に使う感じだ。裏のボタンも使わないという
わけではないのだが、片面にボタンびっしりの
ONKYOリモコンに比べればマシかな。
写真から分かるだろうか、表面のボタンは
大きさに違いがあったり、凸凹の形状が
つけられていたり、インターフェースに
かなり気を遣った形跡がある。
良く使う音量ボタンが大きくて嬉しい。
ボタンの感触はクリック感はなくふつう。

音量は0.5dB刻みで変化するが、押し続けると
結構早く音量が上がり、「チョンチョン」と押すと
0.5dBずつしか上がらない。意外とやりにくい。
 本体の2桁表示管も、情報量が多いというのはやっぱりいいことである。
 入力機器名、サラウンドモード名、ソースのチャンネル数などが表示される。



    その他   ★★★★

 本機は付属のマイクを使って自動セットアップを行う。
 設定項目は1.スピーカーの有無、2.スピーカーのラージ/スモール判定、
 3.スピーカーとの距離、4.スピーカーの音量レベル、5.スピーカーの位相
 の5項目で、周波数の補正は行わないタイプ。
 結構大き目の音量でテストトーンが鳴り、約3分間ほどで終了した。
 レベル調整や距離なんかは今まででも手動でやっていたことだが、
 自動化されると助かる部分というのはある。
 特に本機のような入門モデルではより有難みを感じる人も多いだろう。

 サブウーハーのクロスオーバー周波数を10段階で切り替え可能だ。
 (40/60/80/90/100/110/120/150/200/250Hz)
 我が家はメインスピーカーでも結構鳴らせるので60Hzに設定しているが、
 入門機ということでメインスピーカーも小さいケースが少なくないと思われ、
 その場合に100Hz付近が細かく選べるのは重宝しそうだ。
 
 本機には8ch分のプリアウト端子が付いている。
 このクラスではプリアウトがないモデルが多い。
 私はメインをプリアウトしてプリメインアンプで鳴らしているが、
 この価格帯でこういう使い方ができるのは非常に良かった。
 
 背面には映像、音声、スピーカー端子がぎっしりと並んでいるが、
 スピーカー端子の間隔が狭く、端子自体もプラスチックで強度不足。
 スピーカーケーブルを入れるのも一苦労だ。
 
 別売オプションでiPodと連携できるらしいが、使っていない。



    総 評   ★★★★★

 基本的な音質はきちんと確保され、使いやすいリモコン、大型表示管、
 付属マイクによる簡単な初期設定、アルミを使った前面パネル、
 8チャンネル分の外部入力とプリアウト端子付で拡張性にも配慮されている。
 5万円台の入門機というカテゴリーのなか、非常にバランスの取れた製品と言える。




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