*白と黒のまほう*
(黎深・絳攸)
【1】
「おはようございます。明けましておめでとうございます、絳攸様」
室にしずしずと入ってきた家人にそう言われて、絳攸は書翰から顔を上げた。
「あ、ああ、おめでとう。……そうか、もう朝か。新年だな」
貴陽紅邸の新年準備の一切を任されていた絳攸は、年が明けたことにも気付かないほど準備に追われていたのだ。
「そろそろ朝餉でございますよ。お館様もそろそろお起きになる頃でございましょう。お支度くださいませ」
「ああ、分かった」
新年早々、黎深を待たせでもしたら大変だ。絳攸は家人の言うとおり、大人しく筆を置いた。
と、家人が手にした衣を見て絳攸は首を傾げる。
「………………それは何だ?」
それはいまだかつて絳攸が見たことのない形状だった。色柄もおかしい。
顔をしかめた絳攸に、家人もいささか困った表情で告げた。
「さぁ、それが私どもにも……。お館様がこちらを絳攸様にとの仰せですので。ですが、こちらをお召しになるのは朝餉のときだけだそうですよ」
新年宴用にはちゃんと別の衣をご用意してあります、と言われて、絳攸はそれならと了承した。新年準備のために徹夜続きで睡眠不足だったことに加え、絳攸は元々自分の服装には無頓着だったので、深く考えることもなくその衣装に袖を通した。
【2→】
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