エディがAV(オーディオ・ビジュアル)やホームシアターに関して熱く語る


やっと出てきたiVDR

(2007.3.21)


 日立から、リムーバルHDD規格「iVDR」を
 採用したディスプレイ機器が発売された。
 録画メディアとしてのiVDRについて考察してみる。



    リムーバルHDD「iVDR」

 前回のコラム、「ハイビジョンレコーダー想2007春」では、
 ハイビジョン録画メディアとしてパイオニアの増設HDD対応レコーダーの
 「スグレコ」を取り上げ、ブルーレイとの比較を行ってみたわけだが、
 うっかり忘却の彼方にありました、「iVDR」なんてメディアがあったんですよね。
 
 iVDRはちょうど5年前にコンソーシアムが設立されている(記事)。
 しかし、そこからなかなか表舞台に上がってくることがなかった。
 5年の潜伏期間を経て、昨日やっとのことでAV用途の製品が発表された。
 日立からiVDR搭載のディスプレイ機器が発売になるのだ。

HITACHI
P50-XR01

(予想売価 570,000円前後)

世界初「iVDR」を搭載した50型プラズマのフラッグシップモデル。5月中旬発売予定。


増設用のiVDRカートリッジ。160GBで35,000円程度。
iVDRとは、リムーバル可能なHDDドライブのこと。
HDD&DVDとのハイブリッドレコーダーを考えると
分かりやすいが、従来の考え方では、
「HDD=大容量で高速アクセスが可能だが、
 外部に取り出せず、機器に内蔵して使うもの」
「DVD=容量は少なく読み出しも低速だが、
 外部に取り出せる」

とされ、互いの長所・短所を補完するから
ハイブリッドレコーダーという商品ジャンルが
認知され、また成長したわけだ。
 しかし、iVDRはHDDの欠点であった「取り出せない」という点を
 「いや、取り出せるんです」と覆してみせたのである。
 確かに一度HDDの快適さを味わってしまうと、DVDをトレイにセットする度に
 行われる読み込みが鬱陶しく感じてくるのも事実。
 HDDの快適さで取り出せるようになったのなら越したことはない。
 
 しかし、iVDR対応の「P50−XR01」は250GBの3.5インチHDDが
 内蔵されていて、その他にiVDR用のスロットが設けられており、
 あたかも“ハイブリッド”の形態になっているのが面白い。
 まずは内蔵HDDに録画し、後からiVDRにムーブするという使い方ができる。
 その際は6倍速での転送で、1時間のコンテンツであれば約10分で完了するという。
 


    iVDRとブルーレイを比較

 iVDRには3.5インチ型と2.5インチ型と1.8インチ型があるが、
 今回の日立の製品に採用されているのは2.5インチ型だ。
 写真からも分かるが、一般的なCDケースと同等のサイズだ。
 厚みはCDケースの3倍程度くらいに見える。
 160GBということは、単層ブルーレイディスク25GBの6倍だから、
 スペースファクターはiVDRの方が2倍と高いことになる。
 今回アナウンスされている増設用のiVDRは160GBと80GBしかないが、
 iVDRの容量が将来どこまで高まるかによって変わってくる。
 
 お値段は、160GBで35,000円程度。これは高い。
 25GBの単層ブルーレイディスクが2000円程度、
 1GBあたりに換算するとブルーレイが80円/GBなのに対し、
 iVDRは218円/GBで、3倍近く割高という計算になる。
 160GBのHDDなんて、PC用であれば1万円そこそこで買えるはずなのに
 iVDRはどうしてこんなにも高いのだろうか?
 デジタル放送対応が関係しているのだろうか?
 それとも耐衝撃性を高めていることが関係しているのだろうか?
 腑に落ちない点である。
 
 ブルーレイであれば、ディスクがかかるモデルであればどこへでも行ける
 柔軟性がある。ブルーレイディスクがかかる製品がなくならない限りは大丈夫。
 「メディアはコンテンツの仮住まい」とは有名な言葉で、
 大事なコンテンツ、それが未来永劫見られるようでなければ安心して
 ライブラリを作れない。この点ではiVDRは現時点では何とも言えない状況である。
 iVDR関係者は「今後AV用、PC用、それから車載用にも展開していく」
 と大風呂敷を広げているが、フラッシュメモリの大容量化も進んでいるし、
 AV用としてはブルーレイとの競争があるし、PC用としても
 外部HDDがUSBケーブル1本でつながる時代、どこまで前途が明るいのか
 疑問視してしまう部分も少なくない。iVDRに大事なコンテンツを
 保存するのは現時点ではリスキーだと言わざるを得ない。
 
 まあ日立の場合は身内に日立グローバルストレージテクノロジー社を抱えており、
 戦略としてHDD内蔵テレビを進めていて、今回はその進化形としてiVDRを使って
 HDDが取り出せるというメリットを打ち出したわけで、
 ブルーレイのようなライブラリを作るための録画メディアとしてというよりは、
 「テレビで気軽に録画する」というスタンスを基本に、その可能性を広げるための
 一つの手段としてiVDRを位置づけているのだろう。