「次は俺が行く、異論はないな?」
「先の無様な真似さらすなよ?」
「まかせろ」
岩のごとき巨漢が前へでます、その高さざっと2m、無駄のない引き締まった体からは精悍な印象をうけます。けして見かけ倒しではないでしょう
「私が参りますわ♪」
レイナの声が楽しそうに弾んでいたのは……聞き間違いであって欲しいです
BSD物語3周年記念小説
一夏の戦記 vol.3
巨漢は足下の石を片手で握り、握力だけで粉々にして見せました
「悪いことは言わん、二人かかりでかかってこい」
「あらあら、その程度でしたらわたくしに出来ますは〜」
レイナはにっこりとほほえむと同じように足下から拾った石を片手の握力だけで粉砕しました。彼女は見かけこそごく普通のネコミミメイド少女ですが、その力は常時ペタバイトオーダーのデータを扱えるよう非常に強化されています、実世界でなら一度玄関前に不法駐車されていたランドクルーザーを片手でレッカーしてのけたほどです。
「ほうほう、少しは楽しめるか?」
「お客様をもてなすのがメイドの仕事ですわ〜」
「ならばっ!!」
中空に杖を顕わすと男は空を切る勢いで横殴りにレイナに撃ちかかりました。左手でガードするレイナ。しかしかなりの衝撃だったらしく彼女の表情が歪みます
「鉄心入りですか……」
「こうでもしないとすぐに杖がダメになるのでな、効いただろう?」
「くうっ」
巨漢は杖を構え直すとレイナに向かって突きつけます
「先の一撃でお前の左腕は使い物になるまい。アレに耐えられたのはお前で3人目だ、それ以上無理をすることもあるまい。下がれ」
「そ・・・・・・そうもいきません。私にはまだやることが残っています」
「ほう、見せてもらおうか」
「では、参りますっ!!」
エプロンドレスを閃かせ、一陣の風となり走り出すレイナ、その右手は既にいつもの格闘用にくきうグローブになっていました。敵の目前で高くジャンプした彼女は大きく身を捻って右手を振り下ろします!
「むぅぅん!!!!」
弾かれるようにレイナは吹き飛ばされます、男が頭上に杖を構えたところを見ると頭上から振り下ろされたレイナの攻撃を杖で受けきったばかりかレイナに一撃を喰らわしたようです。
「今の一撃、確実にお前の内臓をえぐった。もはや動くこともままなるまい。お前の負けだ。」
「そ・・・・・・そういうことはとどめを刺してから言う物ですわ」
「まだ、動けるのか。これ以上無様な姿をさらす物でもあるまい、今楽にしてやろう」
喀血し、ふらふらになりながらも立ち上がるレイナに向かって杖が振り下ろされます!!
「レイナ!」
「ティナさん、心配ご無用ですわ〜」
今、まさにレイナの頭を砕かんと振り下ろされた杖、しかし。後僅かのところで杖はぴたりとその動きを止めました
「まさか、私がただ4連続攻撃を浴びせたと思ったんですか? あれは杖を砕くと同時にその衝撃で貴方の腕を破壊する物だったんです。もっとも……効果が出るのに少々時間が掛かったようですわ」
「ぐぅぅぅぅぅぅ」
両腕から大量の血を吹きだし男は粉々になった杖と共に倒れました。あの有様では暫く腕は使えないでしょう。
「この俺を倒すか……」
「残念ですが、わたくしもここまでですわ。後はお願いいたしますぅ」
そのまま倒れると同時にエイリアスを消すレイナ、いくら分身とはいえダメージフィードバックはかなり物だったでしょう。
「どうやら後は私達二人きりのようですね」
「遠慮はいらん、存分に来い」
どうやらこの戦、最終局面に入ったようです。