エディがAV(オーディオ・ビジュアル)やホームシアターに関して熱く語る


フルHDプロジェクターはどれを選ぶ!2007冬

(2007.12.5)


   アバックのシュートアウトに乗り込み、フルHDプロジェクターを
   一気視聴してきた。今回はその画質インプレッションも加味し、
   真のお買い得モデルはどれか、私なりに考えてみた。





    8機種一気視聴

 昨年は三菱の「LVP-HC5000」がフルHDのプロジェクターとして
 初めて50万円を切る価格で登場したのを皮切りに、
 各社から力のこもった・かつ高C/Pなモデルが続々登場し、
 それまでのプロジェクターの主戦場であった720Pモデルから
 業界とAVファンの注目はすっかりフルHDに移ってしまった。

 720Pモデルの「LP−Z4」を使用している私、
 フルHDプロジェクターはもちろん注目しており、
 昨年も当サイトで取り上げている。
 (「フルHDプロジェクターはどれを選ぶ!2006冬」)

 買うか買わないかは問わず、AVマニアとしては最先端の映像レベルを
 知っておく必要があるということで(まあそれで散在する羽目になるんだが)、
 今年もアバックのイベントに行って映像を見てきた。
 そこまで腰を据えてじっくり見たわけではないが、
 一見して分かるような画質の印象について書いたものだと思っていただきたい。

 それでは各機種のインプレッション紹介に移るとする。
 紹介順は液晶・LCOSといったカテゴリーは無視して市場売価の安い方から、
 売価は価格.comまたはアバックの表示売価の安い方を用いた。

SANYO
LP-Z2000


(売価 270,000円程度)

720Pモデルでは定評があったZシリーズのフルHD版が満を持して登場

 液晶パネルは最新のエプソン製D7/C2FINEで、開口率の向上や
 液晶ドライバの12bit化などの強化が図られている。
 スペックは、コントラスト比は最大15,000:1(ダイナミックアイリス併用時)、
 ネイティブでのコントラスト比は非公表。
 輝度は最大1,200ルーメン。
 ズームは2.0倍、レンズシフトは垂直±100%、水平±50%と、
 720P時代のこだわりであった設置性では今回も業界最高レベルを確保している。
 設置性とともにこだわっていた静音性においても、
 動作音は最低19dBとこれまた業界一の静かさ。
 LP−Z4から搭載された電動のレンズシャッターも継承している。

 デザインはシンプルと言えばシンプルだが、趣味性は高くないか。
 データプロジェクターのような印象。
 ただ、白ベースに淡いグリーンの配色は明るいリビングにぴったりだ。

 コントラスト感が高い画作りで、黒が締まり白が伸びる。
 しかし信号処理ベースのコントラストなので、当然黒が潰れている。
 そのくせ絶対黒は低くなく、他機と比べて浮き気味。
 コントラストを上げているからか、色も濃く乗る。
 赤の発色は良く、純度も高くて朱色に転ばない。


MITSUBISHI
LVP-HC6000


(売価 280,000円程度)

プロジェクターの老舗・三菱のブラッシュアップモデル

 液晶パネルはエプソンの最新D7ではなく、あえて1世代前のD6を使用。
 昨年のHC5000のマイナーチェンジモデルで、変わったのは
 アイリス制御の部分ぐらいだが、改めて各所に触れておく。
 スペックは、コントラスト比は最大12,000:1(ダイナミックアイリス併用時)、
 ネイティブでのコントラスト比は非公表だが、パネルが昨年と同じことから
 おおよそ2,000:1程度と見られる。
 輝度は最大800ルーメン。
 ズームは1.6倍、レンズシフトは垂直±75%、水平±5%と、まずまずの設置性だ。
 ファンノイズも最低19dBと現時点で業界一の静かさ。
 I/P変換などの映像プロセッサーにはSilicon Optix製のものを
 使用しているということで、映像処理にこだわっている。

 デザインはレンズ周りがバランスがあまり良くなく、
 ちょっとロボット的な感もあって、今一歩洗練された感がないかな。
 本体サイズは最もコンパクトな部類。

 昨年のHC5000同様、鮮鋭感がよく出ている。
 細部までの情報が実に見通しが良い。
 HC5000で指摘されていたアイリスの応答遅れはなくなったように思う。
 絶対黒はあと一歩沈み切らないという印象。


EPSON
EMP-TW2000


(売価 300,000円程度)

液晶パネル供給メーカーの意地を見せられるか?

