*ちいさなかがやき*
(黎深・絳攸)
【4】
今度はなんだ、と思いつつ絳攸が周囲を見回すと、黎深は天を仰ぎ見ていた。
それにつられて絳攸も天を見上げた。
「わ……。星…………!」
今夜の月は限りなく新月に近く、まだ昇っていない。雲一つない漆黒の闇夜は、星たちを普段より一層輝かせて見せた。
「綺麗ですね、黎深様」
「ああ」
天じゅうに散りばめられた星は、大きさも輝きも様々で、まるで人間のようだ、と絳攸は思った。あの一際強く輝いているのが黎深様で、そのすぐ横でちょこんと小さく光っているのがきっと自分。
そう思ってくすりと笑うと、ふいに黎深に枝で額を叩かれた。
「い……っ、何するんですか黎深様!」
「帰るぞ。いつまでもこんなところに突っ立っていたら風邪を引く」
「っ、――はい」
庭院に出たのもここに立ち尽くしたのも黎深様なのに、せっかく綺麗な星空だったのに、とは絳攸は口にしなかった。
「饅頭が温かいうちに戻ろうと思ったのだが、思わぬところで時間を食った。絳攸、戻ったら温め直せよ」
「…………はい」
「いや、せっかくだから酒でも飲むか。少し早いが花見酒だな。饅頭などより余程暖が取れるだろう」
酒肴も用意させよう、と呟いた黎深に、ようやく絳攸は気付く。
養い親は、寒い庭院散策後に暖かいお茶と饅頭を所望したのだろう。
「何か言いたそうだな、絳攸? 寒いのか?」
「いえ、寒いは寒いですが、そういったことでは……」
色々と最初から言ってくれてれば、とは、やはり絳攸は口に出さなかった。言っても無駄だからだ。
「――? ああ、心配するな、お前の煎餅饅頭は酒のツマミとして食べてやる」
別にそんな心配してないんですが、とはやはり言えない絳攸は、それにただ、ありがとうございますと苦笑を浮かべた。
END.
【←3】
梅開花記念、ということで書いてみましたー。ていうか、ウチの絳攸くん、よくお料理させられてますね…。なんでだ…?(笑)

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