*握った手*
(10万HIT企画その2)


【4】

「ねー黎深。主上がまだ独身って本当? 藍家が後宮に送り込んだコ、妃じゃなくて女官にしちゃったって噂は聞いたけど。そういう相手、全然いないのかな?」
半年以上ぶりに帰った邸で夫の世話を焼きながら、百合は聞いてみた。
「本当だ。あのバカは"秀麗以外娶らない"などとくだらん夢を見おって! 誰があんなハナタレ小僧に大事な秀麗をやるものか!!!」
「……それを決めるのはきみじゃないでしょ?」
父でもなく未名乗りの叔父、ましてや当の秀麗からは"叔父様からは嫌われている"と思われている存在が、結婚の可否を決められるわけがない。相変わらず空回りな愛情を姪にそそぎまくっている夫に、百合は嘆息した。
「でも、劉輝公子――じゃない主上、すっごくモテそうなのに、もったいないねー」
王様の上にあんなイイ男ならいくらでも女の子が寄ってきそうなのにと百合は思った。
国のためにも早く婚姻を結んだ方がいいはずだし、百合の兄にも父にも、数え切れないくらい妾妃がいたと聞いている。
だが百合の夫は怪訝そうな顔で問い返してきた。
「……モテそう? あのハナタレがか?」
「うん。カッコいいけど、ちょっとかわいくて母性をくすぐる感じだしv」
百合の兄も(顔だけは)かなりイイ男だったが、現王はこれからが男盛りでまだまだ楽しみだ。何より顔だけでなく性格もいい。身びいきではなく百合はそう思った。
「きっとこれからもっとイイ男になるよ。自分から荷物持ってくれたりして優しかったしさ。何より絳攸が選んだ王様だもん。いい王様になるといいね」
そう言った途端、むっつりと黙り込んでしまった夫に、あれ、と思った。
「あら黎深、妬いてるの?」
「っ、誰がっ、ハナタレなんぞに!!」
ムキになるのがいい証拠である。
やさしい百合は「どっちに妬いてるの」とは聞かないでおいてあげた。聞かないかわりにふふふと笑う。。
「甥っ子に妬いてどうするのさ」
「私はアレを甥だなどと思ったことはナイ!!! 王など大嫌いだ!」
「もー、大人げない……。……でも、嫌いでもいいよ。嫌いでもいいけど、困ってるときには助けてあげてね」
大嫌いだ、と言いつつ結局は甥の味方になってくれるだろう夫に、百合はそっと手の平を重ねた。
「ね?」
「…………………………ふん!」
きゅ、と握りかえされた手に、百合はありがとうと微笑んだ。


END.
【←3】
やこ様からのリク、「黎明後、劉輝と楸瑛が百合に初対面」でしたー。なんだか黎深様が付け足しみたくなってしまって、すみません……(汗) 一応百合さんメインを目指してみました。

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