 液晶パネルはエプソンの最新D7/C2FINE。
 アイリス併用時の最大コントラスは50,000:1。
 輝度は最大1,600ルーメンとかなり明るい部類。
 ズームレンズは2.1倍、レンズシフトも上下方向96%、左右47%と
 どれも一級の水準で設置の自由度は高い。
 騒音レベルは最低24dBと標準的な数字。

 デザインは流体のような丸みが特徴的。ややラピュタっぽい。
 黒光沢は美しいが、明るいリビングでは逆に目立つか。
 どうせ黒にするなら光沢なしのほうが反射しなくていいと思うが。

 正直、この日は冴えなかった。
 ピークが出ていないし、色もあっさりしていて、淡白。
 他のBBSの書き込みなどを見ると、パフォーマンスは結構あるようで、
 おそらくこの日は何かの設定ミスか何かがあったのだと思う。
 日を改めて見てみたい。


Panasonic
TH-AE2000


(売価 340,000円程度)

独自のスムーススクリーンで他の液晶モデルとは一味違った映像

 液晶パネルはエプソンの最新D7/C2FINE。
 松下伝統のスムーススクリーンも引き続き採用されている。
 スペックは、コントラスト比は最大16,000:1(ダイナミックアイリス併用時)、
 ネイティブコントラストは非公表。
 輝度は最大1,500ルーメン。ズームも2倍、レンズシフトも水平±40%、
 垂直±100%あるから設置性はかなり良い。
 ファンノイズは最低22dB、十分静かなレベル。
 入力はHDMI×3系統に加えてコンポーネントも2系統備える充実ぶり。
 
 デザインは昨年のAE1000を踏襲、シンメトリーでブラックで
 角ばった筐体はこういう方向性としてはいいのではないか。
 ただしサイズとしては意外とずんぐりむっくり、体積がある。
 
 松下がこだわり続けている「スムースクリーン」、
 720P時代から印象は良くなかったのだが、今回もやはり私は好かない。
 画素の格子が見えなくなって、良く言えば滑らかと言えなくもないのだろうが、
 私としてはどうも「なまっている」印象を受けてしまう。
 細かい部分の鮮鋭感が少しスポイルされているように見えるし、
 グラフィックやテキスト表示では明らかになまっていて
 目をこすりたくなってしまう。
 逆に、フィルムの滑らかな質感が出ていると評価する人もいるのかもしれない。
 絶対黒はかなり沈んでいて良かった。


SONY
VPL-VW60


(売価 340,000円程度)

LCOSパネル搭載機ながら戦略プライスで切り込む

 パネルはソニー独自の反射型液晶「SXRD」。
 今まで高級機だけに搭載されてきた反射型液晶は本機の登場で
 透過型液晶と同じプライスゾーンに殴り込みをかけた。
 スペックは、コントラスト比は最大35,000:1(アイリス併用時)、
 輝度は最大1,000ルーメン。
 ズームは1.8倍、レンズシフトは垂直上方向のみ65%。
 ファンノイズは最低22dB。
 同社の液晶テレビに搭載されている「ブラビアエンジン」を搭載した。
 
 デザインは昨年のVW50を踏襲しつつブラックになった。
 両脇のヒダがそうさせるのか、虫みたいに見える。
 
 テレビ用のLSIを搭載したことが関係しているのかどうか、
 良くも悪くもテレビ的な映像だ。
 輪郭強調が強めで、細部はよく出ている。
 反面、もう少し素直な映像にした方が映画らしさが出ると思う節もなくもない。
 絶対黒は黒いように感じた。
 色純度が高く、赤が朱色に転ばず鮮やかだった。


Victor
DLA-HD1


(売価 440,000程度)

ネイティブコントラスト15000:1の世界は1年が経過した今も健在

 今年1月に発売され大ヒットを記録したモデル、いまだ現役である。
 特徴をおさらいしておく。
 ビクター独自の反射型液晶D−ILA素子と、新規デバイスを採用した
 光学系により、アイリスを使わずネイティブコントラスト15000:1を実現。
 輝度は700ルーメン。騒音は25dB。
 レンズシフトは上下80%、左右34%という広い範囲をカバー、
 ズームレンズも2倍と設置性は高い。さらに前面給排気タイプのおかげで
 壁寄せやラックの中に押し込めてもOKというのは意外と大きなポイント。
 
