*あとおし*
(キリリク11111)


【1】

「よし、完成!」
嬉しそうな妻の声が聞こえて、悠舜は読んでいた書物から顔を上げた。
彼の新妻・柴凛は、彩雲国随一の発明家でもある。今度は一体何を作ったのだろう、と悠舜は立ち上がるとゆっくりと隣室へと向かった。
「凛、何が完成したのですか?」
「ああ、旦那様。ふふ、今度の発明はこれです」
これ、と言って凛が差し出したのは二組の腕輪だった。その腕輪はそれぞれ金と銀の輝きを持ち、細かな意匠が施されている。素人目に見ても素晴らしい、綺麗な腕輪だった。
「ほう。これはまた見事な細工ですね。今度は宝石商にでもなるつもりですか?」
「まさか。私がただの腕輪を作るとお思いですか?」
ふふ、と不敵に笑った凛は、銀色の腕輪を自らの手首に嵌めると、金色の方を悠舜に嵌めた。
「何ですか、凛? ひょっとして私への贈り物ですか? これは嬉しいですね」
「…………。旦那様への贈り物といえば、そうなのですが……。おかしいですね……」
首を傾げた凛は、悠舜と腕輪とを交互に見比べ、溜息をついた。
「どうやら失敗のようです」
「??? 凛、私にはまだ話が見えてきません。こんなに綺麗な腕輪なのに失敗なのですか?」
不思議そうな顔で自分を見つめてくる悠舜に、凛は苦笑した。
「ええ。これは美しさに重点を置いた発明ではありませんから」
「では、何に重点を置いたのです?」
「…………実は…………」
恥ずかしながら、と妻に耳打ちされた悠舜は、話を聞き終わって、ああ、と頷いた。
「それなら失敗でも何でもありませんよ」
「え?」
「この腕輪を付けた二人が『相思相愛』になる、というのでしたら、凛と私が付けても実験になりません。……こほん、その、私たちはもう愛し合っているのですから、これを付けたからといって劇的な変化は望めないでしょう?」
「ああ、なるほど……。ではどうすれば……」
片思いの娘さんでも探し出して実験に付き合ってもらうか、などと呟いた凛に、悠舜は待ったを掛けた。
「まだどんな副作用が起こるかも分からないのに、赤の他人にそれは少々危ないのでは……。凛、よければこの腕輪、私が数日借りて実験してきましょうか?」
「ええ、それは構いませんが。旦那様、一体どなたに?」
「不器用な友人たちに少々協力して頂こうかと思いまして。腕輪の有効性を確認したら、ちゃんと返してもらってきますから大丈夫ですよ。そのうえ、強大な支援者も見つけられるかもしれません」
一挙両得で大儲けできるかもしれませんよ、と悠舜は笑った。

【2→】
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