*空から降りてきた白い星*
(キリリク56789)
【1】
絳攸は日課である水遣りを終えて、青く澄みあがった空を見上げるとほぅと息をついた。溶けていく息が白い。
(もう、冬なんだ……)
絳攸が養い親に拾われたのもやはりこんな寒い日だった。強引に取られた手の温かさに驚いている間にあれよあれよと軒に乗せられ、なぜだか風邪っぴきの百合さんの看病をすることになり、……気付いたらいつの間にか養子として籍に入れられていた。
自分には一生縁が無いと思っていたような柔らかな衣服と、おいしい食事、温かい邸(必ず迷子になるタヌタヌの呪いが掛かっていようとも)、それに教育まで、養い親には数え切れないくらいのものを与えてもらった。字も読めるようになったし、少し背も伸びた。
"どーしようもない"黎深様がこれ以上ヒトとして落ちていかないように、これから自分は黎深様のために生きよう、と絳攸が決めてから、もうすぐ1年が経とうとしていた。
雲ひとつない抜けるような青空を見上げていた絳攸は、突然背後から掛かった声にビクッと肩を震わせた。
「何をぼけっと突っ立ってる」
「わぁっ!! ――えっ、れ、黎深様っ!? どうして……っ。お仕事はどうしたんですかっ」
真昼間だった。まだ昼餉にもなっていない。黎深は本来なら朝廷にいるべき時間のはずだ。絳攸は今朝も出仕する黎深を見送ったし、その証拠に、黎深は今も官服を身に付けていた。
「あっ、ひょっとして、急に体調がお悪くなったとか!?」
「そんなわけあるか。用があるから帰ってきたんだ。お前こそ、こんなところにぼけっと突っ立ってるほどヒマなのか?」
「え、いえ、今ちょっと鉢植えに水遣りを……」
確かに絳攸はジョウロを持っていた。その背後には濡れた鉢植え。
――黎深が絳攸に預けた"百合の木"は、あれからもすくすくと成長している。
「……ふん。……そうだお前、昼餉はどうした」
「まだです」
「そうか。――着替えたら昼餉にする。広間に来なさい」
「あっ、はい!」
養い親からの言葉に、絳攸は元気よく答えた。
【2→】
【キリリクTOPへ】
【TOP】
(C) asakawa itsuki
all right reserved.