 左右対称であり、スクエアを基本にしながら角を丸めた形状、
 レンズも飛び出さずノイズレスな外観、白色の本体は洗練されている。
 リビングに置いても違和感はないだろう。
 迷光が少ないブラックモデルも用意されているのは親切だ。
 
 ネイティブコントラストの高さは、今も他の追随を許さない。
 絶対黒は他社も頑張ってきたという印象だが、
 暗いシーンの中の明所のピークの伸びが違う。
 暗闇に浮かぶロウソクの炎、金属的な輝き、人物の表情、瞳の輝き、
 そういったものがゾクッとするほどリアル。
 本機を見た後で他機を見ると、どれも平面的な映像に見えてしまう。
 他機の、アイリスを使った何万対1というコントラストの数字はほとんど
 何の意味もないことを再確認した。
 会場は他スクリーンからの迷光等で暗黒空間とは行かなかったが、
 そのような環境でもコントラスト性能の高さは明らかだった。
 それから、本機は700ANSIルーメンだが数字以上に明るい。
 なぜならアイリスを持っていないから光源を常に最大の明るさで使用できるから。
 気になるのは発色の純度が物足りない点。
 赤は朱色に転んでいた。また全体的に若干黄味がかる印象。


Victor
DLA-HD100


(売価 600,000程度)

銘機DLA-HD1を更にブラッシュアップしたハイパフォーマンス機

 DLA-HD1を更にブラッシュアップしたモデル。
 新世代のD−ILAパネルを採用し、ネイティブコントラストを30000:1にまで向上。
 輝度はHD1より100ルーメン落として600ルーメン。
 騒音はHD1より1dB下げて24dB。
 2倍ズーム、レンズシフト上下80%、左右34%はHD1を継承。
 筐体もHD1を継承、しかしボディカラーはブラックのみとなっている。

 一見してすぐ分かるのは、HD1に比べて発色の鮮やかさと
 ニュートラルさが大きく改善されている点。
 赤が朱色に転ばず、非常に純度の高い赤が再現できている。
 色が黄味がかることもなく、自然で好ましい。
 コントラスト15000:1と30000:1の違いは、
 やや薄明るい会場では見分けがつかなかった。
 600ルーメンという明るさは、完全暗黒にできないリビングでの
 使用には不安を感じるが、実際の映像では全く暗いと感じなかった。
 HD1同様アイリスがないことでもともとの光量に余裕があるためだろう。


SONY
VPL-VW200


(売価 1,050,000程度)

VW60をブラッシュアップしたハイエンドモデル

 VW60をベースに、光源をキセノンランプに変更し、
 120Hz駆動とフィルムジャダーの除去を行う「Motion Flow」を追加したモデル。
 スペックは、コントラスト比は最大35,000:1(アイリス併用時)、
 輝度は最大800ルーメン。
 ズームは1.8倍、レンズシフトは垂直上方向のみ65%。
 ファンノイズは最低22dB。
 同社の液晶テレビに搭載されている「ブラビアエンジン」を搭載した。

 デザインは秀逸。左右対称、適度なラウンドと薄さ、
 天面の微妙な輝きを持ったダークブルーが美しい。

 この日はなぜか本機だけが別会場で、他機と同じ環境・同じソースで
 見比べることができなかったので、画質傾向については詳しくコメントできない。
 本機の最大の特徴はキセノンランプの搭載にある。
 太陽光に近いスペクトルを持ち、高純度の赤をはじめ自然な発色が得られる、
 というのが説明だが、その色味も他機と比べられないので
 実際の映像からその良さを見つけることができなかった。
 映画のフィルムジャダーを除去する機能は、同社の液晶テレビにも
 搭載されているが、はっきり言って気持ち悪い。
 これは実際の映像を見たことがある方なら分かると思うが、
 フィルムのカクカクした動きが滑らかになったら、
 見やすくなるどころか、なぜか生理的な不快感を感じるのである。
 この機能は一度試したら二度と使わない機能だと思う。
 ビデオ映像に対しての120Hz駆動は一定の効果があるだろう。



    買うならどれにするのか?

 各モデルについてまとめていく。

 三洋は最新のD7パネルを使っている割にはもう一歩、
 ただレンズシフトと静音性は業界最高で、
 特にレンズシフトの調整範囲の広さは魅力的。

 三菱は鮮鋭感の高さが魅力であり特徴だ。
 静音性、コンパクトさも魅力。
 意外と欠点が見当たらず、バランスの良さが光る。

 エプソンは本調子ではなかったのだろう。
 設置性にも優れていて、最大輝度が高いので部屋を多少明るめにしても
 使えることも特徴。ちゃんとした画質評価をすれば良いモデルかも。

 松下は絶対黒が出ていて、色味も自然。
 スムーススクリーンをどう感じるか、そこが評価の分かれ目。

 ソニーVW60はハッキリした画作りと発色の鮮やかさが特徴だ。
 絶対黒も出ていて、欠点は見当たらない。

 ビクターHD1はコントラストの高さが光る。
 暗いシーンでも明部のピークが伸びるのはビクターだけ、
 映像に生気が吹き込まれたような感動を覚える。

 ビクターHD100はHD1をベースに、完全な黒再現と色再現を目指した。
 HD1からの買い替え組が多そうだと予想。

 ソニーVW200はキセノンランプに尽きる。


 さて、ここからは私の独断と偏見での意見を書く。
 20万円台後半から30万円台前半までの5機種は、
 どれもフルHDプロジェクターとして一定水準を超えているものの、
 やや中途半端な感がある。
 720Pモデルが今や13万円台で買えるのである。
 そのモデルでも、画素数が少ない点以外はフルHDタイプと同等の性能だ。
 スクリーンを80型〜100型程度にしてあまり大きなサイズを欲張らなければ、
 720Pモデルでも十分滑らかであり、一定水準に達した画質が楽しめる。
 720Pモデルの2倍〜2.5倍の値段を払うには、画素数のアップだけでは
 購買意欲があまり盛り上がってこない。

 ビクターHD1は、720Pモデルとは明らかにコントラスト感が違うし、
 得られる感動も大きく異なるため、これは対価を払うことに納得できる。
 売価も下がってきており、720Pモデルの上に行くならば
 HD1のレベルまで行ってしまった方が後悔しないと思う。

 HD100は、HD1に満足できなかった人が買うモデルだろう。
 色再現の向上に15万円程度の上積みが払えるかどうかだ。
 ソニーVW200はキセノンランプによほど惚れ込んだ人だけ。
 コントラスト感ではビクターに敵わない。
 キセノンは交換用ランプは10万円するし、消費電力も650Wの大喰らい。
 価格もVW60から一気に70万円のアップだ。
 キセノンと心中するぐらいの覚悟が必要だ。




    ま と め

 ということで、一年前にDLA-HD1を見た時の感動が今年も続いていた、
 今年もビクターの画質が頭一つ抜けていた印象だった。

 大事なことは、自分の目が一番正しいということ。
 どうも最近はインターネットで情報が簡単に入手できることで
 スペックだけで物を選ぶ傾向にある気がする。
 自分の目で、耳で、手で、肌で、自ら感じて物の良し悪しを判断することに
 最近の人はあまり熱心でないような感がある。

 アイリスを使ったコントラストの数字は全くあてにならない。
 鮮鋭感や色再現性はスペックに表れない。
 オーディオでも、S/N比の数字とか出力ワット数だとかは
 出てくる音に対してはほとんど関係がない。
 評論家の記事、そしてこのコラムも、あくまで参考程度にするべき。
 プロジェクターも最終的には自らの目で見て、自分の判断で買うように
 するのが、最も正しいことなのである。


 DLA-HD1は私も1年前から買う×2言っていて、結局まだ買っていないが、
 お金の問題もあるが、要因の一つとして設置性の問題がある。
 現在のLP-Z4の設置場所はソファの真横、これはレンズシフトが
 左右50%ないと設置できない場所なのである。
 それにフルHD機ならばレンズシフトになるべく頼らず設置したいという
 想いもある。要は買うなら天吊りにしたいのだ。
 それには部屋がもう少し広くならないと置けない。
 私は来年は引越を予定しており、部屋の環境という点では
 HD1の導入に近づく可能性がある。